夏の終わりに

夏の終わりに

夏の終わりに、僕はいつものようにジャズを聴きながら、古いアパートのベランダに座っていた。空はオレンジ色に染まり、遠くのビルのシルエットが夕日に切り取られている。そんな中、彼女は現れた。彼女はいつも通り、何も言わずに隣に座り、遠くを見つめた。

「どうしたの？」僕は尋ねた。

彼女はしばらく沈黙を守った後、ゆっくりと口を開いた。「ねえ、夏が終わるのって、少し寂しくない？」

その質問に、僕は答えられなかった。なぜなら、僕自身も夏の終わりが寂しいと感じていたからだ。夏はいつも、刹那的で、熱くて、そして美しい。だけど、それが終わる時、何か大切なものを失ったような気持ちになる。

「でも、秋もいいじゃないか。新しいジャズのレコードが出るし、読みかけの本を読み終える時間もできる。」

彼女は微笑んだ。それは夏の終わりの夕暮れのような、切なくて、儚い微笑みだった。