金になるなら何でも売ってやるー元公爵令嬢、娼婦になって復讐しますー

だんだん

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四人の公娼

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「お姉様が言うなら良いですわ。」





ラダはすんなりと了承してくれた。

暫く【仕事】はしたくないと言っていたが、私が言うのなら、と納得したようだった。





「他のお二方は…拒否するでしょうね。」





そもそも戦場は危険を伴う。それは娼婦であっても変わらない。



女は兵士でなければ矢鱈と殺されることはないが、敵兵に捕まれば良いことは無い。

私やラダのように戦う術や自分の身くらい自分で守れるなら別だが、他の2人は魔法を使えない。武術を習得している様子も無かったから、余計拒否する可能性があった。



勇者はミキ様を抜いて二人。

私とラダだけで相手しても良いのだが、私達は戦場に出る可能性もある。

勇者にばかり構っていることも難しい。



そういうわけで二人の身の安全は最低限確保しつつ、説得する必要があった。





「取り敢えず王都に行ってみます。」





公娼のうち、一人は王都にいる。

もう一人は旅をしているが…取り敢えず王都にいる公娼に聞いてみるより他無いだろう。





「分かりましたわ。こちらはお任せください。ミキ様も戦闘に慣れてきた頃ですし、あの子達も戦場に出るようになりましたし」





あの子達…ルイ達が戦場に出るようになった。

私達のように単独での行動は無いが、マスターやルイくんに付いて行くことが増えていた。



戦果としては初陣としては目覚ましいものだ。



しかしランダやディーンは顔を青ざめさせていることもある。対してサヨやルイは変わらぬ様子であった。



あの二人は感情を表に出しにくい。辛い気持ちを抱えていても他者の方を優先するようなところもある。



少し心配ではあるのだが、私も戦場に出たりグロイスター公に呼び出されたりと他にやるべきことが沢山あり声を掛けることも難しい。



心配ではあるが…マスターやロア君もいるから大丈夫だろうと出立するより他無かった。









ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー







「お久し振りね。リリス。」





「お久し振りです。ノルン。」





王都にいる公娼、ノルンが私を見て微笑んだ。

ゆるくウェーブした亜麻色の髪の毛を長く垂らした彼女は、私より前から公娼をしている。

元より私と同様、王都の高級娼館で働いており、歌を得意としている。その歌に聴き惚れる貴族が多く宮廷でも歌ってほしいとの要望が上がった為、公娼となったと聞いている。



公娼としては最年長。娼婦としても、もうかなり歳もいっているが、その美しさは衰えるところが無いらしい。



彼女は公娼であり、ある程度の自由を保障されているのだが、元々いた娼館で世話になっている。売上は娼館と折半。本来ならばとっくに年季が明けているのだが、好きで続けていると以前聞いたことがある。



自分の客の来ない日は運営の方に回り、客を取り慣れない若い娼婦のサポートをしているらしい。これも以前どこかで聞いた話だ。





「貴女もこの手紙のことで来たのかしら?」





ピラッと床に落ちたそれは、グロイスター公の紋の入った手紙だ。





「も、と言いますと?」





「もう一人のあの子も来ているの。呼んできましょう。」





するり、と立ち上がるだけで色香の匂うようなその様に、同じ女だというのにドキリとしてしまう。





「………何するのよ!ノルン!いきなり引っ張らないでよ!あっリリス…。」





ノルンに引っ張られてもう一人の公娼、ルーナだった。彼女は私よりも少し前に公娼となっており、年は私と近かったように思う。



相変わらずの勝ち気な様子に思わず苦笑いが溢れた。



彼女の母は公娼で、母が引退したために彼女がその不足を充足するために公娼となったと聞いている。



娼婦なんてしているが生来男嫌いで、気に入らない客はいくら金を積まれても断っていると聞く。





「久しぶりね!」





私を見て嬉しそうに微笑むその様子は流石に愛らしい。

彼女の笑みを見るために男達が様々なプレゼントをしいるという話もよく耳にする。



客からのプレゼントで彼女が微笑むかどうかは別問題だが。





「何よ、貴女もこれの為に来たの?」





ルーナがぐちゃぐちゃになったそれを床に投げ捨てた。どうやらグロイスター公からの手紙であると、書かれた文字から推測する。



紋章は撚れて見えなくなっていた。





「ルーナ。公爵様からのお手紙をそんなゴミみたいにしては駄目よ。」





ノルンにやんわり窘められるが、





「こんなの!ゴミよ!ゴミ!燃やして無いだけ感謝して欲しいくらいだわ!」





そんなルーナの言葉にノルンは困ったように苦笑いしているが、彼女も先程手紙を床に捨てていた。ゴミと思っているのは同じだろう。





「許せないわ!私達のことを馬鹿にして!!戦場まで行けだなんて死ねと言われてるのと同じよ!それに碌に風呂にも入ってない男達の相手をするなんて私は絶対に嫌!」





こうなるのは分かっていたが…かなり立腹の様子だ。



彼女達にとって戦場とは不衛生な辺境で、かつ身の危険にも晒される場所だ。

行きたい場所ではないだろう。





「…でもルーナ。これは陛下から権限を与えられた公爵様直々の命令よ。どう断るの?」





「断りにくいから怒ってるんでしょ!そうじゃなかったら手紙ごと燃やして無かったことにしてるわよ!…あっ!そうだわ。体調が優れないことにしましょう。ラダもそれで休んでるみたいだし!」





「貴女、行列作って国中歩き回ってる癖にそれは無理があるわ。」









二人のやり取りを聞きつつ、これは交渉がかなり難航しそうだと内心溜息を吐くのだった。









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