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第二十一章 See you again!
しおりを挟む「そろそろやな」
「はい、そろそろです」
「クィーンズの店、見て来たんか?」
「はい、カウンターだけの狭い店ですが、純日本風に出来ていて気に入りました」
「そうかぁ、お前、今まで、よう頑張って来たと思うで」
「皆さんのおかげです」
「せやけど、ご褒美が新しい店の板長て、これ修行やなぁ」
「頑張ります」
「せやな」
「そろそろですね」
「うん、そろそろやな」
「これ」
「何なん?」
「刺身の盛り合わせです。冷凍しておきました」
「それって、おみや、言うやつ?」
「はい、何処まで保つか分かりませんが、道中の食事にしてください」
「お前、ほんま、ええ奴やねぇ」
「いえ、で、そろそろですか?」
そう言うと開け放した窓の外を、涼太は見た。
暗い夜空の彼方から、ゆっくりと無色透明に近い階段のようなものが降りて来ているのが微かに見えた。
ぺペンギンは涼太にもらった折り詰めをぶら下げて、窓枠に短い足でしっかりと立っている。
「ぺペンギンさん、最後に名前を教えてください」
「ああ、ワイか、マルセリーノや、宇宙で一番純粋な者、言う意味や」
「マルセリーノさん、絶対に忘れません」
そう言うと涼太は、忘れることがない様にと口の中で何回も、マルセリーノ、と繰り返した。
「あの空、消えては輝く、あの瞬く光、あの星に、お前が願いをかけてから、どれだけの月日が流れたんやろなぁ。何んかいつもと違うパターンで拍子抜けやけど。シー ユー アゲイン や。何んか願い事があったら、あの星を思いだすんやで」
そう言うとぺペンギンは無色透明に近いタラップに片手を掛けた。
スルスルと上がっていこうとするタラップの横で、
「どの星でしたっけ?」
と涼太は窓から上半身を乗り出した。
刹那、バランスを崩した。
溺れる者、藁をも掴む、である。
涼太は落ちまいと何か掴むものがないかと。
有った。
目の前に有った。
黄色い足が。
思わず掴んだ。
「おい!こら!放さんかい!一緒に落ちるやろうが!このドアーホ!」
ブルックリンの夜の空に、叫び声が、日本語が消えていった。
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