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第3章 宿敵の家と宿敵でなくなってから
第148話 一方、シア達からの評価は
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「以上が、ローズ・フォルス、旧名ローズ・アインスタットのこれまでの経歴になります」
ユティがまとめてくれた情報の書類を見ながら彼女からの報告を簡単に聞く。少し気になったので調べてもらいましたが、ローズに誰かと深いつながりがあるといったような怪しい点は見つかりませんでした。
一般的な貴族夫人といったところでしょうか。これならば特に問題はなさそうです。
「つい先日南側の交流会に参加してローズ・フォルスに接触したそうですが、いかがでしたか?」
「そうですねぇ……」
魔法や話術で周りの夫人を集めた私を遠巻きに見るローズの姿を思い出します。作り笑いと細められた瞼から覗く冷たい瞳は、ただの貴族夫人ならば身震いをするほどなのかもしれませんが。
「うーん、威嚇したユキリスのようなもの……でしょうか?」
「ユキリス?」
たまたま交流会にて、氷で作った動物の像のモチーフだったので例に出しましたが、ユティはしっくり来ていないようで首をかしげています。
どういうことなのか説明するために私は続けました。
「ローズ婦人は強い方ではなく、自分を強く見せたい方ということです。
ある程度予想はしていましたが、ここにあるような強い口調や態度、自分を美しく着飾って交流会で注目を浴びたいといった行動は、もちろん自分がしたいというのもありますが、侮られたくないという気持ちからでしょう」
実際、アインスタット家での過去の態度を調べてもらいましたが、父や母に対しては聞き訳が良く、使用人たちには強い物言いをしていたようです。ただその一方で少しびくびくしているような面もあったそうですので、間違いないと思います。
親睦会で初めて会ったときも私との会話で驚き、イライラしていた雰囲気はありましたが、その中にほんの少しだけ怯えも見えた気がしますからね。
「ですので、そういった意味で威嚇するユキリスということです」
「それは何と言いますか……可愛らしいと言いますか……」
苦笑いするユティを視界の隅に入れて私は手元の書類をめくります。そこに記されていたのは、彼女にとって夫であり、私にとって義理の兄でもあるカイラスとの関係性でした。
冷え切っている……とまでは言えないものの上手くいっていない、というのが情報部隊が集めたものです。
カイラスはカイラスでローズにそこまで関心がないものの、彼女が求めるものはほぼ全て与えていますし、ローズはローズでカイラスについて不満はあるものの、夫としての価値が高すぎるためにそれを甘んじて受け入れている、と
「ただ過去にはカイラスに当主の座を狙うようにと唆したこともあるようですが……」
ユティの言った内容は確かに書類に書かれていました。ですがこの件に関しては、そこまで問題視はしていません。
「こちらは次期当主の候補筆頭がゼロードの時代ですからね。あれがなるくらいなら自分の夫の方が良い、と思うのも無理はないでしょう」
実際、私もそう思っていましたし、と理由を述べると、ユティは頷いて口を開いた。
「それについては同意ですが、今も同じようなことを思っているかもしれませんよ?
とはいえ夫であるカイラスがそれを許さないとは思いますが……念のためにローズ・フォルスを監視をしておきますか?」
私と同じような結論に至っているユティは確認してきますが、私は首を横に振って否定の意を示します。
「カイラスの動向は探り続けているので、そちらは良いでしょう」
「かしこまりました」
軽く頭を下げたユティは、しかしそのまま退室はせずに再び口を開きます。
「続いてレイモンド王子とマリアベル皇女の結婚式典ですが、こちらも参加人員はすでに用意が出来ています。私、オーラ、ノクターン先生は警備ではなく招待客として参加、という事でよろしかったでしょうか?」
「はい、それで構いません。二日後にノヴァさんと共に会場の下見を行いますので、そこで警備の配置をある程度決める予定です。後ほど共有しますね」
「お願いします」
今回のレイとマリアベル皇女の結婚式典はこれまでの王族の式典とは違い、帝国と王国の関係が良好であることを外部に示す絶好の機会になります。
予定通り行われ、そして何の問題もなく終わることが求められます。
「邪魔をする勢力の心当たりはありますか?」
だからこそ事前に帝国、あるいは王国でこの結婚式典を妨害する勢力は洗い出しておきたかった。
ユティは少し考えるそぶりをして、しばらくしてから口を開きます。
「王国、帝国どちらにも、両国の平和を快く思わない者はいるでしょう。戦時中の方が良かったと考える人も同じように。
とはいえ、当日に妨害をしてくるような勢力も、仮にしてくるとしてアークゲートとフォルスの警備を何とかできる勢力も思いつきません」
ユティの言葉は相手を侮っているようにも思えますが、アークゲート家とフォルス家、この国の二大貴族が万全の状態で警備をする会場で悪さを出来る勢力がいないのもまた事実。ユティは自分、私、オーラにノークすらも戦力の勘定に入れているでしょうしね。
まあ、ユティの言いたいことは分かりましたが。
「念のため、当日の警備担当には十分に注意、および警戒することを徹底してください。今回はノヴァさんと共同で行う初めての大きな仕事ですから、フォルス家の人員とも最大限協力するように、と」
「かしこまりました。そのようにお伝えします」
警備についての流れをおおよそ確認したところで、私は腕を組んで考えます。自分の属する国については考えましたが、あと残っているのは帝国について。当然、帝国からも多数の貴族が参加します。
そしてその中にはあの無敗将軍、ダリア・マクナカンさんも居るでしょう。ノヴァさんに以前話をしたときには興味を持っていたので、今回の結婚式典で話をする機会があると良いのですが。
「いずれにせよ、この式典を成功させるために尽力する必要があります。私一人では力不足でしょう。ユティ、頼りにしていますよ」
「はい、お任せください。当主様とノヴァさんのためにアークゲート家は命燃やしきるまで尽くします」
「それは尽くしすぎですが……」
大真面目な顔でとんでもないことを口にするユティに、私は苦笑いで返した。
ユティがまとめてくれた情報の書類を見ながら彼女からの報告を簡単に聞く。少し気になったので調べてもらいましたが、ローズに誰かと深いつながりがあるといったような怪しい点は見つかりませんでした。
一般的な貴族夫人といったところでしょうか。これならば特に問題はなさそうです。
「つい先日南側の交流会に参加してローズ・フォルスに接触したそうですが、いかがでしたか?」
「そうですねぇ……」
魔法や話術で周りの夫人を集めた私を遠巻きに見るローズの姿を思い出します。作り笑いと細められた瞼から覗く冷たい瞳は、ただの貴族夫人ならば身震いをするほどなのかもしれませんが。
「うーん、威嚇したユキリスのようなもの……でしょうか?」
「ユキリス?」
たまたま交流会にて、氷で作った動物の像のモチーフだったので例に出しましたが、ユティはしっくり来ていないようで首をかしげています。
どういうことなのか説明するために私は続けました。
「ローズ婦人は強い方ではなく、自分を強く見せたい方ということです。
ある程度予想はしていましたが、ここにあるような強い口調や態度、自分を美しく着飾って交流会で注目を浴びたいといった行動は、もちろん自分がしたいというのもありますが、侮られたくないという気持ちからでしょう」
実際、アインスタット家での過去の態度を調べてもらいましたが、父や母に対しては聞き訳が良く、使用人たちには強い物言いをしていたようです。ただその一方で少しびくびくしているような面もあったそうですので、間違いないと思います。
親睦会で初めて会ったときも私との会話で驚き、イライラしていた雰囲気はありましたが、その中にほんの少しだけ怯えも見えた気がしますからね。
「ですので、そういった意味で威嚇するユキリスということです」
「それは何と言いますか……可愛らしいと言いますか……」
苦笑いするユティを視界の隅に入れて私は手元の書類をめくります。そこに記されていたのは、彼女にとって夫であり、私にとって義理の兄でもあるカイラスとの関係性でした。
冷え切っている……とまでは言えないものの上手くいっていない、というのが情報部隊が集めたものです。
カイラスはカイラスでローズにそこまで関心がないものの、彼女が求めるものはほぼ全て与えていますし、ローズはローズでカイラスについて不満はあるものの、夫としての価値が高すぎるためにそれを甘んじて受け入れている、と
「ただ過去にはカイラスに当主の座を狙うようにと唆したこともあるようですが……」
ユティの言った内容は確かに書類に書かれていました。ですがこの件に関しては、そこまで問題視はしていません。
「こちらは次期当主の候補筆頭がゼロードの時代ですからね。あれがなるくらいなら自分の夫の方が良い、と思うのも無理はないでしょう」
実際、私もそう思っていましたし、と理由を述べると、ユティは頷いて口を開いた。
「それについては同意ですが、今も同じようなことを思っているかもしれませんよ?
とはいえ夫であるカイラスがそれを許さないとは思いますが……念のためにローズ・フォルスを監視をしておきますか?」
私と同じような結論に至っているユティは確認してきますが、私は首を横に振って否定の意を示します。
「カイラスの動向は探り続けているので、そちらは良いでしょう」
「かしこまりました」
軽く頭を下げたユティは、しかしそのまま退室はせずに再び口を開きます。
「続いてレイモンド王子とマリアベル皇女の結婚式典ですが、こちらも参加人員はすでに用意が出来ています。私、オーラ、ノクターン先生は警備ではなく招待客として参加、という事でよろしかったでしょうか?」
「はい、それで構いません。二日後にノヴァさんと共に会場の下見を行いますので、そこで警備の配置をある程度決める予定です。後ほど共有しますね」
「お願いします」
今回のレイとマリアベル皇女の結婚式典はこれまでの王族の式典とは違い、帝国と王国の関係が良好であることを外部に示す絶好の機会になります。
予定通り行われ、そして何の問題もなく終わることが求められます。
「邪魔をする勢力の心当たりはありますか?」
だからこそ事前に帝国、あるいは王国でこの結婚式典を妨害する勢力は洗い出しておきたかった。
ユティは少し考えるそぶりをして、しばらくしてから口を開きます。
「王国、帝国どちらにも、両国の平和を快く思わない者はいるでしょう。戦時中の方が良かったと考える人も同じように。
とはいえ、当日に妨害をしてくるような勢力も、仮にしてくるとしてアークゲートとフォルスの警備を何とかできる勢力も思いつきません」
ユティの言葉は相手を侮っているようにも思えますが、アークゲート家とフォルス家、この国の二大貴族が万全の状態で警備をする会場で悪さを出来る勢力がいないのもまた事実。ユティは自分、私、オーラにノークすらも戦力の勘定に入れているでしょうしね。
まあ、ユティの言いたいことは分かりましたが。
「念のため、当日の警備担当には十分に注意、および警戒することを徹底してください。今回はノヴァさんと共同で行う初めての大きな仕事ですから、フォルス家の人員とも最大限協力するように、と」
「かしこまりました。そのようにお伝えします」
警備についての流れをおおよそ確認したところで、私は腕を組んで考えます。自分の属する国については考えましたが、あと残っているのは帝国について。当然、帝国からも多数の貴族が参加します。
そしてその中にはあの無敗将軍、ダリア・マクナカンさんも居るでしょう。ノヴァさんに以前話をしたときには興味を持っていたので、今回の結婚式典で話をする機会があると良いのですが。
「いずれにせよ、この式典を成功させるために尽力する必要があります。私一人では力不足でしょう。ユティ、頼りにしていますよ」
「はい、お任せください。当主様とノヴァさんのためにアークゲート家は命燃やしきるまで尽くします」
「それは尽くしすぎですが……」
大真面目な顔でとんでもないことを口にするユティに、私は苦笑いで返した。
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