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第3章 変わるもの 変わらないもの
73.四人の僧侶
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この護衛依頼に獄鬼が関わって来る――それが本当なら、どうすべきか。
最優先は護衛対象である3家族と2つの商隊を無事に港町ローザルゴーザへ送り届ける事。次に優先すべきは獄鬼の殲滅。
目の前にいれば最優先が二つになるが、現時点で所在が判らないため優先度は下がる。
セルリーとヒユナはすぐに移動してきたが、レイナルド達はそうもいかない。何せ護衛……もう警戒対象でいいか。
そういう連中を監視しているんだから目を離すのは避けたいだろう。
「あっちは揉めてる感じ?」
合流したセルリーが前方を伺いながら言う。
ヒユナと、オセアン大陸から来ている僧侶の女性も同じように様子を見守っているが、三人ともあまり顔色は良くない。
「ゲンジャルさんには言いましたけど、さすがにあの人たちの前で獄鬼が関わって来る可能性があるなんて言えませんし」
「そうよね……」
「皆さんはどうなンすか」
聞いたのはバルドル。
女性僧侶三人は真剣な顔付きで前方に神経を集中させている。脂汗、だろうか。蟀谷に汗が伝うのを見て思わず(三人とも頑張って……!)って心の中で応援した、直後。
「あ」
「わっ」
「……レン、やったわね?」
「えっ」
驚いた顔のヒユナさん達と、呆れた顔のセルリーさん。
「やった、ですか?」
「鼓舞したでしょ」
「え」
「私にも……あ、セルリーさんと同じようなタイミングだったので応援領域付きですね」
「これが応援領域……すごいですね……!」
オセアン大陸の僧侶さんの目がキラキラしている。
ものすごく感動しているっぽい……?
「……セルリーさん。それって有りなんですか?」
「有りか無しで言ったら助かるのが本音だから有りだけど、非常識ではあるわね」
「えぇ……」
鼓舞は僧侶の魔法。
応援領域は僧侶のスキル。
同時発動したらしいが、どれが発動に繋がっているのかがよく判らない。でも怪我の治療では「治れ治れ」って念じているから同じなのかな。
魔法ってもっとこう……カッコいい台詞を真面目に詠唱しないと発動しないとか、そういう条件はないのだろうか。
いや、詠唱するのはものすごい恥ずかしい気がするけども。
「まぁでも、おかげで感知は出来たわね。間違いなく獄鬼の気配がするわよ。ものすごく薄っすらだから本体が近くにいる感じではないかな」
「同じく」
「間違いありません」
女性僧侶三人に保証されて、男達は顔を強張らせたけれど俺はホッとした。これで「天啓」の事が明かせなくても話を信じてもらいやすくなる。
つまり、獄鬼に対処できる。
(あれ? でも俺自身が感知してないのはなんでだろう……経験の差?)
垂れ流している神力は相当でも、索敵や気配探知なんてまだ習ったこともなかった。
学ぶべき事がまた増えたと思うと嬉しくなってくるが、いまは気を引き締める時だと自分自身を戒める。
「……貴族が馬車に異変を感じるから停めろって言い出したのも、獄鬼に関係してくんのかもな」
バルドルが声を潜め、身内にしか聞こえないように注意しつつもそんな事を呟く。
なるほど、それはあるかもしれない。
「でも、そうなると連中と獄鬼が協力関係って事になるわよ……?」
「さすがに考え難いか……」
仲間内でぶつぶつと言い合っていたが、ふと前方の雰囲気に変化が生じた。
一触即発と言ってもいいぐらいに空気が緊張し、ウォーカーが、レイナルドと貴族の護衛との間に身体ごと割り込んでいる。
少し離れて頭を抱えているゲンジャル。
「どうしたら……」
クルトから零れた呟きはその場の全員共通の思い。
「いっそ、こっちから攻めてみる?」
セルリーが言う。
「レンくんの応援領域と鼓舞があれば、4人でこの隊列に結界が張れると思うの」
「! あの人たちが獄鬼に関係あるなら、僧侶の結界で戦力を削げるかも」
オセアン大陸の僧侶さんがパッと表情を輝かせた。
「僧侶が全員揃って獄鬼の気配を感じ取ったから結界を張りたい、急いでローザルゴーザへ向かおうと言えば、良識ある貴族なら否とは言わないはず」
良識のある貴族ならね、とはたぶん全員共通の意見だろう。
「でも移動しながら結界を維持するのは大変ですよ」
ヒユナが不安そうに言うが俺は出来ると思った。
これは直感だ。
「やりましょう、きっと出来ます」
「私もやれると思う」
セルリーも自信満々に断言してくれたことで他の二人も意を決してくれたようだ。
「……判りました」
「精一杯頑張ります」
(皆を守るんだ。子ども達を怖がらせないように。傷つけないように。……リーデン様、力を貸してください)
僧侶4人、円陣を組んで右手を重ねる。
顔を上げて目を合わせ、力強く頷いた。
最優先は護衛対象である3家族と2つの商隊を無事に港町ローザルゴーザへ送り届ける事。次に優先すべきは獄鬼の殲滅。
目の前にいれば最優先が二つになるが、現時点で所在が判らないため優先度は下がる。
セルリーとヒユナはすぐに移動してきたが、レイナルド達はそうもいかない。何せ護衛……もう警戒対象でいいか。
そういう連中を監視しているんだから目を離すのは避けたいだろう。
「あっちは揉めてる感じ?」
合流したセルリーが前方を伺いながら言う。
ヒユナと、オセアン大陸から来ている僧侶の女性も同じように様子を見守っているが、三人ともあまり顔色は良くない。
「ゲンジャルさんには言いましたけど、さすがにあの人たちの前で獄鬼が関わって来る可能性があるなんて言えませんし」
「そうよね……」
「皆さんはどうなンすか」
聞いたのはバルドル。
女性僧侶三人は真剣な顔付きで前方に神経を集中させている。脂汗、だろうか。蟀谷に汗が伝うのを見て思わず(三人とも頑張って……!)って心の中で応援した、直後。
「あ」
「わっ」
「……レン、やったわね?」
「えっ」
驚いた顔のヒユナさん達と、呆れた顔のセルリーさん。
「やった、ですか?」
「鼓舞したでしょ」
「え」
「私にも……あ、セルリーさんと同じようなタイミングだったので応援領域付きですね」
「これが応援領域……すごいですね……!」
オセアン大陸の僧侶さんの目がキラキラしている。
ものすごく感動しているっぽい……?
「……セルリーさん。それって有りなんですか?」
「有りか無しで言ったら助かるのが本音だから有りだけど、非常識ではあるわね」
「えぇ……」
鼓舞は僧侶の魔法。
応援領域は僧侶のスキル。
同時発動したらしいが、どれが発動に繋がっているのかがよく判らない。でも怪我の治療では「治れ治れ」って念じているから同じなのかな。
魔法ってもっとこう……カッコいい台詞を真面目に詠唱しないと発動しないとか、そういう条件はないのだろうか。
いや、詠唱するのはものすごい恥ずかしい気がするけども。
「まぁでも、おかげで感知は出来たわね。間違いなく獄鬼の気配がするわよ。ものすごく薄っすらだから本体が近くにいる感じではないかな」
「同じく」
「間違いありません」
女性僧侶三人に保証されて、男達は顔を強張らせたけれど俺はホッとした。これで「天啓」の事が明かせなくても話を信じてもらいやすくなる。
つまり、獄鬼に対処できる。
(あれ? でも俺自身が感知してないのはなんでだろう……経験の差?)
垂れ流している神力は相当でも、索敵や気配探知なんてまだ習ったこともなかった。
学ぶべき事がまた増えたと思うと嬉しくなってくるが、いまは気を引き締める時だと自分自身を戒める。
「……貴族が馬車に異変を感じるから停めろって言い出したのも、獄鬼に関係してくんのかもな」
バルドルが声を潜め、身内にしか聞こえないように注意しつつもそんな事を呟く。
なるほど、それはあるかもしれない。
「でも、そうなると連中と獄鬼が協力関係って事になるわよ……?」
「さすがに考え難いか……」
仲間内でぶつぶつと言い合っていたが、ふと前方の雰囲気に変化が生じた。
一触即発と言ってもいいぐらいに空気が緊張し、ウォーカーが、レイナルドと貴族の護衛との間に身体ごと割り込んでいる。
少し離れて頭を抱えているゲンジャル。
「どうしたら……」
クルトから零れた呟きはその場の全員共通の思い。
「いっそ、こっちから攻めてみる?」
セルリーが言う。
「レンくんの応援領域と鼓舞があれば、4人でこの隊列に結界が張れると思うの」
「! あの人たちが獄鬼に関係あるなら、僧侶の結界で戦力を削げるかも」
オセアン大陸の僧侶さんがパッと表情を輝かせた。
「僧侶が全員揃って獄鬼の気配を感じ取ったから結界を張りたい、急いでローザルゴーザへ向かおうと言えば、良識ある貴族なら否とは言わないはず」
良識のある貴族ならね、とはたぶん全員共通の意見だろう。
「でも移動しながら結界を維持するのは大変ですよ」
ヒユナが不安そうに言うが俺は出来ると思った。
これは直感だ。
「やりましょう、きっと出来ます」
「私もやれると思う」
セルリーも自信満々に断言してくれたことで他の二人も意を決してくれたようだ。
「……判りました」
「精一杯頑張ります」
(皆を守るんだ。子ども達を怖がらせないように。傷つけないように。……リーデン様、力を貸してください)
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顔を上げて目を合わせ、力強く頷いた。
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