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第2章
逃げるが勝ちです
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「待てゴラァーーーーーー!!」
後ろの方でそんな叫びが聞こえました。
振り向くと、真っ赤な髪を振り乱して全力疾走するヴィエラさんの姿が見えました。
……軽くホラーですね。
今が昼間なのでどうにか大丈夫ですが、夜間にあれをやられると心臓が飛び出そうです。
私、ホラー苦手なんですよねぇ。
知り合いには意外だと言われるのですが……だって怖いじゃないですか。相手には触れられないのに、相手は特殊な手段で攻撃しまくりなんですよ? いやいや、無理ですわーー。絶対に相手したくありません。
……あ、ヴィエラさんは幽霊じゃないので触れられますけどね。
「止まれリーフィアぁああああ!」
「止まれと言われて止まる人はいませんよ」
どうしてこうなっているのか。
それは数分前に遡ります。
私はミリアさんと同じく首根っこを掴まれて執務室まで引きずられていました。
執務室の前までやってきたヴィエラさんは両手がふさがっている状態でした。彼女は礼儀正しい人なので、足で扉を開けることはしません。ミリアさんを掴んでいた手を離し、取っ手を回そうとしました。
私はその隙にミリアさんを風の魔法で吹き飛ばしました。
うぎゃぁ! という悲鳴を上げながら廊下を転がるミリアさんに、当然ヴィエラさんはそちらに意識を向けます。そして私から手を離した瞬間を狙い、ヴィエラさんの拘束から逃れました。
こうして私の逃走劇が始まったのです。
「君は、なんでそうすばしっこいんだ……!」
「それが取り柄ですのでー」
「いつもは自堕落な生活をしているくせに……!」
「それが取り柄ですのでー」
「逃げるためだけに本気を出すのをやめてくれないか!」
「それが取り柄ですのでー」
「お願いだから止まってくれ!」
「それが取り柄ですのでー」
「せめて会話は成り立たせてくれないか!?」
「拒否しますー」
私は会話をしている間も足を動かします。
……にしても、本気で走っているわけではないとはいえ、私の足についてくるなんて……ヴィエラさんも流石ですね。
どうして本気で走っていないのかって?
疲れるからに決まっているではないですか。なんでサボるために疲れなきゃいけないんですか。やってることが矛盾しています。
しかし、これではヴィエラさんを振り切れないのも事実。
彼女が息切れするまでこの逃走劇を繰り広げるのもいいのですが、とても面倒です。
「うーむ、さてどうするべきか……」
私が悩みながら廊下の曲がり角を曲がると、その通路の奥の方に見覚えのある人影が見えました。
私たちの仲間であり、元勇者でもあるディアスさんです。
「……ん?」
あちらも私に気づいたようです。
「おお! リーフィアじゃねぇか。こんなところで何をしているんだ──ァアアアアア!?」
私は一瞬だけ本気を出し、ディアスさんに肉薄しました。
そして『アイテムボックス』から縄を取り出し、すれ違いざまに彼を縛り、後ろを走るヴィエラさんにぶん投げました。
「うわぁ! 何をするんだディアス!」
「俺は悪くな──ぶはぁ!?」
後ろの方で盛大な破壊音がしました。
走り続けながらチラッと後方を確認すると、ディアスさんが廊下の壁に頭から刺さっているのが見えました。ヴィエラさんが何かしたのは間違いないでしょう。
ピクピクと痙攣しているのが見えたので、どうにか生きているようですが……不幸な人ですね。
「そこで止まるのだ、リーフィア!」
と、私の目の前にミリアさんが立ちはだかります。
しかも、壁をぶち破って…………怒られても知りませんよ。
「お前だけを逃すわけにはいかな──どぅわああああ!?」
私はもう一度本気を出し、ミリアさんが何かを言っている間に急接近しました。
子供のように軽い体系を利用し、彼女の足を掴み上げてフルスイング。後方のヴィエラさんに投げつけます。
「ミリア様!? 部屋で待っていてくださいと言ったでしょう!?」
「余も参加したかったのだ!」
「いいから戻っていてください!」
「…………はい」
魔王。配下に怒られて強制退場。
「待てリーフィア!」
「……ほんと、諦めない人ですね」
それがヴィエラさんの美点ですが、今はそれが私の障害となっています。
「……ん? こんなところで何をしておるのじゃ?」
再び曲がり角を曲がると、アカネさんとばったり出会いました。
まさかの幹部全員と対面ですか。この人達も暇ですね……って、私が言えることではありませんね。
「今、ヴィエラさんに追われていて……」
「……ああ、なるほど。お主らも大変じゃなぁ」
「ええ、ですので──っと、これはどういうことです?」
私の手には、いつの間にか手錠が嵌められていました。
「アカネ! その人を止めてください!」
「……と、いうわけじゃ。すまんな」
──チッ。そういうわけか。
「では、私も本気を出します──ウンディーネ!」
『はーい』
「なっ!?」
これにはアカネさんも面食らったような表情になり、ヴィエラさんもウンディーネの登場に立ち止まりました。
「ウンディーネ、この手錠を斬ってください」
『水刃!』
私の手錠は、威力を調整された『水刃』によって斬り裂かれました。
硬い素材で作られている手錠だったらどうなるかわかりませんでしたが、アカネさんが持っていた手錠は緊急用の物だったのでラッキーでした。
……ん? というか、どうして手錠を常備しているのでしょう?
まぁ……いいか。
「ウンディーネ、皆の動きを止めてください」
『水縛陣!』
ウンディーネの体が薄くなり、周囲の空気に溶け始めました。
そして彼女の体は皆の体に纏わりつき、望み通り動きを封じてくれます。
「グッジョブですウンディーネ」
『うちに掛かれば、このくらい朝飯前だよ……!』
「ありがとうございます。では、後は頼みました」
『うんっ! 任せて……』
アカネさんとヴィエラさんに「それでは」と言い残し、私は廊下を走り去ります。
「覚えてろリーフィア! ちくしょーーーーー!!」
ふははははっ、逃げるが勝ちです。
後ろの方でそんな叫びが聞こえました。
振り向くと、真っ赤な髪を振り乱して全力疾走するヴィエラさんの姿が見えました。
……軽くホラーですね。
今が昼間なのでどうにか大丈夫ですが、夜間にあれをやられると心臓が飛び出そうです。
私、ホラー苦手なんですよねぇ。
知り合いには意外だと言われるのですが……だって怖いじゃないですか。相手には触れられないのに、相手は特殊な手段で攻撃しまくりなんですよ? いやいや、無理ですわーー。絶対に相手したくありません。
……あ、ヴィエラさんは幽霊じゃないので触れられますけどね。
「止まれリーフィアぁああああ!」
「止まれと言われて止まる人はいませんよ」
どうしてこうなっているのか。
それは数分前に遡ります。
私はミリアさんと同じく首根っこを掴まれて執務室まで引きずられていました。
執務室の前までやってきたヴィエラさんは両手がふさがっている状態でした。彼女は礼儀正しい人なので、足で扉を開けることはしません。ミリアさんを掴んでいた手を離し、取っ手を回そうとしました。
私はその隙にミリアさんを風の魔法で吹き飛ばしました。
うぎゃぁ! という悲鳴を上げながら廊下を転がるミリアさんに、当然ヴィエラさんはそちらに意識を向けます。そして私から手を離した瞬間を狙い、ヴィエラさんの拘束から逃れました。
こうして私の逃走劇が始まったのです。
「君は、なんでそうすばしっこいんだ……!」
「それが取り柄ですのでー」
「いつもは自堕落な生活をしているくせに……!」
「それが取り柄ですのでー」
「逃げるためだけに本気を出すのをやめてくれないか!」
「それが取り柄ですのでー」
「お願いだから止まってくれ!」
「それが取り柄ですのでー」
「せめて会話は成り立たせてくれないか!?」
「拒否しますー」
私は会話をしている間も足を動かします。
……にしても、本気で走っているわけではないとはいえ、私の足についてくるなんて……ヴィエラさんも流石ですね。
どうして本気で走っていないのかって?
疲れるからに決まっているではないですか。なんでサボるために疲れなきゃいけないんですか。やってることが矛盾しています。
しかし、これではヴィエラさんを振り切れないのも事実。
彼女が息切れするまでこの逃走劇を繰り広げるのもいいのですが、とても面倒です。
「うーむ、さてどうするべきか……」
私が悩みながら廊下の曲がり角を曲がると、その通路の奥の方に見覚えのある人影が見えました。
私たちの仲間であり、元勇者でもあるディアスさんです。
「……ん?」
あちらも私に気づいたようです。
「おお! リーフィアじゃねぇか。こんなところで何をしているんだ──ァアアアアア!?」
私は一瞬だけ本気を出し、ディアスさんに肉薄しました。
そして『アイテムボックス』から縄を取り出し、すれ違いざまに彼を縛り、後ろを走るヴィエラさんにぶん投げました。
「うわぁ! 何をするんだディアス!」
「俺は悪くな──ぶはぁ!?」
後ろの方で盛大な破壊音がしました。
走り続けながらチラッと後方を確認すると、ディアスさんが廊下の壁に頭から刺さっているのが見えました。ヴィエラさんが何かしたのは間違いないでしょう。
ピクピクと痙攣しているのが見えたので、どうにか生きているようですが……不幸な人ですね。
「そこで止まるのだ、リーフィア!」
と、私の目の前にミリアさんが立ちはだかります。
しかも、壁をぶち破って…………怒られても知りませんよ。
「お前だけを逃すわけにはいかな──どぅわああああ!?」
私はもう一度本気を出し、ミリアさんが何かを言っている間に急接近しました。
子供のように軽い体系を利用し、彼女の足を掴み上げてフルスイング。後方のヴィエラさんに投げつけます。
「ミリア様!? 部屋で待っていてくださいと言ったでしょう!?」
「余も参加したかったのだ!」
「いいから戻っていてください!」
「…………はい」
魔王。配下に怒られて強制退場。
「待てリーフィア!」
「……ほんと、諦めない人ですね」
それがヴィエラさんの美点ですが、今はそれが私の障害となっています。
「……ん? こんなところで何をしておるのじゃ?」
再び曲がり角を曲がると、アカネさんとばったり出会いました。
まさかの幹部全員と対面ですか。この人達も暇ですね……って、私が言えることではありませんね。
「今、ヴィエラさんに追われていて……」
「……ああ、なるほど。お主らも大変じゃなぁ」
「ええ、ですので──っと、これはどういうことです?」
私の手には、いつの間にか手錠が嵌められていました。
「アカネ! その人を止めてください!」
「……と、いうわけじゃ。すまんな」
──チッ。そういうわけか。
「では、私も本気を出します──ウンディーネ!」
『はーい』
「なっ!?」
これにはアカネさんも面食らったような表情になり、ヴィエラさんもウンディーネの登場に立ち止まりました。
「ウンディーネ、この手錠を斬ってください」
『水刃!』
私の手錠は、威力を調整された『水刃』によって斬り裂かれました。
硬い素材で作られている手錠だったらどうなるかわかりませんでしたが、アカネさんが持っていた手錠は緊急用の物だったのでラッキーでした。
……ん? というか、どうして手錠を常備しているのでしょう?
まぁ……いいか。
「ウンディーネ、皆の動きを止めてください」
『水縛陣!』
ウンディーネの体が薄くなり、周囲の空気に溶け始めました。
そして彼女の体は皆の体に纏わりつき、望み通り動きを封じてくれます。
「グッジョブですウンディーネ」
『うちに掛かれば、このくらい朝飯前だよ……!』
「ありがとうございます。では、後は頼みました」
『うんっ! 任せて……』
アカネさんとヴィエラさんに「それでは」と言い残し、私は廊下を走り去ります。
「覚えてろリーフィア! ちくしょーーーーー!!」
ふははははっ、逃げるが勝ちです。
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