愛への誤ち

八つ刻

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続・愛への誤ち

said 慧

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岐阜の出張から戻ってきた俺は今までにない程落ち込んだ。
だけど落ち込んだままではいられない。
何とか未来まえを見ようと思っていた。

「神里さぁ~ん、今日こそは食事連れてってくれませんかぁ?」

昼休憩の時、こてんと可愛らしく首を傾げながら媚びを売ってくるのは、同期の佐藤 佳苗さとうかなえだ。
大きな瞳をパチパチとし、少し口を窄める仕草をする佐藤さんは俺がよく知る女と同じ種類だった。

「でも今日は金曜だしね・・・何処もいっぱいじゃないかな」
「私ぃ、神里さんとなら何処でもいいです!予約取れたら一緒に行ってくれますかぁ?」
「あぁ・・・うん、いいよ」
「やったぁ!約束ですからね!」

今にもスキップしそうな様子で彼女は去っていく。
いつもなら絶対断っていたのに、今日はなぜかそんな気にならなかった。

「ま、いいか・・・」

操を立てなければいない相手がいるわけでもない。
梨衣と出会う前の俺に戻っただけだ。
佐藤さんの去っていく後ろ姿を見ながら俺は自虐気味に笑った。


父親の努力からか、うちの会社は小さいながらなかなか忙しい。
俺は佐藤さんとの約束なんてすっかり忘れて、仕事に没頭していた。

午後七時。ひと段落着いた俺はコーヒーでも飲もうかと、席を立った時だった。

「あっ!神里さぁん!」

振り向くと既に私服に着替えた佐藤さんがいた。

「佐藤さん、お疲れ様。もう上がり?」
「今終わりましたぁ。神里さん、予約取れたんですよ!一緒に行ってくれますよね?」

最初は何を言ってるのかわからなかったが、昼の事を言っているのだと思い出した。

「あ、そうなの?う~ん。まだ仕事終わらないんだよね」
「そうなんですか・・・何時くらいまでかかりそうですかぁ?」

本当はもう殆ど終わっている。たけど、この手の女はなかなか引き下がらない。
俺の腕に擦り寄り身体を密着させ、上目遣いで女を出してくる。

「偶然なんですけどぉ・・・、今日取れたところホテルのレストランなんです。私・・・神里さんとなら食事のあと・・・いいですよ」

潤んだ瞳でそう言う彼女は今までこうやって男を落としてきたんだろう。
バカバカしいと思いつつも、今まで俺はこんな女をたくさん抱いてきた自分を思い出し、似た者同士なんだと感じた。

「・・・・・・じゃああと十分だけ待ってくれる?終わらせるから」
「!はい!!」

パッと顔を輝かせた佐藤さんは、きっと上手くいったと思っているんだろう。
だけど俺は佐藤さんとそんな関係になるつもりはない。大学までとは話が違う。
付き合うつもりも、ましてや結婚するつもりもないのに父親の会社で女に手を出すつもりはなかった。
めんどくさいが、食事だけ付き合いさっさと帰る事にした。

サクッと残りの仕事を片付けて、待っていた佐藤さんと共に予約したホテルのレストランへ向う。


佐藤さんが予約したレストランはなかなかの値段がするフレンチだった。
新入社員が来るような店じゃない。
佐藤さんは俺が社長の息子だとどこからか知ったのだろう。
勿論支払いはするつもりだが、こうあからさまだと逆に清々しい。

「ここのレストランってぇとっても美味しいし、カップルにすごく人気なんですよぉ!」
「へぇそうなんだ。楽しみだね」
「はい!神里さんと来れるなんて、私幸せです!」

俺とじゃなくて、俺の財布との間違いじゃないのか?と言いたい所をぐっと抑え俺は微笑んだ。


食事は確かに美味しかった。
前菜が数種類から選べるというのも、女性が喜びそうだ。
佐藤さんは何かずっとしきりに喋っているが、俺は適当に返答しているだけだった。



特に耳を傾けていたわけではない。
だけど隣の席から聞こえてきた名前は、俺の意識を持っていくには十分な名前だった。

「で?りいちゃんだっけ?今度泊まりに来るの」
「そう、梨衣よ。慧介くんと会うのも久しぶりだし楽しみだわ~!」

りい?けいすけ?
まさかと思いつつも、俺は目の前の佐藤さんより隣の席の二人が気になってしまう。

チラリと覗き見てみると、夫婦だろうか。梨衣と同じ年くらいの男女だった。

「頑張ってるよなぁ。シングルマザーだろ?こっちに来た時くらいゆっくりさせてやりたいな」
「そう思うなら貴方も協力してよね。いっつも仕事ばっかで全然梨衣に紹介できないんだから!」
「悪かったって。だから結婚記念日の今日は紗栄子の為にちゃんと仕事終わらせて来ただろ?」

紗栄子って名前はよく梨衣から聞いていた友達の名前だ。
まさか、まさか、あの梨衣なのか?
シングルマザーってどういう事だ?結婚したんじゃないのか?

俺の頭の中はぐちゃぐちゃになっていた。

「今日約束破ったら梨衣と同じように私も貴方から逃げてやろうと思ってたわ」
「おいおい。怖い事言うなよ。それに梨衣ちゃんの相手は大学生だったんだろ?そりゃなかなか言えないよなぁ」

「!!!」

俺の頭の中でどんどんピースが嵌められていく。
もしかして、が確信に近付いていった時、俺は堪らず席を立っていた。

「神里さん・・・?」

突然席を立った俺に目を丸くする佐藤さんには目もくれず、俺は隣の男女に話しかけていた。

「あの、すみませんーー」
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