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従者の謎です
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ジュドーさんへの報告は、ギルド職員に任せた。
彼の腹心に頼んだので、ちゃんと伝えてくれることだろう。
それが終わった私は、予想していた通りやることは何もなく、いつも通りベッドでゴロゴロと暇を持て余していた。
「──失礼します」
リリスが部屋に入ってくる。
「今から冒険者ギルドに行ってまいります。依頼をこなすついでに、何か取ってくる物はありますか?」
「……それなら、薬草を籠一つ分頼むよ」
「魔核はどうなさいますか?」
「そのまま売っても……ああ、リリスの小遣いにして」
そういえば、リリスには私の魔力以外で何も与えていなかった。
彼女もこの町に慣れた頃だろうし、好きな物を自由に買ってほしい。
「よろしいのですか?」
「うん。リリスはいつも頑張ってくれているし、たまには何処かで羽を伸ばしてよ」
「……ありがとうございます。嬉しいですわ」
「そんなに感動することかね……」
「感動することですわ! ティア様の優しさが滲み出ていますわ」
リリスはそう言いながら、左手の薬指に嵌められている指輪を撫でた。
あれは私が付けている物と同じ『生存力上昇指輪』だ。
ついでだからとリリスに渡したところ、止める間も無く左手の薬指に嵌めやがった。
気に入ったのか、ずっとそれを外そうとせず、いい加減別の場所に嵌めろと言っても「これがティア様からの愛ですわぁ……」と聞かない。
その日から何か嬉しいことがあるごとに、こうして指輪を撫でるようになっていた。
「ほんと、それ恥ずかしいからやめて欲しいんだけど」
「嫌ですわ」
──即答かよ。
この恥ずかしさは、マジな方だ。
本当に恥ずかしくて、外で言いふらさないでほしいと本気で思っている。
私以外の誰かが見ているところでその動作をされたら、変な疑いを掛けられるかもしれない。そうなれば面倒だ。
「本当に外して欲しいのなら、『命令』すればいいです」
悪魔と契約する時、こちらが不利にならないように契約魔法で『主従の証』を結ぶ。
悪魔が命令違反をした時や、強制で命令する時、悪魔を縛るための魔法だ。
リリスの言う通り、命令をして外させれば問題ない。
でも、そんなことでリリスを強制したくないというのが、私の気持ちだ。
なので命令はしていない。
「ふふんっ……ティア様はツンデレなんですから♡」
なんか悔しい。
「では行って来ます。夜は嵐が来るそうなので、遅くても6時には帰りますわ。ティア様も戸締りにはお気を付けください」
「うんわかった。気をつけてねー」
軽いステップを踏みながら、リリスはギルドへ向かった。
「なんであそこまで私を好きなんだろうね……あいつも」
そんな背中を自室の窓から眺めていた私は、独りそう呟いた。
リリスの愛情表現は、こっちが驚くくらい強い。
淫魔だから愛情が強いのかと思っていたけど、誰にもそうだという訳ではないらしい。
ヴァーナガンドさんに密かにギルドでのリリスの様子を聞いてみたところ、どうやら一人の時はとても静かで、必要時以外は誰とも接しないらしく、冒険者達からは『氷の女王』という異名が付いているらしい。
冒険者がソロで行動するのは、とても危険だ。魔物が蔓延る外では、いつどんな危険に晒されるかもわからない。
だから冒険者ギルドは、パーティーに入ることを推奨しているんだけど、リリスは手練れの冒険者パーティーですら苦戦する魔物を、無傷で討伐してしまう。
しかも、そいつを殺したのが「目障りだったから」という酷くしょうもない理由なのだから、ギルドの方でも「この人なら別にソロでいいや」となっているのだとか。
誰をも寄せ付けない風格と、強力な魔物を無傷で討伐してしまう実力から、冒険者達から『氷の女王』という異名が付けられているらしい。
そんなに強かったのか、とは驚かない。
だって彼女は、悪魔の中で二番目の爵位『悪魔公』なのだから。
でも、必要時以外に人と接していないというのは予想外だった。
確かに普段はクールだけど、夕飯時には今日何があったのかを明るく話してくれて、とても楽しそうだったのだから。一人や二人くらいは気軽に話せる友人が出来たのかと思っていた。
……そうだ。思い返せばリリスの話には、ほとんど他人の話が出てこなかった。
ヴァーナガンドさんからすれば、私とリリスが話している光景の方がありえないのだとか。
あんな楽しそうに笑顔を作り、私と何かを話すたびに表情をコロコロと変える姿は、本当に見ないことだと言っていた。
ちなみに、そのギャップにやられてリリスに惚れた冒険者も多いらしく、毎日誰か一人は告白して撃沈しているらしい。
……リリスは美人だからね。惚れられるのは当然だ。
「だからこそ、わからないなぁ……」
私はリリスに何もしていない。
彼女のように愛情表現をしたことはないし、むしろ雑に扱う場面の方が多い。
どうしてあんなに好かれているのか、理解出来ない。
私を恥ずかしがらせて、それを見て楽しんでいるようにも見えないし、主人に気に入られるため無理をしている感じにも思えない。
「うーん、わからないや」
わからないなら、どうすればいいか。
──直接見るのが一番だ。
普段のリリスが、本当に誰とも話さないのか。
いつもどんな感じで依頼をこなしているのか。
そのついでで、どうして私に好意を寄せているのか調べる。
「よしっ! そうとなれば準備だ」
思い立ったが吉日。
私はベッドから飛び起きて、ちょっとした準備を終わらせるために地下室に潜った。
彼の腹心に頼んだので、ちゃんと伝えてくれることだろう。
それが終わった私は、予想していた通りやることは何もなく、いつも通りベッドでゴロゴロと暇を持て余していた。
「──失礼します」
リリスが部屋に入ってくる。
「今から冒険者ギルドに行ってまいります。依頼をこなすついでに、何か取ってくる物はありますか?」
「……それなら、薬草を籠一つ分頼むよ」
「魔核はどうなさいますか?」
「そのまま売っても……ああ、リリスの小遣いにして」
そういえば、リリスには私の魔力以外で何も与えていなかった。
彼女もこの町に慣れた頃だろうし、好きな物を自由に買ってほしい。
「よろしいのですか?」
「うん。リリスはいつも頑張ってくれているし、たまには何処かで羽を伸ばしてよ」
「……ありがとうございます。嬉しいですわ」
「そんなに感動することかね……」
「感動することですわ! ティア様の優しさが滲み出ていますわ」
リリスはそう言いながら、左手の薬指に嵌められている指輪を撫でた。
あれは私が付けている物と同じ『生存力上昇指輪』だ。
ついでだからとリリスに渡したところ、止める間も無く左手の薬指に嵌めやがった。
気に入ったのか、ずっとそれを外そうとせず、いい加減別の場所に嵌めろと言っても「これがティア様からの愛ですわぁ……」と聞かない。
その日から何か嬉しいことがあるごとに、こうして指輪を撫でるようになっていた。
「ほんと、それ恥ずかしいからやめて欲しいんだけど」
「嫌ですわ」
──即答かよ。
この恥ずかしさは、マジな方だ。
本当に恥ずかしくて、外で言いふらさないでほしいと本気で思っている。
私以外の誰かが見ているところでその動作をされたら、変な疑いを掛けられるかもしれない。そうなれば面倒だ。
「本当に外して欲しいのなら、『命令』すればいいです」
悪魔と契約する時、こちらが不利にならないように契約魔法で『主従の証』を結ぶ。
悪魔が命令違反をした時や、強制で命令する時、悪魔を縛るための魔法だ。
リリスの言う通り、命令をして外させれば問題ない。
でも、そんなことでリリスを強制したくないというのが、私の気持ちだ。
なので命令はしていない。
「ふふんっ……ティア様はツンデレなんですから♡」
なんか悔しい。
「では行って来ます。夜は嵐が来るそうなので、遅くても6時には帰りますわ。ティア様も戸締りにはお気を付けください」
「うんわかった。気をつけてねー」
軽いステップを踏みながら、リリスはギルドへ向かった。
「なんであそこまで私を好きなんだろうね……あいつも」
そんな背中を自室の窓から眺めていた私は、独りそう呟いた。
リリスの愛情表現は、こっちが驚くくらい強い。
淫魔だから愛情が強いのかと思っていたけど、誰にもそうだという訳ではないらしい。
ヴァーナガンドさんに密かにギルドでのリリスの様子を聞いてみたところ、どうやら一人の時はとても静かで、必要時以外は誰とも接しないらしく、冒険者達からは『氷の女王』という異名が付いているらしい。
冒険者がソロで行動するのは、とても危険だ。魔物が蔓延る外では、いつどんな危険に晒されるかもわからない。
だから冒険者ギルドは、パーティーに入ることを推奨しているんだけど、リリスは手練れの冒険者パーティーですら苦戦する魔物を、無傷で討伐してしまう。
しかも、そいつを殺したのが「目障りだったから」という酷くしょうもない理由なのだから、ギルドの方でも「この人なら別にソロでいいや」となっているのだとか。
誰をも寄せ付けない風格と、強力な魔物を無傷で討伐してしまう実力から、冒険者達から『氷の女王』という異名が付けられているらしい。
そんなに強かったのか、とは驚かない。
だって彼女は、悪魔の中で二番目の爵位『悪魔公』なのだから。
でも、必要時以外に人と接していないというのは予想外だった。
確かに普段はクールだけど、夕飯時には今日何があったのかを明るく話してくれて、とても楽しそうだったのだから。一人や二人くらいは気軽に話せる友人が出来たのかと思っていた。
……そうだ。思い返せばリリスの話には、ほとんど他人の話が出てこなかった。
ヴァーナガンドさんからすれば、私とリリスが話している光景の方がありえないのだとか。
あんな楽しそうに笑顔を作り、私と何かを話すたびに表情をコロコロと変える姿は、本当に見ないことだと言っていた。
ちなみに、そのギャップにやられてリリスに惚れた冒険者も多いらしく、毎日誰か一人は告白して撃沈しているらしい。
……リリスは美人だからね。惚れられるのは当然だ。
「だからこそ、わからないなぁ……」
私はリリスに何もしていない。
彼女のように愛情表現をしたことはないし、むしろ雑に扱う場面の方が多い。
どうしてあんなに好かれているのか、理解出来ない。
私を恥ずかしがらせて、それを見て楽しんでいるようにも見えないし、主人に気に入られるため無理をしている感じにも思えない。
「うーん、わからないや」
わからないなら、どうすればいいか。
──直接見るのが一番だ。
普段のリリスが、本当に誰とも話さないのか。
いつもどんな感じで依頼をこなしているのか。
そのついでで、どうして私に好意を寄せているのか調べる。
「よしっ! そうとなれば準備だ」
思い立ったが吉日。
私はベッドから飛び起きて、ちょっとした準備を終わらせるために地下室に潜った。
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