ペンギン仕掛けの目覚まし時計

織風 羊

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第十章 ほな、さいなら。

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 翌日、私は休暇を取った。
ぺペンギンさんは窓際で煙草を吹かしている。
このまま何も変わらなければいい、そう思っていた。

「そろそろやな」

「・・・・・・・・。」

「丁度、今、此の星の上空にシールド張った船が来とるさかい、自動階段が降りてくるやろな」

「・・・・・・・・。」

 私は開け放たれた窓の外を見た。
確かに無色透明に近いような階段が、するすると降りて来ている。

「ほな、さいなら、や」

「ぺペンギンさん、最後にお名前だけでも教えてください」

 既に、透明に近いくらいの無色の階段が私の部屋の窓まで降りて来ている。
ぺペンギンさんは自動タラップにその翼のような手を掛けながら、振り向いて言った。

「ワイか、ワイの名前は、マルセリーノや」

「イタリア人ですか?」

「アホか、こんな格好したイタリア人が何処におんねん! ビックリしすぎて階段からズリ落ちそうになったわ」

「マルセリーノさん」

「そやで、地球の言葉に直したら、宇宙で一番の純粋な者、いう意味や」

「そんなのどうでもいいです!」

 そう言いながら私は自動階段まで駆け寄り、

「ぺペンギンさん、行かないでください」

 と言いながら、その水かきの付いた黄色い足を掴んだ。

「こら、離さんかい。マジ落ちるやろアホ。離せ言うてるやろが」

 ぺペンギンさんがあまりにもジタバタと小さな翼を動かすので、私はバランスを崩し、ついでに昔使っていた針が4時で止まっている目覚まし時計にけつまづいた。
其の瞬間。
刹那!手を離してしまった。

「このボケがー、せやから言うて、急に離すアホが何処におんねん、危ないやろが! このアホー、アホー」

 窓の外では「アホー」と言う声だけ大空に響き渡るようにして遠ざかっていった。
私は慌てて窓の外を見上げたが、既にそこには何も無かった。
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