ペンギン仕掛けの目覚まし時計3

織風 羊

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第五章 Star Dust

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    ただ、自室にこもって顔の腫れが引くまで、何もせずにゴロゴロしているだけの毎日は、将来の夢を持っている若者には、苦痛でしかない。
もってほんの数日だ。
涼太は、気分転換の為に窓を開け放して、部屋を綺麗にしようと掃除を始めた。
整理整頓も出来ていない部屋は、埃でいっぱいだった。

「毎日、こんな部屋で寝起きしていたのか」そう思うとゾッとする。
掃き掃除、拭き掃除、やれる掃除は何でもやった。
しかし、狭い部屋のこととは言え、それでも午前中から始め掃除と整理整頓は夕刻を過ぎていた。
急に動いたせいか、血流が早くなると腫れの引いていない部位が脈動に合わせてズキズキするのを感じる。
とはいうものの、そこまでして掃除をしても、その後やる事がない。
亮太は部屋の中を見回した。
少しは広くなった様に感じられる部屋の片隅に、掃除のために積んだ雑誌に目をやる。
「捨てる本と残しておきたい本を整理しよう」と思った。

 小料理店から持って帰った古くなって使い物にならいサラシをもう一度、水につけて洗った。捨てる本は、そのまま積んで、残しておきたい本は硬く絞ったサラシで丁寧に拭いた。
殆どが料理の本だ。
中には観光の本もあるが、このブルックリンの、どの街角でどんな料理店が愛されているかを調べる為のものである。
そうだ、こうやって充分に研究したはずなのに・・・。
そう思うと、また遣る瀬なさが沸いてくる。
「駄目だ」今は、そんなことを考えてはいけない。
心を入れ替えて頑張るんだ。
そう決めたんだ。
自分の決心を思い出して頭を振る。
顔に手を当てる。
頭を振ったせいで、また内出血している部分が疼いている。

 雑誌など本を整理していると、ブルックリンの夜景と夜の有名な店を紹介している本が出てきた。
その中に夜空の特集写真のページがあった。
星空に興味はないが、日本とアメリカの夜空は、どんなふうに違うのかに興味を持ったあの日の、その当時を振り返る。
アメリカに来て、この雑誌の夜空の特集写真に興味を惹かれ、ブルックリンの片隅のアパートの窓を開けて、夜空の星に誓ったあの日を。
絶対に一流の板前になってアメリカで小料理店を開くんだ、そう思ったあの日を思い出す。
涼太は窓から上半身を突き出し、既に暗くなっている夜空を見上げた。
都会の片隅にある此のアパートからは満天の星など見れる訳もないが、涼太は夜空をじっと見つめていた。

 その時、視界の隅で一瞬、星が瞬いたように見えた。
涼太は目を凝らしてその方向を見つめたが、今は真っ暗で何も見えない。

「気の所為?」

 そう思っても、なを同じ方向を見つめていると、また、微かに瞬き、そして消えた。

「どんなに遠くにある星なのだろう、それとも小さくてずっと輝き続けることが出来ないのかな」

 その星をじっと見ているうちに、その星が自分自身の人生と重なってきた。
日本、本店の板前さん達に囲まれ、

「一旗上げてこいよ」

 と言われ、アメリカに来て、包丁の腕を見込まれたまではいいが、その後がどうも上手くいかない。
あの時の輝きは消え失せ、この夜空の下のブルックリンの街で自分は一体何をしているのだろう。
そう思うと涙こそ流れないが、目頭が熱くなってくる。
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