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相談です
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ギルドを出た私は、指輪を外して中央区のお店が並ぶ場所まで来ていた。
昼間ということもあり、町の人はそこそこだ。
ハラルドさんの酒場も中々繁盛しているみたいで、外からでもちょっとした騒ぎが聞こえてきた。
そこを抜け、私はもう少し奥へ進む。
「あらティアちゃん。今日は一人?」
私に気が付いた惣菜屋のおばさんが、声を掛けてくる。
このおばさんと他の店のおばさん達が、リリスとよくお話をしている人達だ。
よそ者の私達にも最初の方から優しくしてくれて、いつもお裾分けをしてくれる優しい人だ。
「こんにちは。リリスはお仕事に行っているよ」
「あらそうなの? おばさん達、魔物は怖くて……リリスさんは率先して強い魔物を狩ってくれているんでしょう? 本当に助かるわ」
「それはリリス本人に言ってあげてよ。私は何もしていないからさ」
「ティアちゃんにも感謝しているのよ。シュメルさんに薬を安く提供してくれているって聞いたわよ。ほんと、二人が町に来てくれて、ここのみんなは感謝しているのよ」
「……やめてよ。恥ずかしいからさ」
今日はよく褒められる日だ。
そんな日は地下室に籠って道具開発……と言いたいところだけど、ここで引き返す訳にはいかない。
「今日はさ、少し相談があるんだけど……」
「相談? おばさんに相手が務まるかねぇ」
「うん。相談と言ってもそこまで重大なことじゃないんだけど……なるべくリリスのことを知っている人に相談したいと思っていたんだ」
「そうかい? いつものお礼をやっと返せるってもんだ。あたしで良ければ、相談に乗るよ!」
おばさんは胸をドンッと叩く。
……なんか、妙に頼もしく見えるのは気のせいだろうか。
「実はね……」
私は相談事を話した。
徐々におばさんの顔がニヤニヤとしたものに変わって行くのは恥ずかしかったけど、それでも私に出来ることはこれくらいだと思って、私の悩みを頑張って話した。
「……なるほどねぇ。わかったよ! そういうことなら、このおばさんに任せなさいな!」
「ありがとう。お願いするね」
「はいよ! でも、これは数がいた方がいいね」
「え?」
「──みんな! 集まりな!」
「ちょ!?」
おばさんの叫びを聞きつけ、いつものおばさんズがぞろぞろと集まりだした。
「おんやぁティアちゃんじゃないか」
「今日はリリスちゃんはいないのかい?」
「そんな大声を出してどうしたんだね」
恐ろしく早い。おばさんズの結集力が、神の想像を遥かに超えているだと……!
「ちょいとティアちゃんに協力してやって!」
「「「──ほう?」」」
その言葉で、おばさんズの目が光った……ような気がした。
「──ヒッ!」
もしかしたら私は、とんでもない人に相談をしてしまったのかもしれない。
私に伸ばされる手を他人事のように眺めながら、私は後悔する。
でもそんな後悔は、時すでに遅しだった。
◆◇◆
数時間後、ようやくおばさんズから解放された私は、疲れ果てた体に鞭打ち、時によろけながらなんとかお家に辿り着いた。
途中で本当に足腰が立たなくなり、『創世』で作り出した木の棒を杖のようにして歩いていた。どうして杖を作らなかったんだと聞かれても、そんなことを考える余裕がなかったんだと言いたい。
おばさんに相談するだけのはずが、まさかここまで体力を使い果たすことになろうとは……これは私の部下『叡智神メティス』でも想像出来なかったことだろう。
あいつはヒョロ男だから、ものの数分でダウンしていただろうし、メティスは用心深い男でもあったから、こうなる前にあーだこーだ理由を付けて逃げていたかもしれない。
「……いや、そんなのわかるかっての。私は作ること以外は何も出来ない創造神だぞ。体力も無いし、深く考えることだって出来ないんだよ」
一先ず家に戻った私は、真っ先に地下室へ向かって倉庫を漁る。
その中から体力回復を促進するポーション(純度99%)を見つけ、一気に飲み干す。
「──っ、ぷはぁ! し、死ぬかと思った」
最初は本当に相談だけのつもりだったんだ。
でも、あれよあれよと話が進むにつれ、気が付いたら目的達成のための訓練となっていた。
──おかしい。
私は声を大にしてそう言いたかった。
だって私の目的は、どう考えても体力を消耗するタイプではないんだ。
もうあの人達には相談しない。
私は今回の件を学び、そう強く誓った。
「はぁ……」
少し椅子に座って休んでいたら、体の疲れは回復した。
流石は99パーセントのポーションだ。効き目と即効性が異常だ。
ちなみに値段にすれば100万はする。そこらで売っている70パーセントのポーションとは格が違う。……こんなことで最高級のポーションを使ったとジュドーさんが知れば、目をひん剥くかもしれないな。
倉庫のはもしもの時のために『創成』で作ったから、一瞬で終わったんだけど、材料から作ろうとすれば……完成には丸一日掛かる代物だ。それだけ製造が難しいから、そう簡単に量産は出来ないんだけどね。というか絶対しない。
作るのが難しい物は、それに比例して魔力消費が激しい。このポーションを一個創成するだけで、私の温存魔力が一気に半分以上減った時は、マジで焦った。
「っと、早くしないとリリスが帰って来ちゃう」
私は椅子から立ち上がり、地下室を出た。
「いざ、参る……」
私は戦場へと向かい、エプロンを身に付けた。
昼間ということもあり、町の人はそこそこだ。
ハラルドさんの酒場も中々繁盛しているみたいで、外からでもちょっとした騒ぎが聞こえてきた。
そこを抜け、私はもう少し奥へ進む。
「あらティアちゃん。今日は一人?」
私に気が付いた惣菜屋のおばさんが、声を掛けてくる。
このおばさんと他の店のおばさん達が、リリスとよくお話をしている人達だ。
よそ者の私達にも最初の方から優しくしてくれて、いつもお裾分けをしてくれる優しい人だ。
「こんにちは。リリスはお仕事に行っているよ」
「あらそうなの? おばさん達、魔物は怖くて……リリスさんは率先して強い魔物を狩ってくれているんでしょう? 本当に助かるわ」
「それはリリス本人に言ってあげてよ。私は何もしていないからさ」
「ティアちゃんにも感謝しているのよ。シュメルさんに薬を安く提供してくれているって聞いたわよ。ほんと、二人が町に来てくれて、ここのみんなは感謝しているのよ」
「……やめてよ。恥ずかしいからさ」
今日はよく褒められる日だ。
そんな日は地下室に籠って道具開発……と言いたいところだけど、ここで引き返す訳にはいかない。
「今日はさ、少し相談があるんだけど……」
「相談? おばさんに相手が務まるかねぇ」
「うん。相談と言ってもそこまで重大なことじゃないんだけど……なるべくリリスのことを知っている人に相談したいと思っていたんだ」
「そうかい? いつものお礼をやっと返せるってもんだ。あたしで良ければ、相談に乗るよ!」
おばさんは胸をドンッと叩く。
……なんか、妙に頼もしく見えるのは気のせいだろうか。
「実はね……」
私は相談事を話した。
徐々におばさんの顔がニヤニヤとしたものに変わって行くのは恥ずかしかったけど、それでも私に出来ることはこれくらいだと思って、私の悩みを頑張って話した。
「……なるほどねぇ。わかったよ! そういうことなら、このおばさんに任せなさいな!」
「ありがとう。お願いするね」
「はいよ! でも、これは数がいた方がいいね」
「え?」
「──みんな! 集まりな!」
「ちょ!?」
おばさんの叫びを聞きつけ、いつものおばさんズがぞろぞろと集まりだした。
「おんやぁティアちゃんじゃないか」
「今日はリリスちゃんはいないのかい?」
「そんな大声を出してどうしたんだね」
恐ろしく早い。おばさんズの結集力が、神の想像を遥かに超えているだと……!
「ちょいとティアちゃんに協力してやって!」
「「「──ほう?」」」
その言葉で、おばさんズの目が光った……ような気がした。
「──ヒッ!」
もしかしたら私は、とんでもない人に相談をしてしまったのかもしれない。
私に伸ばされる手を他人事のように眺めながら、私は後悔する。
でもそんな後悔は、時すでに遅しだった。
◆◇◆
数時間後、ようやくおばさんズから解放された私は、疲れ果てた体に鞭打ち、時によろけながらなんとかお家に辿り着いた。
途中で本当に足腰が立たなくなり、『創世』で作り出した木の棒を杖のようにして歩いていた。どうして杖を作らなかったんだと聞かれても、そんなことを考える余裕がなかったんだと言いたい。
おばさんに相談するだけのはずが、まさかここまで体力を使い果たすことになろうとは……これは私の部下『叡智神メティス』でも想像出来なかったことだろう。
あいつはヒョロ男だから、ものの数分でダウンしていただろうし、メティスは用心深い男でもあったから、こうなる前にあーだこーだ理由を付けて逃げていたかもしれない。
「……いや、そんなのわかるかっての。私は作ること以外は何も出来ない創造神だぞ。体力も無いし、深く考えることだって出来ないんだよ」
一先ず家に戻った私は、真っ先に地下室へ向かって倉庫を漁る。
その中から体力回復を促進するポーション(純度99%)を見つけ、一気に飲み干す。
「──っ、ぷはぁ! し、死ぬかと思った」
最初は本当に相談だけのつもりだったんだ。
でも、あれよあれよと話が進むにつれ、気が付いたら目的達成のための訓練となっていた。
──おかしい。
私は声を大にしてそう言いたかった。
だって私の目的は、どう考えても体力を消耗するタイプではないんだ。
もうあの人達には相談しない。
私は今回の件を学び、そう強く誓った。
「はぁ……」
少し椅子に座って休んでいたら、体の疲れは回復した。
流石は99パーセントのポーションだ。効き目と即効性が異常だ。
ちなみに値段にすれば100万はする。そこらで売っている70パーセントのポーションとは格が違う。……こんなことで最高級のポーションを使ったとジュドーさんが知れば、目をひん剥くかもしれないな。
倉庫のはもしもの時のために『創成』で作ったから、一瞬で終わったんだけど、材料から作ろうとすれば……完成には丸一日掛かる代物だ。それだけ製造が難しいから、そう簡単に量産は出来ないんだけどね。というか絶対しない。
作るのが難しい物は、それに比例して魔力消費が激しい。このポーションを一個創成するだけで、私の温存魔力が一気に半分以上減った時は、マジで焦った。
「っと、早くしないとリリスが帰って来ちゃう」
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私は戦場へと向かい、エプロンを身に付けた。
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