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17 犬(狼)獣人のロキ
しおりを挟むあたしを助けてくれたのは、茶色の犬耳とふさふさのしっぽがついた男の子だった。背はあたしよりこの子のほうが少しだけ高いけど、たぶん、同い年くらいだと思う。
「つまり、あなたも誘拐犯の仲間だってことね」
「俺は助けてやっただろ!なんだよ、その言い草は!」
男の子は、名前をロキといった。そこに転がってる熊とのっぽと同じ盗賊団に所属する見習いだそうだ。
「うちのおやぶん、人身売買だけは許さないんだ。なのにこいつら、小遣い稼ぎだーって隠れてこそこそと。見つかったら殺されちまう。だから、やる前に、止めに来た」
「とかいって、獲物を横取りする気じゃないでしょうね?」
「はぁ!? しねーよ、んなこと!」
怒ったのか、犬耳がぴょこぴょこけいれんしてる。
「……じゃ、俺は帰るから。お前らも気ぃつけて帰れよ」
「待ちなさい」
しっぽを引っ張ってとめると、ロキは「いぎぃ!」と変な声を上げた。
「ばか!しっぽはなしだろ!」
「あなた、あたしたちを売り飛ばそうとしといて、何のおとがめもなしで通ると思ってるの?」
「だから俺は───」
「そこの男たち、あたしが通報すれば命はないわよ」
「………」
「通報できないとでも? あたしは連絡用のカラスを持ってるの。手紙くらい、すぐに飛ばせるわよ」
「何がのぞみだ」
「あたしたちを家まで送り届けなさい」
「連絡用のカラスを飛ばせるなら、迎えを呼べばいいだろ」
おっと、そのとおり。この子、馬鹿じゃないわね。
「迎えを待ってる時間はないの。すぐに帰らなくちゃ。パパが危ない」
「───お前の親父、命狙われてんのか」
やっぱりな、とロキは納得顔だ。
「どうせ、貴族のお家騒動かなんかだろうと思ってたぜ。当主は殺し、邪魔者の子どもと母親は売りさばく。んで、家を乗っ取る」
どこかで聞いた話ね。おもに、ゴシック小説の中で。現実にはそんなお話、ないわよ。
「まぁ、そんなところ」
とりあえず、いまは話を合わせておく。あたし、連絡用のカラスなんて持ってないし。ロキに見捨てられたら帰る手段がない。
「いいぜ、そういうことなら協力してやる」
「協力させてください、でしょ。立場をわきまえなさい、わんちゃん」
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