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130.顔が焼けるほど熱かった…。◆
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デートと言ってもどこかに遠出するわけでもなく、綺麗な石をもらった後に岩場に行って魔石を探して遊ぶよりは気分転換にもなるからと河原に行こうと言う話になり、いつもの河原にきた私とルーカス。
芝生に座ると小さい花が沢山咲いていて思わず笑顔になってしまった。
「小さな花沢山咲いてるね!可愛いから摘みたいな。」
「じゃあ一緒に摘む。あっちには少し大きめの花も咲いてるし、後で摘もうか。」
「わ!本当だ!摘もう摘もう!」
そう言って丁寧に花を摘み始める私達。
久々の穏やかな午後に、ルーカスと一緒にこうして居られる事が幸せだ。
窓のない治療室に篭りきりは思った以上に体に疲れが溜まるみたいだ。
心地の良い日差しの中、綺麗で可愛い花を摘むのは楽しい。溜まった疲れも取れていく感覚がある。
それも1人ではなく大好きなルーカスと共に一緒にこうしていられるからだろう。
こういう愛おしい時間が続いて欲しい、孤児院を出てからもルーカスと一緒に居て共に生きていきたい。
だけど、神父はそれを許してくれるのかと疑問がある。こじつけて教会に留まらせられるのではないかと考えてしまう。
補佐から金貨を貰って以降、1度神父に呼ばれ月に一回の金貨の支給が決まったと不機嫌な顔で教えてもらった。
外では回復魔法が使えない上、午後の時間も治療に当たる事があるため他の仕事ができない配慮も含まれているそうだ。
仕事で貰ったお金は回収はされても貰えるとは思っていなかった分有難い。15歳になって出て行く時まで無駄遣いはしない様にしておこう。
静かな川の流れとカサップチッと花を取る音だけが2人の間に響いた。
いつもならここにトレイヴァンがいるため居ないのが少し違和感があるほど、私はトレイヴァンに馴染んでいる。
トレイヴァンの話はルーカスに簡易に伝えていて、呪いの経緯の詳しい話は教えていないものの、トレイヴァンにはエオラと言う最愛の人がいて、その人が死んでしまった事によりトレイヴァンは自分に掛けてしまった不老不死の呪いを解こうと私を訪ねてきたと話をしていた。
ルーカスは話を聞いた時には首を傾げて眉を顰めていたが、詳しく言えないと伝えると素直に引き下がってくれたのでホッとした。
話せばトレイヴァンの見方が変わる可能性もある。解術に数年時間必要だし、長い時間顔を合わせるためそれは避けたいのだ。
お互い黙って花を摘んでいたからか地味に花が溜まっている。なんの花かわからない花を見つめながら私はルーカスに話し掛けた。
「トレイさんが言ってた…。
転生したら忘れちゃうってなんだか悲しいね…。
トレイさんエオラさんの事大好きなのに…。」
「うん…。エオラさんだって生まれ変わっても覚えていればトレイさんに会いにきたかもしれないのに…。頑張れば覚えていられないかな…。
あー…でも生まれ変わったら姿も変わるのか…。」
「…んー。私はなんとなく…ルーカスなら姿が変わってもわかる気がする。
私探し物得意だし!」
「っ、狡い…。僕は…どうだろう…。
でもロティのこと忘れたくないし…。忘れてほしくないな…。」
「それは私だって一緒だよ?
ルーカスが私の事忘れたら悲しいし…私もルーカスの事忘れなくないもん。
きっとルーカスに忘れられたら泣いちゃうかもね。」
「そ…それは困る。あ…でもそういえばトレイさんが魔女がいるって…。」
「魔女さんやだ…。狡いんだもん。」
長命でその上生まれ変わっても幼い頃の自分に戻るだけなんて反則級だと思うのだが、そう思うのはトレイヴァンの話を聞いているからなのだろう。
私がぷくっと頬を膨らませるとルーカスはその様子をチラッと見ながら少し困った様に続けた。
「ロティの中に溜まった術式を忘れさせてもらうためにトレイさんに聞いておいたんだけど…それはいいの?」
「あっ、えっ…!?そう言う事だったんだ。
でも…魔女さんに会ってもきっと羨ましくなっちゃうから…。会いに行かないよ。
呪術は使わないように頑張ればいいだけだし大丈夫。
私の為にありがとう。ルーカス。
仮に魔女さんにもし会っても顔を顰めないように私は魔女さんの話を頭から消しておこうかな…。じゃないといつまでも狡いって思っちゃいそうだし。」
「そう…?僕は覚えておきたいな。一応。」
そう言ってまた沈黙が流れる。
ルーカスと一緒にいても沈黙は嫌じゃない。
河原で花を摘みながら、ふとルーカスを見ると優しい眼差しを私に向け少し照れた様な顔で私に言う。
「ねぇ、ロティ、前にも…言ったけど…。
大人になったら僕と結婚してほしい…。
ずっと…僕はロティと一緒に居たい。」
「わ…、私もずっとルーカスと一緒に居たいっ!…でも、神父様許してくれるかな…。
無事に出れるかな…?」
私は俯きながら不安混じりに話した。
内心許して貰えない気がしてならない。
恋愛は悪い事じゃないのに悪いをしているようで後ろめたい。
実際バレたら面倒になるとトレイヴァン以外には話していないのだ。
ルーカスはスッと目つきを鋭くさせ、低く唸るような声で話す。
「神父様…か…。僕はあんなやつ嫌いだ……。裏であいつが怪しい事をしているのはわかっている…。いつか曝け出してやる…。」
「まだそんな事言ってるの…?
ルーカスは神父様がなにをしてるか知ってるの…?」
「いや……詳しくは……。
だけど、怪しいのは確かなんだ…。
信用ならない…。出来ればロティも近づいてほしくない。」
ルーカスがそう言って力任せに抜いた花は少し拉げてしまった。
このままだと傷んでしまうのが早いだろう。
だが拉げた花にルーカスは気づく様子もなく、川を睨むように見つめている。
私はルーカスからそっと花をとり形を整えたが、僅かに形が良くなっただけで完全には治らない。
花でも回復魔法が効くかはわからないが、そっと回復魔法を唱えてやると花は忽ち元の形に戻ってゆく。
その様子をルーカスは愛おしそうな目で見ていた。
「僕は…絶対ロティを幸せにしたい。」
最近トレイヴァンの話を聞くようになったから尚更の事。
トレイヴァンの話はエオラへの愛の言葉だったり自分が如何にエオラを愛しているかなどこちらが恥ずかしくなる様なものばかりだったのだ。
それに感化されたルーカスは私にも同じように自分の思いを伝えようとしてくれている。
自分で言っていて恥ずかしくなるのかたまに顔を真っ赤にさせるルーカスが可愛くて愛おしくて更に好きが増していく。
私もトレイヴァンの話を聞いて尚の事後悔をしたくないと気持ちが募る。
だからこそ、私はルーカスに伝えたい。
「私も…ルーカスを幸せにしたいし、幸せになりたいな…。今もルーカスと居れて幸せだけど…、孤児院から出て2人で暮らせるならそっちの方が楽しそうだし、こそこそしなくていいからいつでも手を繋げるしね!」
「…手だけじゃないでしょ。」
「えっ。」
「抱きしめる事もキスする事も自由にできる…。」
「っっ!
そ、そ、そ、そうっだね!?」
「…僕とするの嫌?」
「ちが!違うよ!ただ…恥ずかしいだけで…。嫌じゃないよ…。ルーカスの事…好きだもん…。」
「…そ?ならいいや。バラじゃないけど…これはあげるね。」
「えっ、わ!ありがとうっ。」
恥ずかしがってルーカスを直視できないうちにルーカスは花の冠を作っていたみたいで私の頭にぽんとそれを乗せてくれた。
花の冠はミラが前に作ってくれたのを真似しようとしたが私は上手く作れず諦めた事がある。
まさかルーカスも作れるとは思わず可愛い花の冠に目を輝かせてしまった。
「…僕の…姫っ…てことで…。」
真面目な顔をして言うルーカスは自分で言ったことに耐えきれなくなり今にもシュウシュウと蒸気が出そうなほど顔を赤くして恥ずかしがっているようだ。
トレイヴァンに感化されつつあるとは言えルーカスはルーカスみたいでほっとしながら私は辺りを見回し誰もいない事を確認するとにっこりと笑ってルーカスに言う。
「ありがとう、王子様っ。」
ルーカスの頬に私から贈る初のキスのおまけを添えて。
その後ルーカスが突然川に顔を付けに行く奇行に走るとはこの時は思っても見なかった。
◆◆◆
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