生まれ変わってでも結ばれたいっ!〜前世を覚えていませんけどっ!?〜

宮沖杏

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朝起きるとルークが体を起こしたまま頭を押さえて顔色を悪くし顰めっ面をしていた。
その顔にそっと手を伸ばすとルークは一瞬驚いたが顔色が悪いままゆっくりと微笑んだ。

「頭痛いの…?」
「ああ…完全に二日酔いだな。だが昨日の記憶はあるから…。今度はスザンヌにお願いしなくとも大丈夫そうだ…。」

目を閉じながらも冗談混じりにルークは言った。私はルークの頬に触れるとそっと念じた。

私の手から緑色の魔法の光が溢れると徐々にルークの顔色が良くなっていく。
目を見開いた状態で私を見つめた。

「万能薬みたいだ…。分解魔法を使ったとしてもこうはならない…。すまない、ロティ。ありがとう。」
「どういたしまして…。んーーー。
起きようね…。今日の予定が無くなったから考えないと…。」

私がのそのそとベッドから起き上がりベッドの縁に座るとルークが後ろから抱きしめてきてお腹と胸元に手が周りがっしりと捕まえられた。

「どうしたの…?」
「朝から甘美な光景だなと思って。一日位、のんびりとここで過ごすのも悪くないと思う。」

そう言うとルークは後ろから私の首筋にキスをしてきた。
ルークの息が擽ったいし、体を捉えている手もなにやら撫でる様に動いている。

朝から予想打にしないルークの行動にさっきまでの微睡みが一気に消え失せ、体温が上がる感じがした。

「ルークッ、朝から恥ずかしいから駄目!」
「…夜ならいいのか?」

「そういう事じゃないいー!」
「分かった。とりあえず一度キスだけでも…。」

「着替えして顔洗って食事して今日の予定決めてから!じゃないとルークずっとこのまま動かなそうだもん!」
「…随分と焦らすな。仕方ない。なら済ましてしまうか。」

ルークは諦めたのか私に回した腕を緩めた。
ベッドから降りてルークをちらりと見ると若干不服そうな表情をしていた。


◇◇◇


食事の用意が済み、食べながら今日の予定を考える。
本当ならサイラスの特訓をしているはずが私が覚える事も終わったし、サイラス自体が忙しくなってしまったので今日から予定が空いている。

ルークは無言のまま既に半分以上食べていて、残りも少ない。
ソーセージにフォークを刺しながら私はルークに話しかけた。

「ねぇルーク。予定が空いた事だし、スザンヌのとこに行きたいな。用事がないなら前世の事思い出したいからスザンヌの所に泊まろうかと思う。
スザンヌもいいなら、だけどね。」

ルークはパンを口に一気に入れたところでモゴモゴと口を動かしていた為、飲み込むのを待つ。

水を少し飲み、コップを持ちながらルークは答えた。

「ああ…そうだな。その前に忘れない内に認識阻害をかけ直さないとな。掛けておかないと困る。」
「ありがとう…。あ、そうだ!!グニーの事なんだけど。」

私が話している最中にルークは私に向けて手のひらを向けてきた。
あっという間に全て食べ終えたルークの頬が少し膨れてる。
咀嚼し、飲み込み終えると手を戻しながら言った。

「食事が終わりかけだからいいが、あの女の話は食欲が無くなる…。食事時を避けてくれとありがたい…。」

顔が強張り嫌そうな顔をするルーク。
そんなに嫌なのかと思い気不味くなりながらも謝った。

「それはごめんね。私も食べちゃってから話すよ。」
「急がなくていい。」

そう言われたが私は出来うる限り急ぎ目に食べる。聞きたい事を纏めようとしたが上手く纏まらないまま食事は終わってしまった。



片付けが終わり、ソファに促される。
ルークの隣に座ると体を少し此方に向けてくれた為私も同じく向き直す。

眉間に皺を寄せているルークに話すのが少し緊張してしまい、おずおずと話し出した。

「それで、グニーの事なんだけど…。
私、グニーが殺人罪で捕まっていたのは私を殺したから捕まっていた時思っていたのだけど、違うの?他にも亡くなった人がいるって…。」
「ああ…。あの女はロティの事でその監獄に入れていたのは間違いない。
他に亡くなったのは監獄の看守だ。
あの女に看守の数人が誑かされて5人は脱獄の時に殺されたんだ。
オーレオールも言っていたが、1名は連れて行かれている。伝えていなかっただろうか…。陛下と会った時にも少し話したと思ったが。」

「あの時は緊張しすぎてあんまり覚えてない…。すっごい緊張してて…。」

「そうか、それはすまなかった。あの女の事をあまり考えたくない故に無意識に避けていた。他にもまだ言ってないことがあるかもわからないが、パッと出てこないな。
そういえばロティは欲しいものは決まったか?」

「欲しいもの?…あー、陛下の言ってたやつ?欲しいものと言っても…。」


いつかは家でも買ってのんびり暮らしたいとか恋人とか欲しい等と前は思っていたけど、欲しいものが家と言うのは規模が大きすぎるし、今はこうしてルークと一緒にこの屋敷に住んでいるので私の願いは叶っている状態なのではないのだろうか。

実際はもっとこじんまりとした家を想像していた為、この屋敷はあまりにも広すぎる。
現に私はまだ把握できていない箇所が沢山ある。


欲しいものから想像が脱線してしまい、考え直す。
やはりこれといって必要なものはない。
もし、あるとするならば。

「寝巻き…?」
「ん??寝巻き?」

「あー、うん。ルークみたいな寝巻きの方が脚が出なくて安心」
「今着ているのは嫌なのか?」

「嫌と言うよりも少し短くて心許ないというか…?スカートタイプって今まであまり履かなか」
「俺は今のがいい。」

「寝てる時とか捲れ」
「布団があるから見えない。大丈夫だ。」

「ルーク遮りすぎじゃない??」
「…。」

私の話を遮りまくるルークをじっと見つめると気不味そうに目線をずらす。
衣装部屋にある寝巻きは少なくともルークの好みのものであるのがわかった。

普段着は私の好むものもあるので夜くらいはナイトドレスを着るべきか少々悩む。
数日着て肌触りはかなりいいもので寝易いのも分かっているので拒否するまではいかないのが難点だ。
この答えは保留にしようと一度考えをやめた。

短く息を吐いた後、目線を合わせないルークの頬に触れて話す。

「ルーク、スザンヌのとこに行く前にこの屋敷の中を見てもいい?私知らない部屋とかまだあるし、出来れば庭もみたいな。薬草とかあるでしょ?」
「ああ、構わない。案内する。」

私が尋ねるとルークは私を見てくれ、ほっとした様に快諾してくれた。

「ありがとう。」
「欲しいものも考えていてくれ。屋敷を見ながらなら少し浮かぶかもしれないし。」

「うーん、わかった。」
「後は何かあるか?」

「ううん、大丈夫かな?」
「そうか、なら。」

ルークが両腕を軽く広げて微笑んでいる。
改められると少し気恥ずかしいが、無言のまま私はルークの胸に擦り寄った。
ルークの腕の中は僅かにまだ緊張は残るがホッとしてしまう居心地の良さがある。
背中に手を回そうとしたが、少しばかり体勢がきつい。

「ルーク、ちょっと体勢がね…。」
「じゃあここに乗って。」

私と体を離し柔かに自分の太腿を差すルークだが、私は顔の熱が上がるのを感じた。

「ルーク…それは…あの、恥ずかしいし…。」
「何が恥ずかしいんだ?」

「体重とか…。」
「全然軽いから気にならない。」

「…。」

このパターンは駄目だ。
なんと言っても座らせられる未来しかない。
笑顔のルークだが、こうなったら頑固だ。 

本当の事を言ってみるべきかと思い、おずおずと話す。

「ルークと近すぎて恥ずかしいんだよ…。
凄い密着するでしょ…。
抱きしめられるのだってまだ緊張するし、キスだって軽いのならまだしも…その…舌のやつは慣れないし…。たまに息…苦しいんだもん。」
「……あーー…。…反則級にずるい。」

「え、わわわあ!」

一瞬笑顔を止め、顔を伏せたはずのルークが次の瞬間には何故か私の上に覆い被さっていた。体勢がきついからと直すはずがどうしてソファに押し倒される事になったのか理解不能だ。
ルークの太腿の上に座るのも充分恥ずかしいのに上から獲物を狙い定められている様な目で見つめられるこの体勢も充分恥ずかしい。

「ル、ル、ル、ルーク。落ち着いてっ…。」

その獰猛な猛禽類の瞳はいつ見ても少し怖い。掴まれている手首は痛くはないが力を入れても抜け出せないくらいには私を捉えている。

「ロティ…恥ずかしいなら少し慣れようか…?」

余裕がある色気漂う笑みを見せたルークは私の頭にキスをしてきた。
私とは違う首元と喉仏が近くにくっきり見えた。それだけなのに艶っぽくて頭のキスが何処かに飛んでいきそうになる。

頭から離れたと思ったら今度は耳にキスされる。擽ったくてルークの息がかかる耳が熱い。

「ひん!?」

擽ったすぎて声が出てしまった。あろう事が耳を齧られたのだ。擽ったいだけではなく驚きもしたが。
それも終わると首にキスが降ってくる。

「ルーク!こんなんじゃ慣れるどころか心臓が破裂しちゃうからストップ!」
「まだ途中だ。」

「でも聞いてみて!心音!」

私はルークの手を振り解き、ルークの頭をがっちりと掴んで胸元に抱き寄せた。
このバクバクと煩い鼓動を聞けばルークも止まってくれるだろうと思いながら。

ルークをチラ見するとルークからゴクッと音がした。
首を傾げ、手を緩めるとルークの顔が若干怒ってるような表情だ。

私の耳と頬を纏めるように手で包み込まれりと、息を軽く乱したルークが目の前に来た。

「…駄目だ、キスさせて。」

承諾も了解も言えないまま、私はルークに口を塞がれた。
離れては塞がれ、角度や深さを変えられ。
物足りないを何度も言われているかのようだ。

途中止まって欲しくてルークの名前を呼ぼうにもそれごとキスに飲み込まれてしまい、ただの息と水音に全て消えてしまう。


離された時にはどちらも息が上がっていた。
ルークの目がまだギラついていて、ぞくりとら体が震えたが束の間に覆い被さっていた体を退けた。

「悪い…。少し席を外す…。」

そい言うとルークは足早に部屋を出て行った。

「な。はぁ…。なんだっ、たんだろ…?」

酸素が行き渡らない頭は思考を鈍らせた。
暫くの間、ただひたらすら酸素を取り入れようと必死に呼吸をした。
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