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しおりを挟むどう慰めようかと、一晩中考えた。けれど、ついにいい考えは思い浮かばず、約束の昼休みがやってきてしまった。
現れたリンは、いつも通りだった。いや、いつもより、元気なくらいで。それが逆に、おれを心配させる。
「これでよかったのよ。付き合ったあとにロリコンの変態だって知ったら、ヒサンだったわ」
「だけど見た? 御手洗さんのあのだらしない顔。あんな幼い子相手に、最低よ」
「あーあ。私まで被害者にならずにすんでよかった」
さんざん愚痴を吐き続け、どんどん、落ち込んでいく。最後には悟ったような顔をして、
「この世に善良な人間なんて、いないんだわ」
なんて言いだした。
御手洗さんと中学生っぽい女の子の逢瀬は、リンにトラウマを植え付けてしまった。人間不信になって、この先まともな恋ができなくなるかもしれない。そう、人間相手には。だったら、
「幽霊を恋人にすればいい」
そう言ったおれに、下心がないかと言えば嘘になる。けれど、あくまでこれはそういう可能性もあるって提案だから。
「幽霊なら、だれも『祓い屋』のリンに逆らえないよ。他の女の子に見向きしないようしばりつけても文句言わないし、裏切らない」
ぷっとリンが吹き出した。
「なにそれ、もしかして太郎くん、私のこと口説いてる?」
「そうだとしたら?」
真剣に見つめるおれの視線を、「バカね」の一言で、リンは切り捨てる。
まあ、実際、人間と幽霊がうまくいくはずもないことは、よくわかってる。第一、触れ合うことができない二人の間に、恋人らしいあれこれなんて期待できない。
わかってはいるけど、辛いな。おれ、何で死んじゃったんだろ。生きてたら、リンと付き合うこともできたかもしれない。
「太郎くん、ちょっとそこに座って」
「なんで?」
「いいから、早く」
おれは言われたとおり、壁にもたれて座る。すると、リンがおれの肩に額をおしつけるように座ってきた。もちろん、触れ合うことはできない。この姿勢をキープするリンの腹筋は、悲鳴を上げているだろう。リンの背中に腕を回してみる。それは空気を掴むようなもので、何の感触もないけれど、たしかに、触れ合えている気がした。
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