【本編完結】乙女ゲームだろうが推しメンには俺の嫁になってもらいます!

柚鷹けせら

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26 「勝つぞ」

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 一度目のキス。
 ぎゅっと目を瞑ったユージィンがあまりにも愛しくて、二度目のキス。

「……イヤだった?」
「……ぁ……わか……ない……」

 真っ赤になって判らないなんて言われると「もっとして」って聞こえるから困る。
 そんなつもりがないのは判っているのに、やっと触れられた事に興奮してる。
 湧き上がってくる衝動を宥めるのは容易じゃない。

「んっ……」

 唇で、ユージィンの下唇を食む。
 舐める。
 都度に耳を震わす甘い声は、いくら何でも刺激が強過ぎた。

「ユージィン……抵抗してくれないと、俺、やばい」
「っ……」
「止めろって言って。……言われないと、俺……」

 声が掠れる。
 熱が籠る。

「リント……っ」

 震えた声で名を呼ばれて見上げた瞳に、欲を見た。
 拒否も肯定も出来ないのが理性なら、隠しようのない色香は本能のーー。

 ドオオォォォンッ!!

「「!!」」

 唐突な爆発音に俺達はハッとして正気に返る。
 一瞬前の自分を振り返って互いに真っ赤になるが、俄かに騒がしくなってくる外の様子は只事ではない。

「……ユージィン、立てるか?」
「立てる、が……少し時間が欲しい……」

 うん、解る。
 顔も熱いが、その、な。
 うん。

 外の様子を伺うように意識を散らせば、少しずつでも確実に落ち着いてくる。

「魔の一族が洞窟から出て来たって感じだな」
「ああ……、そうだ。リントが意識を失くしている間に隣国の騎士団が到着していた。嫌味も言われたらしいが『六花の戦士』への協力は惜しまないそうだ」
「それは良かった」

 更に聞けば、あの濡れ光りした黒いうねうねとは既に複数回の交戦があったらしい。
 その被害は現時点でほぼゼロだ。

「……『試練の洞窟』攻略しよう」
「もちろん」

 応じ、立ち上がるユージィンの手を取る。

「勝つぞ」
「ああ」

 全部終わったら、その時こそ。
 俺に不安はもうなかった。


 ***

「ワーグマン様!」

 呼び掛けて駆け寄ると、王弟殿下は少しだけ意外そうな顔で迎えてくれた。

「いいのか?」
「あれ以上二人でいたらやばいです」
「なるほど、では魔の一族も良い仕事をしたと褒めてやらねばな」
「是非」
「そういう話は私のいないところでして下さい……っ」

 俺と王弟殿下の遣り取りに居た堪れない顔をしているユージィン。
 三人で固まっていれば周囲も気付いたのだろう、ルークレアとアメリアが騎士達に促されて合流し、ニコラスは洞窟入口付近にいると知らされる。

「私達が二十五階層に居た時に、更に下の方で感じた敵性反応と同じです」
「つまり五時間ほど掛けて上って来ているというわけか……」
「うねうねの方が約八時間と計算されているわ、敵側の進行速度も上がってきているのでしょうね」
「いま二十五階層に飛んで、目の前に大きいのが現れたりしたら厄介だな。——まぁ、行かないという選択肢は最初からないんだが」
「詳細不明の敵が相手である以上、怖気づいたら世界が終わるだけです、行きましょう」
「ああ」

 足早に魔の一族との戦場と化した雪原を抜ける間、四方八方から投げ掛けられる激励の声。
 軍旗の異なる範囲が隣国から派遣された騎士団なのだろうが、其方からも声が上がる。

「六人揃ったら挨拶をと言っていたんだがな。とりあえず私一人で済ませてあるから気にしないでいい」とは王弟殿下の言である。

「ニコラス!」
「お、行くか」

 良い笑顔で話しの早いマッスル・キング。

「行ってらっしゃいませ!」
「お気を付けて!」

 騎士達の見送りを受けながら、俺達は帰還玉を使って二十五階層へ。
 そして、更にその下へ。
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