金になるなら何でも売ってやるー元公爵令嬢、娼婦になって復讐しますー

リリスとしての仕事 勇者結城の場合2

ルーナは楽しそうに悪戯な笑みを浮かべながら、勇者へと近づいていった。



「ルーナ。無理矢理は良くないですよ。」



そう咎めるも、



「この年頃の男なんて余裕よ。」



と聞く耳を持たない。
彼女はどうやら初心な男が好きなようで、見たこともないくらい楽しそうにしていた。

まああっちはあっちで何とかするだろう。

こちらはこちらで始めようか。



「あ、あの…リリスさん？」



ジリジリと後ずさる少年の反応が面白くて、私もついついからかい混じりでゆっくりと一歩ずつ歩みを進め追い詰めていく。
壁に背中が付いて、慌てる様子が可愛らしい。



「どうしました？」


「ち、近いです…。」



触れ合うほど近づけば顔を赤らめる。



「あの…。貴女達は一体…？えっ！」



ルーナが嬉々として服を脱ぎ捨てる様子を見て、私の前にいる少年が大きな声を出して固まった。



「私達は公娼……娼婦です。」

「娼婦！？娼婦って…俺お金持ってません！」

「国王陛下から頂いてますので安心してください。」



そんな！！と叫ぶ少年に思わずケラケラと笑いが漏れる。もう一人の少年の方は…ルーナに好き勝手されて目を白黒させていた。


「せ、せめて部屋を変えてくれませんか…。流石に気まずいです。」


そう希望されたので頷いて、彼を連れて外に出る。
待機していた従者に話をすると、別の天幕へと案内された。

顔を赤くした少年と手を繋ぐ。

彼の緊張が私にも伝わってくるようでくすぐったい気分になった。

誰もいない天幕に通されると、彼はほっと息を吐いて椅子に座った。


「取り敢えず状況を把握させてください。」


真面目そうな少年だ。
いきなりこんな事になって混乱したに違いない。

私も別にどうしても無理にしたいという訳でもない。隣に座って彼と話をすることとなった。



「どうしてこんな事に…」


「勇者様に対する褒美だと私は聞いています。初めての戦場でご不便もあるだろうと国王陛下の配慮だと思います。」


「配慮の方向性が日本と違いすぎて理解が出来ない…。」



頭を抱えてしまった彼を見ていると子ども達を思い出した。彼のそっと撫でる。



「お姉さんは…良いんですか？」

「私は娼婦ですから、呼ばれれば誰とだって寝ます。いつもおじさんばかり相手してますので、貴方のような若い方だと私も少しドキドキしてしまいます。」


ニコリと微笑んでやればまた顔を赤くした。

少し考えた後、


「触って、良いですか？」


と言ってきたので頷く。

そろそろと近づく彼の手がそっと私の肩に触れた。

ゆっくりと彼の顔が近付いてきて、瞳を閉じる。

唇に少し震えている柔らかいものが触れる。

彼の緊張と熱がこちらにも伝わってくるようで、私も居心地が悪くなってしまう。



「初めてがこんな綺麗な人となんて、きっと俺は幸せなんだろうな。」



照れたような笑みを浮かべる彼に、私は再度口付けをするのだった。