生きるのが下手な僕たちは、それでも命を愛したい。

柚鷹けせら

文字の大きさ
288 / 335
第9章 未来のために

261.気付いてしまった

しおりを挟む
 俺が師匠の言葉に感動している間に、皆も互いに顔を見合わせて意思確認。
 あれこれ揶揄われたり、嫌がらせされるのが面倒だから実力を見せつけようって動機でダンジョンに挑むのもどうかなと思うけど、皆がダンジョンに挑みたい理由はそれだけじゃなかった。
 もう30階層に到達しているレイナルドさん達と、入場すらしたことがない自分たち。
 それはつまり一緒に挑むならレイナルドさんたちをまた第1階層からスタートさせないとならないってことになる。

「2カ月弱でどこまで行けるかは判らないが、何もしないままレイナルドパーティの足を引っ張るだけになるのは嫌だな」

 バルドルさんの言葉に皆が頷く。

「自力で進めるところまで進んでおくのは賛成だが、グランツェパーティはどうすると思う?」

 その問い掛けに応じたのはミッシェルさん。

「私たちがマーヘ大陸で潜入捜査している間に挑戦はしたはずだけど、どうなってるかしらね。銀級アルジョンのヒユナも同行させていたでしょうし」

 どこまで進めたかは本人たちに確認しなければ判らないが、クルトさんもレイナルドパーティの一員として銀級アルジョンのうちに一度挑戦しているし、ギルドが参加を認めれば銀級アルジョンでも入場可能なのは周知の事実だ。

「メッセンジャー飛ばしましょうか? グランツェさんとの遣り取りなら出来る……」

 ウェストポーチの中を探ると、残念なことにグランツェさんとのメッセンジャーは入っていなかった。向こうに行きっ放しのようだ。これだから行き来する連絡方法は困る……と思っていたら。

「あ、ヒユナさんとのがあった」
「えっ。ヒユナとのがあるのか? なんで?」
「――」

 近い。
 ドーガさんが驚いた顔を近づけて来て、びっくりする。

「そりゃヒユナさんと師匠と、持ってますよ。僧侶同士で相談が必要なこともありますし」
「あ……そっか」

 納得したような、でも困惑するような……よく判らない顔付で退いたドーガさんに、周りの皆は微妙な顔。なんなの一体。

「……あ。ヒユナさん可愛いですけど、俺は主神様一筋ですよ?」
「え」
「ぶはっ」

 ウーガさんが吹き出す。

「そっちじゃないし!」
「へ?」
「もうその話はいいから、レンはヒユナに聞いてくれ。グランツェパーティはどこまで進んでるかって」
「あ、はい」
「セルリーさんはいつからなら時間取れるんだ?」
「そうね……5日くらいもらえれば「花火」の開発は他のメンバーに任せられるようになると思うわ」
「じゃあ若干の余裕と準備期間を入れて7日後から、どうだ?」
「うん、それくらいが妥当かな」

 ヒユナさんへのメッセンジャーを送っている間にもどんどん話は進み、7日後から「セーズ」に挑むことが決まった。金級オーァルより上のダンジョンは国の財産という面が強く、しかも今回挑む「セーズ」はいまだ攻略者がいない未踏破ダンジョンだ。
 いつから、誰がリーダーのパーティで、何人で入場するのか。
 初回はいつ帰還予定なのか。
 それを事前に最寄りの冒険者ギルドに申請しなければならない。
「セーズ」の最寄りはもちろんここ、トゥルヌソルだ。

「申請は俺がして来るが、当日……いや、五日以内に各自ギルドで申告するように」

 パーティリーダーの独断ではないよ、という証明も兼ねてパーティメンバーがそれぞれ自分で申告するのもルールの一つ。
 もちろん各々が了解した。

「あ、でもグランツェパーティと一緒に行くことになったら結局は金級オーァルの威を借りただけだと思われる?」
「どうだろうな。言わせたい奴には言わせておけばいいと思うが」

 ウーガさんとバルドルさんの言い合いに周りの皆が頷いてる。
 あれこれ言われるより仲間に迷惑を掛けないことが優先だ。

「とりあえず俺はいつも通りに食材の下拵えをして、ダンジョン攻略中でも食事を楽しんでもらえるように準備しますね」
「手伝うよ」
「俺もー」
「ありがとうございます!」
「じゃあ俺らは食材の買い出しを手伝うか」
「おう」

 そうして次々と予定を決めている最中、ヒユナさんからのメッセンジャーが窓から飛び込んできた。
 俺の腕に止まって、再生。
 ヒユナさんの柔らかな声が聞こえて来る。

『連絡ありがとう。グランツェさんに聞いたら、ギルドからの指名依頼が来ているからすぐには合流できないのだけど、お邪魔じゃなければ、私だけ連れて行ってもらうことは出来るかな?』

 再生が終わって、しばらく誰も何も言わなかったのはヒユナから送られて来たメッセージの中身を飲み込むの時間が掛かったからだ。

「そういえば指名依頼があるって帰って来た日に言われてたな」とエニスさん。
「結局グランツェパーティは何階層まで到達してんだ?」とバルドルさん。
「指名依頼が来てるのにヒユナさんがこっちに合流するってことかな」とクルトさん。
「! ヒユナが合流するのかっ」と急に顔色が輝いたドーガさん。

 ん?
 あ、もしかして。

「ドーガさんってヒユナさんが好きなんですか?」

 思わず声に出ていた。
 しまったと気付いた時には後の祭り。顔を真っ赤にしたドーガさんと大笑いし始めたウーガさんがケンカっぽくなってしまうのはそれからすぐの事だった。
 ごめんなさい。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新! Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。

ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。 異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。 二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。 しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。 再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。

異世界で聖男と呼ばれる僕、助けた小さな君は宰相になっていた

k-ing /きんぐ★商業5作品
BL
 病院に勤めている橘湊は夜勤明けに家へ帰ると、傷ついた少年が玄関で倒れていた。  言葉も話せず、身寄りもわからない少年を一時的に保護することにした。  小さく甘えん坊な少年との穏やかな日々は、湊にとってかけがえのない時間となる。  しかし、ある日突然、少年は「ありがとう」とだけ告げて異世界へ帰ってしまう。  湊の生活は以前のような日に戻った。  一カ月後に少年は再び湊の前に現れた。  ただ、明らかに成長スピードが早い。  どうやら違う世界から来ているようで、時間軸が異なっているらしい。  弟のように可愛がっていたのに、急に成長する少年に戸惑う湊。  お互いに少しずつ気持ちに気づいた途端、少年は遊びに来なくなってしまう。  あの時、気持ちだけでも伝えれば良かった。  後悔した湊は彼が口ずさむ不思議な呪文を口にする。  気づけば少年の住む異世界に来ていた。  二つの世界を越えた、純情な淡い両片思いの恋物語。  序盤は幼い宰相との現実世界での物語、その後異世界への物語と話は続いていきます。

時の情景

琉斗六
BL
◎あらすじ 中学教師・榎戸時臣は聖女召喚の巻き添えで異世界へ。政治の都合で追放、辺境で教える日々。そこへ元教え子の聖騎士テオ(超絶美青年)が再会&保護宣言。王子の黒い思惑も動き出す。 ◎その他 この物語は、複数のサイトに投稿しています。

【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。

N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間 ファンタジーしてます。 攻めが出てくるのは中盤から。 結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。 表紙絵 ⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101) 挿絵『0 琥』 ⇨からさね 様 X (@karasane03) 挿絵『34 森』 ⇨くすなし 様 X(@cuth_masi) ◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中

大嫌いなこの世界で

十時(如月皐)
BL
嫌いなもの。豪華な調度品、山のような美食、惜しげなく晒される媚態……そして、縋り甘えるしかできない弱さ。 豊かな国、ディーディアの王宮で働く凪は笑顔を見せることのない冷たい男だと言われていた。 昔は豊かな暮らしをしていて、傅かれる立場から傅く立場になったのが不満なのだろう、とか、 母親が王の寵妃となり、生まれた娘は王女として暮らしているのに、自分は使用人であるのが我慢ならないのだろうと人々は噂する。 そんな中、凪はひとつの事件に巻き込まれて……。

処理中です...