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第二十三章 Milano Collection Supermodel
しおりを挟むブロンクス の チャイニーズ タウン の一角で話し声が聞こえてくる。
「おい、古本屋。今度は漢方医か?」
頭に包帯を巻いた超小型ペンギンが言った。
「はい、元々、薬学は私の研究課題ですから」
「然しなぁ、そのちょび髭やめへん? 似合ってないどころか、笑い取りに来てるで」
「私、これ、気に入っているのですが」
「気に入ってるんやったらええけど、漢方医さん。で、やな、もうちょっと薬増やしてくれへん? まだ頭が何んとのう痛いんよ」
包帯の巻かれた頭に手を当ててペンギンが言った。
「ぺペンギンさん、痛み止めは此れ以上は増やせません」
「なぁ、そないケチ臭いこと言うなやぁ。なぁ、なぁてぇ」
「ぺペンギンさん、駄目なものは駄目です」
「あかんかぁ。で、お前? 何んでワイのこと、さっきからぺペンギンって呼ぶの?」
「ぺペンギンさんは知らないでしょうが、今、ぺペンギンさんは指名手配中の マフィア の一員とみなされているそうです」
「それって、どう言うこと?」
「はい、ある筋の情報ですが、涼太君は殺人未遂で、イタリア人に突き落とされたことになっています。犯人の名前は、マルセリーノ、です。しかも涼太君の部屋で指紋を調べていたところ、あろう事か、小さなペンギンの足跡が、そこらじゅうに付着していたそうです」
「マルセリーノって、あいつ忘れんようにって何回も繰り返しとったけど、まさか病院のベッドの上でもなぁ、譫言でも繰り返すとはなぁ」
「勿論、涼太君は譫言で、その名前を言ったに過ぎないのですが、警察は重要な手がかりとしている様です」
「ほんでも犯人は、ペーンギーン って、どう考えてもおかしいやろ」
「それでも尚且つです。念には念を、です。万が一にも私達の星に迷惑のかかる様なことがあってはいけません」
「そうかぁ、ほならワイ、暫くここでじーっとしとかなあかん、いうことかぁ」
「それだけではありません。その姿のままで居られるのもどうかと」
「ほな、どないせい言うのん?」
「ここに前所長が、以前、この星のエージェントととして使っていた時のスーツがあります」
そう言うと元古本屋の漢方医は横に置いておいた大きなケースの蓋を開けた。そこには、地球人型エージェント・スーツが用意されていた。
「このエージェント・スーツの中に入っていただきます」
「何んか、お前のエージェント・スーツと違ごうて、えらい若いな」
「はい、しかも、この星の美的基準からすると、かなり上位に属する女性型スーツです。宇宙造形美術学の先生方は、ミラノ・コレクション・スーパーモデル・タイプ、と呼んでおります」
「そんなん言われてもよう分からんけど。まぁ、早速やし、入らせてもらうわ」
「お願いします。アジトも用意させていただいております。この街から、さほど遠くない所にリトル イタリー という街があります、そこのアパートの一室を借りております」
「でも、犯人はイタリア人やろ? それヤバくない?」
「大丈夫です。灯台下暗し、という日本の言葉があります。しかも犯人は女性ではなく、男になっております」
「そうかぁ、ほなら、場所教えて? 早速行くわ」
「はい、地図は此処に用意させていただいております。ただ、前所長から注意点を伺っております」
「何んなん?」
「このエージェント・スーツ、変な男どもが、うじゃうじゃ付いて来るそうです」
「変な男どもが?」
「はい、それと、コード・ネームは、リン、です」
漢方医に変装したエージェントがそう言うと、マルセリーノ統括教授が潜り込んだ ミラノ・コレクション・スーパーモデル・タイプ の エージェント・スーツ がそれに答えた。
「了解よ、分かったわ!」
(しゃーない、覚えとくわ!)
「統括教授、素敵な喋り方です」
「馬鹿な事を言わないでよ! でも、少しおかしいかしら?」
(アホか! めっちゃ、変な言葉使いやと思わへんの?)
「では、リンさん、行ってらっしゃいませ」
「とても爽快な気分よ、貴方も気をつけて、じゃぁね!」
(なんか気持ち悪いけど、取り敢えず、行ってくるわ!)
「最高ね! この翻訳装置、どうしてなの? 私の感性にピッタリだわ!」
(あかん! この翻訳装置、何んか? ワイの言語と感性がずれとるわ!)
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