転生少女は欲深い

白波ハクア

文字の大きさ
32 / 64

第30話 本気半分

しおりを挟む
 後日、私のクラスは学園に設置されている訓練場へとやって来ていた。

 今日は実技の授業だ。
 初日ということで魔法適性とある程度の実力を調べるらしい。

 ──魔法。今までそれらしものを見たことがないので、この世界の魔法はどんなものなのだろうと内心ワクワクしていた。

 もしかしたら自分も使えるようになるかも、と思っていたりするけど、流石にそんな簡単に魔法を使えるようになるなんてことは──

【承諾。魔法適性を取得しました】

 出来ました。
 相変わらず強欲のスキルは規格外だなと思いながら、大人しく先生の説明を聞く。

「はーい、今からみんなには、この的を攻撃してもらいまーす」

 まず最初にやるのは、それぞれが得意な攻撃、打撃、剣、魔法、好きなものを人の形をした的に当てるというものだった。
 その威力を見て実力を定めるらしい。

 お嬢様学校なのに戦闘訓練が必要なのか、と少し思ったところはある。実際にクラスの誰かが先生に質問した。

「普通ではやらないことだけど、自分を守れるくらいの力は、最低限持っておいた方がいいよー。……いつ何が起こるかわからないからねぇ」

 そんな先生の回答に、私はその通りだと思った。
 お嬢様には護衛が付くのだろうけど、それは常にではない。お風呂やトイレ、護衛と離れた時に何かが起こったら、それは己の力で解決しなければならない。力を持っていなければ、簡単なことも出来ないだろう。特生クラスの実技練習は、そういう何かあった時に動けるようにやるのだろう。

「と言っても、ほとんどの人は入学試験の時にやったよね。その時と状況は同じだと思ってくれていいよー」

 え、何それ知らない。

「じゃあ、今日は昨日の自己紹介と逆の順番で行こうかー」

 呆然としている私を置いて、次々と指名された人が的に向かって攻撃をする。
 魔法を放つ人や、剣で的を斬りつける人。それぞれいたけど、驚くことに的は無傷だった。

「的には防御強化の魔法が張ってあるからね、壊せなかったって落ち込まない方がいいよ。普通は壊せないから。……普通なら、ね」

 そのタイミングでどうして、私を見つめるのですか先生。
 でも、防御魔法が張ってあるなら本気でやって大丈夫なんだろう。みんな、私が驚くくらい派手な魔法を出しているし、実力は私と変わらないと思う。

「じゃあ次、レティシアちゃん」

「──はい」

 と、そうこう考えていたらレティシアの番になっていた。
 彼女はどんな攻撃をするのか。それが気になった私は、レティシアを凝視する。

「……あの……そんなに見つめられると緊張してしまいます」

「あ、ごめん! ちょっと、気になっちゃって……」

「い、いいえ、カガミさんに注目していただけるとは、嬉しいです」

 ……ん?
 あの、ってなんだ? ねぇ、あのってどういうこと!?

「では、いきます……!」

 待って! あの、って何なんですか!
 レティシアのお父様おじさんから何を聞いたんですか!?

 という私の心の叫びに気付かず、レティシアは目を閉じてブツブツと何かを呟いている。
 彼女から感じる魔力が纏まり、周囲の温度がグンと下がった。足元が凍てつき、レティシアの手に氷の塊が出来上がり、それがバラバラに砕ける。細かな欠片は弓矢のような形に変形して、一斉に的へと向けられる。

氷の矢アイスアロー

 そして、同時に的へと勢いよく飛ぶ。
 誰よりも迫力のある攻撃に、何人かは悲鳴を上げるけど、先生が張った結界のおかげでこちらに影響はなかった。

 砂煙が上がった時、そこには氷漬けとなった的があった。
 破壊……とは少し違うけど、誰よりも火力のある攻撃だった。
 それまで「私の魔法が一番強力だった」とか「私の攻撃は派手だった」とか言っていたクラスメイト達は、もう誰も自分が一番だったとは言えなくなった。
 それぞれが悔しさを顔に滲ませ、でも相手が王女だからと押し黙る。

「あはは、流石は王女様だね。その若さで、その威力を出すとか、天才と言われているだけある……」

 これには先生も苦笑気味だった。

「じゃあ、この後はやりづらいと思うけど、カガミちゃんお願いねー」

「カガミさん、頑張ってください!」

 新しい的が用意されて、ようやく私の出番となった。
 強度は同じ物らしく、やっぱり壊すのは難しそう。

「一応本気でやってもらいたいけど、あれ以上に頑張らなくていいからね」

 と、先生は言ってくれた。

「わかりました。半分本気でやります!」

 私の選んだ攻撃方法は──剣だ。
 でも、的の強度はとても高そう。ってことは、魔装を使っても壊れなさそうだな。

 純白の剣を引き抜き、構える。
 魔力を纏わせると、一瞬にしてアトラク・メレヴァのような漆黒の剣に変わった。

「すぅ、はぁ……」

 精神を落ち着かせ、深呼吸。
 的に全神経を集中させ、横に両断するイメージを作る。

「ちょ、ちょっとカガミちゃん……?」

 先生が何かを言っているけど、全神経を研ぎ澄ませている私は、その呼びかけに気が付かなかった。

「──フッ!」

 息を吐き出し、一閃。
 数秒遅れて、的が斜めに崩れ落ちた。
 攻撃が通り過ぎたのか、後ろの方の壁にも深い傷が刻まれている。

「……ふぅ」

 張り詰めていた気を解き、剣を鞘に収める。

「やった、壊せた! 先生、どうでし──先生?」

 何も反応がないことを不思議に思って後ろを振り返ると、先生だけではなく、レティシアや他のクラスメイトが、口を大きく開いたまま固まっていた。
 みんな、馬鹿みたいな格好だ。
 そんなに的を壊すのが意外だったか?

「……し……」

「し?」

「死ぬかと思った」

「酷くないですか!?」

 やっと言葉を発したと思ったら、予想していなかった感想を言われた。
 何だ、死ぬかと思ったって……私はそんなに全力を出していないのに大袈裟だ。

「ああ、確かにカガミちゃんは、普通を知った方がいいかもねぇ……」

 と、先生はガイおじさんのようなことを言った。
 解せぬと思うけど、もしかしたらその通りなのかもしれないので文句を言えない。

 でもやっぱり解せない。
 なので私は、不満を隠さずにプクーと頬を膨らませた。

 こうして全員分の実力は試し終わった。
 次は魔法適性だ。
しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

【完結】モブ令嬢のわたしが、なぜか公爵閣下に目をつけられています

きゅちゃん
ファンタジー
男爵家の三女エリーゼは、前世の記憶を持つ元社畜OL。社交界デビューの夜、壁際でひとりジュースを飲んでいたところを、王国随一の権力者・ヴァルナ公爵カイルにスカウトされる。魔法省の研究員として採用されたエリーゼは、三年間誰も気づかなかった計算の誤りを着任三日で発見。着々と存在感を示していく。一方、公爵の婚約候補と噂されるクロード侯爵令嬢セラフィーヌは、エリーゼを目障りに思い妨害を仕掛けてくるが...

妖精族を統べる者

暇野無学
ファンタジー
目覚めた時は死の寸前であり、二人の意識が混ざり合う。母親の死後村を捨てて森に入るが、そこで出会ったのが小さな友人達。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中に呆然と佇んでいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出したのだ。前世、日本伝統が子供の頃から大好きで、小中高大共に伝統に関わるクラブや学部に入り、卒業後はお世話になった大学教授の秘書となり、伝統のために毎日走り回っていたが、旅先の講演の合間、教授と2人で歩道を歩いていると、暴走車が突っ込んできたので、彼女は教授を助けるも、そのまま跳ね飛ばされてしまい、死を迎えてしまう。 享年は25歳。 周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっている。 25歳の精神だからこそ、これが何を意味しているのかに気づき、ショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

処理中です...