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第3章 宿敵の家と宿敵でなくなってから
第217話 それは彼らにとっても運命の日
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運命の日、俺はカイラスと共にエリザベートに連れられて以前集まった隠れ家を訪れていた。寂れたテーブルを囲むのは俺にカイラス、そしてエリザベートとティアラ。
「……本当に今日なんだろうな? 何も聞いていないが」
「間違いない。だが、正確な時間まではまだ分からない。少し寛いで待て」
「寛げと言われても……」
俺は周りを見渡すものの、こんな寂れた場所に暇を潰せるものがあるわけがない。カイラスはじっと目を瞑って時が来るのを待っているし、ティアラはティアラでエリザベートを狂信者の目で見つめている。当のエリザベートも余裕の表情でじっとしているだけだ。
同じフォルス家でありながら、俺とカイラスには悪魔の出産予定日について何も聞かされていない。そこは同じ一族であろうともそこまで仲が良いわけではないから当然ではあるが、それをエリザベートは知っていた。なぜ知っているのか疑問は残るが、聞いたところで教えてはくれないだろう。
「……今一度、計画の全容を教えてくれないか? 念のために確認したい」
目を瞑ったままでポツリと呟くカイラスに、エリザベートは目を向ける。少しだけ沈黙したが、しばらくして口を開いた。
「時が来たら私がアークゲート家にお前たち三人を移動させる。その後、私の魔力の回復を行い、少し時間を置いて私も向かう予定だ。お前達は屋敷に乗り込み、目的であるレティシア・アークゲートを抹殺しろ。邪魔されるなら攻め込むだけで構わん。その場合は私が直接やる」
「……敵の詳細な戦力は?」
「レティシアの夫のノヴァ・フォルス、そして屋敷に常駐しているユースティティア・アークゲート、そしてそれ以外ではアークゲートの執行者が当てはまるだろう。とはいえアークゲート側の戦力はそれぞれがティアラ以下、ノヴァに関してもレティシアの援護が得られない状態だ。勝率は十分にある」
そこまでエリザベートの話を聞いて、俺はゼロードが出来損ないに敗れたときの事を思い出した。あの時、あの場にはもう一人の少女がいた筈だ。名前は確か。
「……オーロラ? とかいう少女については?」
「ほう? オーロラを知っているのか。あれに関してはおそらく参加しない。ここ数か月、あれがアークゲートの屋敷を訪れた形跡はない。仲違いでもしたか……」
「なるほど」
確認を終えたところで、俺はジト目をエリザベートに向ける。
「……というよりも、こちらには悪魔に気を付けろと言っておきながら、アークゲートの屋敷を探っているようだが、大丈夫なのか?」
「細心の注意は払っているし、観測しているのも人の出入りだけだ。オーロラの件に関してもアークゲートの屋敷を観察してではなく、ノークの……いや、今はオーロラの屋敷を観察して得た情報だからな」
「なら……いいのだが……」
エリザベートの持っている情報量は膨大で、それをどのように得ているのかはいまひとつよく分からない。普通であれば一人では集めきれない量だが、情報提供に関する協力者が居るような気配もない。しかし、このエリザベートならば本当にたった一人で全ての情報を集めていても不思議ではない。
「ちなみに移動させる先は屋敷の北側だ。屋敷の方向についてはティアラが知っているから、彼女についていけ。ティアラ、二人を確実に案内するように」
「かしこまりました、姉上」
「他に何か質問はあるか? 決行前だ、なるべく疑問点や不安点は解消した方が良い」
エリザベートの問いかけに、俺は考える。けれどこの後の流れについては全て理解しているつもりだ。カイラスの方をチラリと見てみれば、彼は頷いていた。俺もエリザベートを見て、頷いて返す。
「ならば、後は時が来るのを待つだけだ」
そう言ったエリザベートはまた目を瞑って、黙り込んでしまった。
「…………」
俺も俺で、落ち着くように目を瞑る。けれど時間が迫ってきているのを感じて、組んだ腕を指が無意識に叩いていた。それに気づいて落ち着けようとすればするほど、今度は心臓の音が気になってしまう。
もうすぐ、始まるのだ。運命の時が。
長かった。
そう思い返す。あの悪魔、レティシア・アークゲートが出来損ないに縁談を申し込んでから実に数年の時が流れている。その間、色々なことがあった。これまでの流れを変えすぎることがあった。それだけならば良かったが、出来損ないは禁忌に触れた。フォルスを消すという禁忌に。
もしそれが無ければこんなことにはならなかっただろう。少なくとも、フォルスとアークゲートはいずれ適切な距離を取り直していた筈なのだから。
だがこれで全てが元に戻る。戻るのだ。フォルス家の当主にはカイラスが君臨し、また俺達が守ってきたフォルス家が……息を吹き返す。夢のような瞬間は、もうすぐだ。
「……来た」
ポツリと、エリザベートが呟く。その呟きは小さかったものの、俺の耳にはっきりと響いた。きっとそれは他の者達にも同じこと。
「行くぞ、まずはお前たち三人をアークゲートの屋敷に送る。存分に暴れてくると良い」
「はい、姉上」
「ああ、分かった」
「……了解した」
今まで開かれることがなかった部屋の反対側の扉が開き、その奥に続く薄暗い廊下が姿を現す。その先はきっと、アークゲートの屋敷に繋がっている。
北の大地は寒く冷えるという事を聞かされていたので羽織っていた厚着を握り締め、俺はカイラスと共にエリザベートに従う。
運命の時が、ついに来た。
「……本当に今日なんだろうな? 何も聞いていないが」
「間違いない。だが、正確な時間まではまだ分からない。少し寛いで待て」
「寛げと言われても……」
俺は周りを見渡すものの、こんな寂れた場所に暇を潰せるものがあるわけがない。カイラスはじっと目を瞑って時が来るのを待っているし、ティアラはティアラでエリザベートを狂信者の目で見つめている。当のエリザベートも余裕の表情でじっとしているだけだ。
同じフォルス家でありながら、俺とカイラスには悪魔の出産予定日について何も聞かされていない。そこは同じ一族であろうともそこまで仲が良いわけではないから当然ではあるが、それをエリザベートは知っていた。なぜ知っているのか疑問は残るが、聞いたところで教えてはくれないだろう。
「……今一度、計画の全容を教えてくれないか? 念のために確認したい」
目を瞑ったままでポツリと呟くカイラスに、エリザベートは目を向ける。少しだけ沈黙したが、しばらくして口を開いた。
「時が来たら私がアークゲート家にお前たち三人を移動させる。その後、私の魔力の回復を行い、少し時間を置いて私も向かう予定だ。お前達は屋敷に乗り込み、目的であるレティシア・アークゲートを抹殺しろ。邪魔されるなら攻め込むだけで構わん。その場合は私が直接やる」
「……敵の詳細な戦力は?」
「レティシアの夫のノヴァ・フォルス、そして屋敷に常駐しているユースティティア・アークゲート、そしてそれ以外ではアークゲートの執行者が当てはまるだろう。とはいえアークゲート側の戦力はそれぞれがティアラ以下、ノヴァに関してもレティシアの援護が得られない状態だ。勝率は十分にある」
そこまでエリザベートの話を聞いて、俺はゼロードが出来損ないに敗れたときの事を思い出した。あの時、あの場にはもう一人の少女がいた筈だ。名前は確か。
「……オーロラ? とかいう少女については?」
「ほう? オーロラを知っているのか。あれに関してはおそらく参加しない。ここ数か月、あれがアークゲートの屋敷を訪れた形跡はない。仲違いでもしたか……」
「なるほど」
確認を終えたところで、俺はジト目をエリザベートに向ける。
「……というよりも、こちらには悪魔に気を付けろと言っておきながら、アークゲートの屋敷を探っているようだが、大丈夫なのか?」
「細心の注意は払っているし、観測しているのも人の出入りだけだ。オーロラの件に関してもアークゲートの屋敷を観察してではなく、ノークの……いや、今はオーロラの屋敷を観察して得た情報だからな」
「なら……いいのだが……」
エリザベートの持っている情報量は膨大で、それをどのように得ているのかはいまひとつよく分からない。普通であれば一人では集めきれない量だが、情報提供に関する協力者が居るような気配もない。しかし、このエリザベートならば本当にたった一人で全ての情報を集めていても不思議ではない。
「ちなみに移動させる先は屋敷の北側だ。屋敷の方向についてはティアラが知っているから、彼女についていけ。ティアラ、二人を確実に案内するように」
「かしこまりました、姉上」
「他に何か質問はあるか? 決行前だ、なるべく疑問点や不安点は解消した方が良い」
エリザベートの問いかけに、俺は考える。けれどこの後の流れについては全て理解しているつもりだ。カイラスの方をチラリと見てみれば、彼は頷いていた。俺もエリザベートを見て、頷いて返す。
「ならば、後は時が来るのを待つだけだ」
そう言ったエリザベートはまた目を瞑って、黙り込んでしまった。
「…………」
俺も俺で、落ち着くように目を瞑る。けれど時間が迫ってきているのを感じて、組んだ腕を指が無意識に叩いていた。それに気づいて落ち着けようとすればするほど、今度は心臓の音が気になってしまう。
もうすぐ、始まるのだ。運命の時が。
長かった。
そう思い返す。あの悪魔、レティシア・アークゲートが出来損ないに縁談を申し込んでから実に数年の時が流れている。その間、色々なことがあった。これまでの流れを変えすぎることがあった。それだけならば良かったが、出来損ないは禁忌に触れた。フォルスを消すという禁忌に。
もしそれが無ければこんなことにはならなかっただろう。少なくとも、フォルスとアークゲートはいずれ適切な距離を取り直していた筈なのだから。
だがこれで全てが元に戻る。戻るのだ。フォルス家の当主にはカイラスが君臨し、また俺達が守ってきたフォルス家が……息を吹き返す。夢のような瞬間は、もうすぐだ。
「……来た」
ポツリと、エリザベートが呟く。その呟きは小さかったものの、俺の耳にはっきりと響いた。きっとそれは他の者達にも同じこと。
「行くぞ、まずはお前たち三人をアークゲートの屋敷に送る。存分に暴れてくると良い」
「はい、姉上」
「ああ、分かった」
「……了解した」
今まで開かれることがなかった部屋の反対側の扉が開き、その奥に続く薄暗い廊下が姿を現す。その先はきっと、アークゲートの屋敷に繋がっている。
北の大地は寒く冷えるという事を聞かされていたので羽織っていた厚着を握り締め、俺はカイラスと共にエリザベートに従う。
運命の時が、ついに来た。
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