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第29話 避難場所、寮
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レティシアが王女様だと判明した時の私は、空いた口が塞がらなかった。
この国の重要人物に失礼なタメ口きいちゃったけど、怒っていないかとか、後で衛兵がやって来て連れ去られないかなとか心配になった。だから、レティシアの自己紹介が終わった後、小声で大丈夫かと聞いたら笑われた。
「だって、カガミさんはすでにお父様と仲がよろしいのでしょう? タメ口とか今更ではありませんか」
……ああ、そうでしたね。もう時すでに遅しでしたね。
あの人は国王というより、ただのおじさんってイメージが強かったので、ガイおじさんとレティシアが親子だと結びつかなかった。
でも、そうか。レティシアがおじさんの娘さんだったのか。そりゃあ、おじさんが溺愛する訳だ。こんなに可愛いんだもの。女の私だって一目惚れしてしまいそうになったくらいだ。
エリスはかっこよさで女性を魅了するなら、レティシアは可憐さで魅了するタイプだ。
そのことを素直に言うと、彼女は顔を赤く染めて照れていた。
何だこの可愛い物体は。と謎の保護欲が私の中で蠢いたのは秘密だ。
そんなこんなで全員の自己紹介は終わり、私達はそれぞれの寮に帰ることになった。
レティシアと、また明日という友達のような会話をして別れ、私はこれから三年間過ごすことになる寮へと向かう。
実はそこに行くのは今日が初めてだ。
ガイおじさんの使いの人達が、必要な生活品を事前に送り届けてくれているとは聞いていた。ついでに荷物の整理もしてくれたと言っていたから、訪れるのは入学式当日でいいかとなっていた。
それに、実際に私の住むことになる寮に行ったら、本当にエリスと離れ離れになると寂しくなる。
だから、あえて行かないようにしていた。という理由も多少はあった。
そのせいで現在私は、とても緊張していた。
言ってしまえばシェアハウスのようなものだ。自分の部屋に行くのと変わりないけど、その周りには私の知らない人も居る。隣は全く知らない人だらけだ。
また変な発作を起こさないように気をつけなきゃいけない。
私は自然と──純白の剣を握っていた。
「大丈夫、大丈夫だ……」
そう何度も口にする。そうすることで緊張が綻ぶかと言われたら、わからないと私は答える。
でも、何かをしていないともっと緊張してしまうと思った。
案内図を見ながら歩くこと五分。私は寮舎に辿り着いていた。寮母さんに挨拶を済ませて鍵を貰い、その鍵に書かれている番号の部屋を探す。幸いなことに、道中すれ違う人は少なかったので変に怯えることはなかった。
そして、ようやく見つけた。
「ここが、私の部屋……」
鍵を回して取っ手を回す。
中に入り、靴を脱いで奥に進む。
「…………うん、予想はしてた」
どこのお嬢様の部屋だ。とツッコミを入れたくなる全てが整頓された部屋。それが私の目の前に広がっていた。
……嫌な予感はしていたんだ。だって王城で働いている人達が、私の部屋を整理してくれたんだ。それはそれは高級ホテルのように完璧なんだろうな、と心の隅っこで予想していたので、精神的ダメージはなかった。
きっと、他の子達は今頃ダンボールの山に埋もれて大変なんだろう。
私はそれをやらなくていいんだ。そう無理矢理思うと、少し得した気分になる。
「ああああああ……」
部屋に戻った時、まず一番に何をやるか。……勿論、ベッドにダイブだ。
エリスに貸してもらっていた部屋でも、精神的にやばかった時はそうしていた。
二振りの剣を壁に立てかけ、私はダンッ! と地面を蹴る。
ボフンッという音。私は何回かバウンドして、ようやく落ち着いた。
「あああああああああああああ……」
枕に顔を埋めながら、女の子が出してはいけない低い声を出す。
寮の部屋には防音の魔法が張られているらしく、どんなに大声を出しても外に漏れることはない。
部屋を壊すとその魔法を掛け直すことになるので、暴れることはしないように。と寮母さんが念入りに注意してきた。……どうやら過去にそんな事件があったらしく、酷く警戒をしているようだ。寮母さんも大変なんだなぁ。
「はぁ……疲れたな……」
まだ授業は始まっていない。それなのに私は、すでに色々と疲れ果てていた。
ゴロゴロとベッドの上で転がる。お日様の匂いが眠気を誘う。
「……私、これからちゃんとやっていけるのかな」
思い出したのは、三人の令嬢だ。
『ただの平民が、実力だけで特生クラスに入るのはあり得ません』
『ここは選ばれた者だけが集うクラスですのよ?』
『平民らしく尻尾でも振ったのでしょう』
あの人達は別のクラスだったけど、あの三人に同調して笑っていた人は何人か居た。
それは特生クラスの人も混ざっていただろう。……やっぱり、貴族と平民の差別は禁止と校則にあっても、何処かでそういう気持ちは持っているんだろう。もしかしたらレティシアも──と、そう思ってしまう。
私は、確かにズルをしたんだと思う。
このクラスに入るために、誰もが努力してきたはずだ。それなのに私は、ガイおじさんに推薦されただけで入った。何の努力もしていないただの平民だ。
だから、ズルと言われても反論出来ない。やる気はあるけど、他の人よりは弱い。
「はぁ……ダメダメ、気持ちを強くってエリスに言われたじゃんか」
ベッドから飛び起きた私は、制服を脱いで私服に着替える。
何を考えても鬱になるだけだ。
それなら、明日から始まる授業のために準備をしよう。
「まずは、ご飯だ」
学園の敷地は広く、色々な店がある。
飲食店や家具店、遊戯施設等、何でも揃っている、
時間は空が暗くなる少し前くらい。
着替えて外に出て、適当に散会していればちょうどいい夕飯の時間帯になるだろう。美味しそうな物がある店に入って、お腹いっぱいご飯を食べよう。それで満足して部屋に帰り、お風呂に入れば鬱になりかけている気分も吹き飛んでいることだろう。
「よし、お金も沢山あるし、限界まで遊ぶぞー!」
気合十分に部屋を飛び出し、遅くまで学園の施設を私は、十分堪能するのだった。
この国の重要人物に失礼なタメ口きいちゃったけど、怒っていないかとか、後で衛兵がやって来て連れ去られないかなとか心配になった。だから、レティシアの自己紹介が終わった後、小声で大丈夫かと聞いたら笑われた。
「だって、カガミさんはすでにお父様と仲がよろしいのでしょう? タメ口とか今更ではありませんか」
……ああ、そうでしたね。もう時すでに遅しでしたね。
あの人は国王というより、ただのおじさんってイメージが強かったので、ガイおじさんとレティシアが親子だと結びつかなかった。
でも、そうか。レティシアがおじさんの娘さんだったのか。そりゃあ、おじさんが溺愛する訳だ。こんなに可愛いんだもの。女の私だって一目惚れしてしまいそうになったくらいだ。
エリスはかっこよさで女性を魅了するなら、レティシアは可憐さで魅了するタイプだ。
そのことを素直に言うと、彼女は顔を赤く染めて照れていた。
何だこの可愛い物体は。と謎の保護欲が私の中で蠢いたのは秘密だ。
そんなこんなで全員の自己紹介は終わり、私達はそれぞれの寮に帰ることになった。
レティシアと、また明日という友達のような会話をして別れ、私はこれから三年間過ごすことになる寮へと向かう。
実はそこに行くのは今日が初めてだ。
ガイおじさんの使いの人達が、必要な生活品を事前に送り届けてくれているとは聞いていた。ついでに荷物の整理もしてくれたと言っていたから、訪れるのは入学式当日でいいかとなっていた。
それに、実際に私の住むことになる寮に行ったら、本当にエリスと離れ離れになると寂しくなる。
だから、あえて行かないようにしていた。という理由も多少はあった。
そのせいで現在私は、とても緊張していた。
言ってしまえばシェアハウスのようなものだ。自分の部屋に行くのと変わりないけど、その周りには私の知らない人も居る。隣は全く知らない人だらけだ。
また変な発作を起こさないように気をつけなきゃいけない。
私は自然と──純白の剣を握っていた。
「大丈夫、大丈夫だ……」
そう何度も口にする。そうすることで緊張が綻ぶかと言われたら、わからないと私は答える。
でも、何かをしていないともっと緊張してしまうと思った。
案内図を見ながら歩くこと五分。私は寮舎に辿り着いていた。寮母さんに挨拶を済ませて鍵を貰い、その鍵に書かれている番号の部屋を探す。幸いなことに、道中すれ違う人は少なかったので変に怯えることはなかった。
そして、ようやく見つけた。
「ここが、私の部屋……」
鍵を回して取っ手を回す。
中に入り、靴を脱いで奥に進む。
「…………うん、予想はしてた」
どこのお嬢様の部屋だ。とツッコミを入れたくなる全てが整頓された部屋。それが私の目の前に広がっていた。
……嫌な予感はしていたんだ。だって王城で働いている人達が、私の部屋を整理してくれたんだ。それはそれは高級ホテルのように完璧なんだろうな、と心の隅っこで予想していたので、精神的ダメージはなかった。
きっと、他の子達は今頃ダンボールの山に埋もれて大変なんだろう。
私はそれをやらなくていいんだ。そう無理矢理思うと、少し得した気分になる。
「ああああああ……」
部屋に戻った時、まず一番に何をやるか。……勿論、ベッドにダイブだ。
エリスに貸してもらっていた部屋でも、精神的にやばかった時はそうしていた。
二振りの剣を壁に立てかけ、私はダンッ! と地面を蹴る。
ボフンッという音。私は何回かバウンドして、ようやく落ち着いた。
「あああああああああああああ……」
枕に顔を埋めながら、女の子が出してはいけない低い声を出す。
寮の部屋には防音の魔法が張られているらしく、どんなに大声を出しても外に漏れることはない。
部屋を壊すとその魔法を掛け直すことになるので、暴れることはしないように。と寮母さんが念入りに注意してきた。……どうやら過去にそんな事件があったらしく、酷く警戒をしているようだ。寮母さんも大変なんだなぁ。
「はぁ……疲れたな……」
まだ授業は始まっていない。それなのに私は、すでに色々と疲れ果てていた。
ゴロゴロとベッドの上で転がる。お日様の匂いが眠気を誘う。
「……私、これからちゃんとやっていけるのかな」
思い出したのは、三人の令嬢だ。
『ただの平民が、実力だけで特生クラスに入るのはあり得ません』
『ここは選ばれた者だけが集うクラスですのよ?』
『平民らしく尻尾でも振ったのでしょう』
あの人達は別のクラスだったけど、あの三人に同調して笑っていた人は何人か居た。
それは特生クラスの人も混ざっていただろう。……やっぱり、貴族と平民の差別は禁止と校則にあっても、何処かでそういう気持ちは持っているんだろう。もしかしたらレティシアも──と、そう思ってしまう。
私は、確かにズルをしたんだと思う。
このクラスに入るために、誰もが努力してきたはずだ。それなのに私は、ガイおじさんに推薦されただけで入った。何の努力もしていないただの平民だ。
だから、ズルと言われても反論出来ない。やる気はあるけど、他の人よりは弱い。
「はぁ……ダメダメ、気持ちを強くってエリスに言われたじゃんか」
ベッドから飛び起きた私は、制服を脱いで私服に着替える。
何を考えても鬱になるだけだ。
それなら、明日から始まる授業のために準備をしよう。
「まずは、ご飯だ」
学園の敷地は広く、色々な店がある。
飲食店や家具店、遊戯施設等、何でも揃っている、
時間は空が暗くなる少し前くらい。
着替えて外に出て、適当に散会していればちょうどいい夕飯の時間帯になるだろう。美味しそうな物がある店に入って、お腹いっぱいご飯を食べよう。それで満足して部屋に帰り、お風呂に入れば鬱になりかけている気分も吹き飛んでいることだろう。
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