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しおりを挟むそのこと思い出す前は、普通に、この「重力」がまだ発見されてない国テトラで楽しく生きてた。
転生してもやっぱ顔が良かった(というか同じ顔だった)俺は近所の同い年ぐらいの子供たちと遊ぶ時もちょっとオマケされて、雪石飛ばしのときもでかくて硬いやつじゃなくて、ふんわりオニギリぐらいの雪石をぶつけられてた。
それを当たり前だと思って、家でも無条件で可愛がられてたから、少しでも両親の点数を稼ごうとせっせとはたらいてた三つ上の兄貴のことなんか無視して、タラタラしてた──けど、ふいに思い出したんだ。12歳の誕生日にもらったチビ馬のロッテに乗って、火の月の生温い夜の空気吸いながら空見上げた時に、ドーンってさ。「無い」って思ったんだ。花が咲かない、って。急に。俺は慌てた。空に光るツブツブはあっても、花が咲く筈無いのに、見えたんだ。赤、緑、紫、それから、金色に光って飛び散ってしだれ落ちる、大きな花が。
──花火──
俺の頭の中に次々前世の記憶が蘇っては弾けた。それで、思い出した。迷惑かけた三万五千人と、わざとじゃない、事故だったとはいえ電車止めちゃった補償で困らせた両親と……俺のせいで死んだ、「天から10物」……安曇野巧のことを。
俺は呼吸ができないくらい、泣いた。ごめんなさい、ごめんなさい、って言いながら。
それで、すっかり全部思い出して涙がからっぽになってから、家に帰り……「どこ行ってたの? どうしたの? その眼! 何があったの、ファビアン……!!」抱き締める母親の胸にほっぺを埋めてまた泣いた。「ごめんなさい、お母さん」それから、「兄さん」。
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