校長からの課題が娘の処女を守れ…だと!?

明石龍之介

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第33話 辛かったもん

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ライブは熱狂の渦に包まれていた。

そして俺は渦中にいた…

「チェリー、次がラストだよ!みんなで手を繋いで飛ぶやつ。さ、やろうよ!」

「え、えと…まぁ…」

俺は疲れ切っていた。

もちろんそれはライブでではない。

曲が終わるたびにメールが気になり外に出て、蓮水さんが楽しそうに話しかけてくると俺へ向けられる視線と銃口にいちいち怯える始末だ…

なんだよこれ、なんだよこれ!

カレンの嫉妬?それとも蓮水さんが嫌い?
いや、両方だな…

俺はビクビクしながら蓮水さんの手を取って最後の曲で盛り上がった、ふりをした…

何がすきなことをさせてあげるだよ!?
させてあげれてねーよ!

余裕のある女の秘訣?
余裕一切ないじゃないか!!

カレンもここまでするなら俺を縛ってでも行かさなけりゃよかったのに…


「あー楽しかった!やばかったねー、絶対またくるわ!ね、チェリーもまた来たいでしょ!?」

「そうですね、一度万全な状態で楽しみたいと心底思いました…」

でも今日のは何がなんでもカレンのやつやりすぎじゃないか?
帰ったら説教してやる…

「このあとゆっくり語りたいところやけど…なんかチェリー体調悪そうだしまたにしよっか。いつでも学校で会えるし、ね?」

「は、はい。すみません…」

クソーなんだよこの物分かりのいいギャルは!?スーパー可愛くて、理解あって、なんかわからんけど尽くしてくれて…もうあんた勝ちだよ勝ち!

と言いたいところだが、俺はそんなんでもカレンが気になってしまう…

なんだろう、イライラしてるのは確かなんだけどちょっと違うんだよなぁ…

「でもさ、せっかくきたんだからちょっとくらい思い出残したいなぁ…」

「え、何するんですか?」

「写真、一緒に撮らない?」

提案が可愛いなぁ…俺と写真撮って嬉しいか?
俺は嬉しいけど…いやいやいかんいかん。

「いや、写真はちょっと…っておーい」
既に他の客にカメラをお願いしていた…

「さ、撮るよん。」
「強引ですね…」
「だって私ってそんな綺麗な女じゃないから…だからいいなって思った男子にはとことん好きっていうの!えいっ」

俺は腕を組まれ蓮水さんの豊満な胸を押し付けられた。
写真に写った俺の顔はさぞ不細工だったことだろう…
それくらい驚き興奮していた…

「じゃね、チェリー。また…学校でも話しようね!」

全部王道に可愛いなあのギャル!
とても俺をラブホテルで縛ったやつと同一人物とは思えない…

蓮水さんと別れたあと、俺はカレンを探したが見当たらない。
メールをしたが返ってこないので、とりあえず寮に戻ることにした。

「ただいまー」

「おかえり、快斗」

いつのまにか先にカレンが帰ってきてた…
高村さんに送ってもらったそうだ。

顔をみると怒りがこみ上げてきた。

「お前、今日のあれはなんだよ!?行っていいって言ったのカレンだろ!?やりすぎだよ!」

「ごめんなさい…でもやっぱりハスミと二人なのは嫌だったの…」

ちょっと泣きそうだが、今日の俺は怒ってるんだ。
言いたいことを言うぞ!

「でもお前校長の本で読んだんだろ!?全然好きなことさせてもらえてないし、お前余裕なんでゼロだよ!いい加減怒るぞ!」

「余裕?」

「いやこれだよ!このページ見て俺をライブに行かせたんだろ?」

俺は机に置いたままだった本を広げてカレンに向けた。
この後に及んでとぼけるだと?そんなことは許さん!

「?私そんなとこ見てないよ。こっち。」

「は?どれどれ…」

そこには『好きな男は泳がせるとボロを出すので弱みを握ったところで脅すとイチコロです』と書かれていた…

「いやなにこれ!?こんなのラブコメにねーわ!ていうかそれならあのマーカーはなに!?」

「あれは前の人が引いてたやつ」

「中古買うなよ!親父の本だろ!」

なんだよ…俺の勘違いってことか…
いやそれにしてもやりすぎだけどさ…ああもういいやイライラしてたのがバカみたいだ…

…いや待て、好きな男?え、待て、好きなの?俺のこと?

「カレン、お前…いや、とにかく今日のはやりすぎだ!」

恥ずかしくなって怒鳴ってしまった…

「うう、ごめんなさい…でも嫌だったの!他の人と一緒に行くのいやだったの!なのに快斗は行っちゃったの…辛かったもん…うう、うわーん!!」

カレンが子供のように号泣してしまった…

「え、ご、ごめんって…いや、そんなつもりじゃ…」

「だっていつも寝坊するのに今日は早起きだったもん!楽しみにしてた!絶対してた!」

「いやしてないしてない、あれは起こされただけだって…」

い、いかん収集がつかん…

「ハスミンには怒らないのに私は怒る…快斗私のことばっかり怒るもん!うわーん!!」

もうカレンの目が真っ赤だ…
いや急にハスミンになったけどそれは今ツッコんだらダメだ…

「いや、俺も勘違いとかあったからごめんって…カレン、もう行かないから、ずっとここにいるから」

「ぐすっ…それじゃ私束縛女みたい…」

よくわかってるじゃないか…

「いや、じゃどうすればいいんだよ?」

「…エッチして」

…!?

こ、このシチュエーションは…

雨降って地固めるやつ
だいたいのカップルは泣くほどの喧嘩をしたあと、仲直りのキスから身を委ね情事を重ねるというパターンで愛を深めていくのである。
すなわちこのシチュエーションで断るということは愛を拒絶する行為に等しく、その先に待っているのは破局しかない…(いや、まだ付き合ってもないんですが…)

「いや、エッチとかそういうのは…」

「やっぱりハスミンがいいんだ…」

「いやなんでそうなる!?あの…そのだな…付き合ってもない男女はそう言うことしたらダメなんだ、わかる?」

散々チューしておいて今更すぎるという指摘はもう甘んじて受けようではないか…

「そうなの?」

「そ、そうだって。周りのやつがおかしいだけで、普通はそうなんだ。」

「そっか」

わかってくれたみたいだ…なんとかなりそうか?

「じゃあ付き合ったらいいの?」

「!?」

こ、これは予想外だ…

まずい…切り返す言葉が出てこない…
付き合ったら多分エッチしないとおかしい流れになるし…断ったらそれもアウトだ。待て…詰んでないか?

「い、いやその…付き合ったとしてもすぐにするようなもんじゃあないというか…」

「したくないんだ…」

いやしたいよ!もうめちゃめちゃにしてやりたいよ!
クソ、どうすれば…

「あ、あのさ…俺…」

「いいもん、したくないなら別に…」

あーめんどくさいなー!でもなんでかそこが可愛いんだよなー!
俺って本当に貧乏くじばっか引いてるけど…いいよもう!

カレンをギュッと抱きしめた。

「ごめんなカレン、ちょっとその…今日はこんな感じでしたくないというか…できないというか…でも俺は…カレンが…」

いや、告白していいのか?
てかこれも告白だろ?え、どうしよ…

「…わかった。今日はごめんなさい。それに、快斗の言いたいこと、わかってるから…」

「え、それって…」

「今日は勃たないんだね」

「そうじゃなーい!」

いやそう勘違いしておいてくれた方がいいのか!?

「ご、ごめんそうそう、今日はなんか元気なくて…はは、ははは…」

「そっか。やっぱり本に書いてたこと当たってる」

「本?」

本を広げて見せてくれたページには『童貞はいざとなると勃たない日があるので優しく許してあげよう』と書いていた…
いやこれ絶対校長の実体験だろ!?

「ははは…そうだないざとなると俺はダメだな…」

「快斗、もう怒ってない?」

「え?ああ…俺の方こそごめん…でもあんまりひどいことしたら怒るからな。」

「…わかってるもん」

なんとかおさまったことを喜ぶべきなのか、告白できなかったことを悔やむべきなのか…
ていうか告白したらどうなったんだろ…

そもそも処女を守れとは言われているが付き合うなとは言われてなくないか?

これはいい加減カレンと…
いやカレンは宇宙人だからな…こんな状況からでも平気で「好きじゃない」とか言い出しそうだもんなー…

目が腫れたカレンの頭を撫でながら俺は久しぶりに真剣な悩み事をしていた。

泣き疲れたのかカレンはすぐに寝た。

俺は一人で考えた。
いや考えるまでもなかった…

カレンといい加減付き合うべきじゃないこれ!?

なんか周りも公認してるしチューしまくってるしその写真全国に出回ってるし…

これ付き合って無い方が無理あるだろ!

するとメールがなった。

最近連絡のなかった校長からだ…

『やっぴー快斗くん。明日お土産話あるから校長室きてねん。』

ツレか!

まぁいいや、明日校長にそれとなく聞いてみよう…

ライブの余韻などこれっぽっちもなく俺は寝た…


翌日はカレンの機嫌が回復した。

急に「おはようのチューはどっちからでもいいの」とルールブレイカーを炸裂してチューしてきた。

目が腫れていたが、それはそれでちょっと可愛かった。

登校中もずっと俺から離れない。
周りには冷ややかな目で見られていたが、お構いなしだった。

今日はイチャイチャモードなのか?

学校について教室に向かう時のカレンの切なそうな顔を見ると、やはりカレンと付き合いたいと思ってしまった。

また校長に変なこと言われなければいいけど…

「おう快斗!朝からしけたツラしてんなー。」

そう話しかける純也は携帯を忙しそうに触っている。

「いやちょっと考えごとしてて…ってお前なにをそんな忙しそうにしてるんだ?」

「え、ああ…ちょっとフォロワーが増えてリプに追われてて…」

「フォロワー?…ってお前かあの写真回したの!」

よくみるとアカウントがo-junと書いていた…
童貞使って人気とるのはやめろよ!

昼休みに俺は校長室に向かった。
放課後でもよかったのだが、早くカレンとのことを話したくて仕方なかったのだ。

「失礼します」

「おお、これはトライアングル快斗氏ではないか。まぁ座りたまえ。」

校長はこんがりと焼けていた…

「一体どこ行ってたんですか?ていうか俺に海神《わだつみ》さんのこと任せて逃げたでしょ?」

「なにを言うか、そもそもハワイに出張予定があったのじゃよ」

「何をしにハワイまで?」

「野球のスカウト」

「いやそれお前の仕事なの!?それに海外から選手連れてくるのありなの!?」

この学校の野球部ってそういえばあんまり見ないけどどこで練習してるんだ…?

「まぁいいですけど…それより校長、確認したいことが…」

「うん?君から質問とはの。カレンとヤりたくなっちゃった?」

「いや親がそんなこと言うなよ!いや、約束は守りますけど…せめて付き合うくらいはいいのかなって…ほ、ほらまだ俺らの関係を信じてない人もいるしこの際…」

「なんじゃ、構わんよ」

「へ?」

「君が100人彼女を作ったところで童貞であることに変わりはないからの。」

や、やったー!何か知らんがカレンと堂々と付き合えるぞ!
もう関係に悩むこともないんだ…
よし、帰ったら早速…

「あ、そうじゃ土産話の件忘れておったわい。向こうにおる時に連絡がきてのう。」

「あ、忘れてました…一応聞きますがなんですか…?」

「ふむ、来週GWじゃろ?そんでその時に文化祭をするのは知っておろう?」

「あ、そうだった…」

ラブ高文化祭

平日ではなく連休を目いっぱい使って行われる文化祭は全国から多くの人が押し寄せるこの学校、いやこの町の一大イベントである。

普通なら1週間前ともなれば文化祭ムード一色になるものだが、誰もなにも準備をしている気配はなく、朝になると急に凄まじいことになっているのだ…(隠し部屋多すぎるだろ!)


「でもその文化祭でなにかあるんですか?」

「文化祭の名物コーナー、地獄十種競技の優勝賞品をカレンにされてしまったのじゃ」

「…いやそれはもっと早く言えよ!それに地獄十種競技って何!?聞いたことないわ!」

「なんじゃ無知じゃのう。ま、ルールはおいおい説明するとして、カレンの処女の危機じゃからの、競技に出場して勝つのじゃ。カレンと付き合うというのなら覚悟せいよ。」

「ま、まぁそれは課題の内ですからね…ていうか娘景品にされてるんなら断ればいいでしょ!?」

「文化祭実行委員は絶対じゃ!彼らはわしでもどうすることもできん!」

え、また変な敵が現れる予感…

明日詳しいことはメールすると言われて俺は寮に帰った。

「カレンただいまー」

「おかえり、もうご飯作ってるよ」

ご飯を食べながらカレンを見ると今日は一段と可愛く見えた。
でも告白していいんだ、校長の許可をもらったんだ…

「あ、あのカレン…」

「ん?」

あ、だめだ忘れてた…俺童貞なんでした…告白とかサラッとできねぇぞ…

カレンの顔をみて好きだなんて…いや無理ー!!

それにこいつが俺のことどう思ってるのか…
もし振られたら…?
う、今日は胸が痛い…

その日カレンを意識しすぎてまともに話ができなかった…


次回 文化祭編突入! 新たな刺客がカレンと快斗を襲う!?
地獄十種競技とは一体…

そして文化祭の終わりについに二人は…!?















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