煙草屋さんと弾丸。─獣になりかけた恋人と、婚姻弾の物語─

男鹿七海

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拾似

静かな再会

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 昼下がりの柔らかい光が街を包む。戦いの後の静けさが、店の窓越しに二人の顔をそっと照らしていた。
 煙草屋ツダの店内には、かすかな埃の匂いと木の温もりが混ざり合っている。

 俺と凛は、いつものようにカウンターで品物を並べていた。戦いの傷跡は少しずつ癒え、日常の営みが二人の生活に戻りつつある。

「……龍之介。こうして落ち着いてるの、久しぶりだね」凛が小さく笑う。

「ああ。でも、まだ油断はできないな」
 俺は外の通りを見やりながら答える。昨日の霧がわずかに街の隅に残っているのが見えた。

 そのとき、通りの向こうに見覚えのある影がちらりと映る。

「……あれ、白廻?」
 凛の声に、俺も視線を合わせた。

 白廻は、以前の戦いで何度も顔を合わせた獣人だ。今日は特に用事がある様子もなく、ただ通りを歩いている。互いに気づいた瞬間、短く頷き合うだけの再会。
 言葉は交わさず、白廻はそのまま街の向こうへ歩き去っていった。

「……変わってないね」凛が窓越しに呟く。

「そうだな。変わったのは、むしろ俺たちかもしれない」俺は微笑み、カウンターの煙草を整えながら答えた。
 
 白廻との再会は短く、何も行動を起こさない出来事だった。しかしその短さが、逆に二人の胸に小さな波紋を残す。

「でも、こうしてまた会えたのは、少し安心するね」
 凛の声には、安堵とわずかな寂しさが混じっていた。

「ああ……これで少しずつでも前に進める」
 俺はそう言って手元の作業に集中する。棚の煙草を整える手つきは、日常の安定を取り戻す感覚と重なった。

 そのまま二人は、店内の日常に戻る。小さな笑い声や会話が戻り、昼下がりの光が店の奥まで優しく差し込む。
 短い再会だったが、それでも確かに、二人の生活の中に小さな彩りを残し、心の奥で何かを予感させる。

 街はまだ完全に平穏ではない。
 それでも、俺と凛は互いに支え合いながら、日常を取り戻し、未来への一歩を踏み出していた。


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