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第6章 後藤茉莉編
第1話 僕も死体だったんですか?
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みぃんみぃんと鳴くセミが夏の暑さを必要以上に知らしめてくる。
僕の隣には後藤さん(代表)がいる。後藤さんは不発弾事故でバラバラになった六人分の体を集めて作られている。六人分の脳みそも集められているらしく、記憶や人格も六人分持っている。ただし、顔は後藤茉莉さんなので、便宜上生き残ったのはマリさん一人で、残りの五人は死亡扱いになっている。
「セミと言えばさ、思い出さない? 子供の頃よくセミ取りに行ったよね」
後藤さんは目を瞑り、一呼吸置いてからまた目を開けた。
「セミが怖いあたしの顔に幾太君セミを近づけてくるし。脚の関節がギシギシ動くのホントに怖かったんだから」
表に出てきたのは僕の幼馴染の宮田絵里ちゃん。
「でも、その割に、セミの抜け殻は大丈夫なんだ」
「抜け殻は動かないしね。いっぱい集めたなぁ。今思うと気持ち悪いけど」
「あの時の神社もいっぱいセミが鳴いてたよね」
「ホント、ミーンミーンってどっからあんな大きな音が出てるのかしら」
「ねぇ、今からセミ取りに行こうか?」
「嫌よ、子供じゃないんだし。触りたくもない。……でも、一緒に散歩するくらいなら」
「オーケー。じゃあ準備ができたら出発だ!」
準備と言っても僕の方は特に何もしない。エリちゃんの方は着替えたりとして出てくるのが遅かった。
ワンピースにつば広帽、いかにも夏という感じで現れたエリちゃん。
「とりあえず裏山の方に行ってみようか」
「うん」
寮と学校の裏側は小高い丘になっている。生い茂る木々の葉っぱが強い日差しを和らげる。時折吹く風が心地いい。
「寮の中に居るより涼しいね」
林の中を奥へと進むと鉄柵が出てきた。立ち入り禁止と書いてある。鉄柵沿いに少し歩いてみたらどうやらこの辺りの一画を覆っているようだ。しばらくすると、門が出てきた。鍵がかけられている。
「おーい」
敷地の中から僕らを呼ぶ声が聞こえる。保健の中野先生だ。
「カメラが人影を見つけてね。君らだったんで声をかけたんだ。さぁ入っておいで」
中野先生が門を開け、敷地の中へと誘った。
「どうする?」
「特にすることなかったから行ってみましょっか?」
僕らは中野先生について行った。
敷地の中には古い建物があった。
「旧陸軍の施設さ。入り口は今ではほとんど使ってないけどね」
建物の中に入り、地下へと降りる。外見に比べて中の施設は新しい感じだ。
どんどん奥へと進み、ある部屋の前に来ると、エリちゃんが「あ、ここ……」と言った。
「どうしたの、エリちゃん?」
「あたし来たことある。不発弾事故の時の」
「そう、後藤君を手術した部屋さ。
あの日、六体の遺体の部位を集めてここへ運んで繋ぎ合わせたのさ。
両手両足、胴体に頭。全部いっぺんに運ぶのは大変だったけどね」
「じゃあ、ここが陸軍の研究所……」
「そう。あっちの施設は病院で、離れたところに作られた部屋さ。ちなみにこの上は神達学園が建っている。今使っている出入り口も保健室にあるのさ」
「じゃ、じゃあ、学校に内緒で?」
「いやいや私にそんなチカラは無いよ。このことは神達学園理事長の井場譲司も知っていることだよ。もっと言えば、日本国の政府も絡んでいるけどね」
「そ、そんなこと僕らに話して大丈夫なんですか? ま、まさか、僕らを消そうとしているとか……」
「いやいやそんなことしないよ。むしろ私は君らを助けたいと思っている人間だよ。いい実験材料としてだけどね」
「えっ!?」
「ああ、悪かった、言葉を選ばないとな。
この施設で研究しているのは死体を使った蘇生人間さ。ご想像通り軍事目的のだけどね。
死体の使えそうな部位を集めて再利用するという。言わばリサイクル兵士さ。
今回、六体の死体が転がっていたから蘇生実験にちょうどいいと思ってね。あ、君の死体も含めると七体か」
「えっ、僕が死体……」
僕の鼓動が不規則なリズムで高鳴った。
「ま、厳密に言ったら君の場合は心臓が止まっていただけで、心臓マッサージしたらすぐに蘇生したんだけどね。
後藤君達の死体も使えそうなところがちょうど一人分あったからね。急いで繋いで蘇生させて。
他にもパーツ取りに使えそうな死体がないか探してたらいい左腕が転がっていてね」
中野先生は左腕を上げて、手首を回転させてみた。
「ま、まさか、エリちゃんを兵士にする気ですか?」
「いやいや後藤君への実験は体を繋げたことで終了だよ。あとは普通の生活が送れるか経過観測だけ。これから定期的に様子を見せてくれるだけでいいよ」
「本当ですか。ならよかった」
「でも、これからの実験材料にしたいのは君、入江幾太君だよ」
「えっ!?」
僕の鼓動は激しさを増し、動悸となって胸を苦しめる。
「見たところ、君、心臓が弱いよね? 自覚症状もあるんじゃないか?」
「自覚……症状……って」
「動機や不整脈、意識を失ったりとか」
「うっ……」
胸が苦しくなり、僕は意識をなくした。
僕の隣には後藤さん(代表)がいる。後藤さんは不発弾事故でバラバラになった六人分の体を集めて作られている。六人分の脳みそも集められているらしく、記憶や人格も六人分持っている。ただし、顔は後藤茉莉さんなので、便宜上生き残ったのはマリさん一人で、残りの五人は死亡扱いになっている。
「セミと言えばさ、思い出さない? 子供の頃よくセミ取りに行ったよね」
後藤さんは目を瞑り、一呼吸置いてからまた目を開けた。
「セミが怖いあたしの顔に幾太君セミを近づけてくるし。脚の関節がギシギシ動くのホントに怖かったんだから」
表に出てきたのは僕の幼馴染の宮田絵里ちゃん。
「でも、その割に、セミの抜け殻は大丈夫なんだ」
「抜け殻は動かないしね。いっぱい集めたなぁ。今思うと気持ち悪いけど」
「あの時の神社もいっぱいセミが鳴いてたよね」
「ホント、ミーンミーンってどっからあんな大きな音が出てるのかしら」
「ねぇ、今からセミ取りに行こうか?」
「嫌よ、子供じゃないんだし。触りたくもない。……でも、一緒に散歩するくらいなら」
「オーケー。じゃあ準備ができたら出発だ!」
準備と言っても僕の方は特に何もしない。エリちゃんの方は着替えたりとして出てくるのが遅かった。
ワンピースにつば広帽、いかにも夏という感じで現れたエリちゃん。
「とりあえず裏山の方に行ってみようか」
「うん」
寮と学校の裏側は小高い丘になっている。生い茂る木々の葉っぱが強い日差しを和らげる。時折吹く風が心地いい。
「寮の中に居るより涼しいね」
林の中を奥へと進むと鉄柵が出てきた。立ち入り禁止と書いてある。鉄柵沿いに少し歩いてみたらどうやらこの辺りの一画を覆っているようだ。しばらくすると、門が出てきた。鍵がかけられている。
「おーい」
敷地の中から僕らを呼ぶ声が聞こえる。保健の中野先生だ。
「カメラが人影を見つけてね。君らだったんで声をかけたんだ。さぁ入っておいで」
中野先生が門を開け、敷地の中へと誘った。
「どうする?」
「特にすることなかったから行ってみましょっか?」
僕らは中野先生について行った。
敷地の中には古い建物があった。
「旧陸軍の施設さ。入り口は今ではほとんど使ってないけどね」
建物の中に入り、地下へと降りる。外見に比べて中の施設は新しい感じだ。
どんどん奥へと進み、ある部屋の前に来ると、エリちゃんが「あ、ここ……」と言った。
「どうしたの、エリちゃん?」
「あたし来たことある。不発弾事故の時の」
「そう、後藤君を手術した部屋さ。
あの日、六体の遺体の部位を集めてここへ運んで繋ぎ合わせたのさ。
両手両足、胴体に頭。全部いっぺんに運ぶのは大変だったけどね」
「じゃあ、ここが陸軍の研究所……」
「そう。あっちの施設は病院で、離れたところに作られた部屋さ。ちなみにこの上は神達学園が建っている。今使っている出入り口も保健室にあるのさ」
「じゃ、じゃあ、学校に内緒で?」
「いやいや私にそんなチカラは無いよ。このことは神達学園理事長の井場譲司も知っていることだよ。もっと言えば、日本国の政府も絡んでいるけどね」
「そ、そんなこと僕らに話して大丈夫なんですか? ま、まさか、僕らを消そうとしているとか……」
「いやいやそんなことしないよ。むしろ私は君らを助けたいと思っている人間だよ。いい実験材料としてだけどね」
「えっ!?」
「ああ、悪かった、言葉を選ばないとな。
この施設で研究しているのは死体を使った蘇生人間さ。ご想像通り軍事目的のだけどね。
死体の使えそうな部位を集めて再利用するという。言わばリサイクル兵士さ。
今回、六体の死体が転がっていたから蘇生実験にちょうどいいと思ってね。あ、君の死体も含めると七体か」
「えっ、僕が死体……」
僕の鼓動が不規則なリズムで高鳴った。
「ま、厳密に言ったら君の場合は心臓が止まっていただけで、心臓マッサージしたらすぐに蘇生したんだけどね。
後藤君達の死体も使えそうなところがちょうど一人分あったからね。急いで繋いで蘇生させて。
他にもパーツ取りに使えそうな死体がないか探してたらいい左腕が転がっていてね」
中野先生は左腕を上げて、手首を回転させてみた。
「ま、まさか、エリちゃんを兵士にする気ですか?」
「いやいや後藤君への実験は体を繋げたことで終了だよ。あとは普通の生活が送れるか経過観測だけ。これから定期的に様子を見せてくれるだけでいいよ」
「本当ですか。ならよかった」
「でも、これからの実験材料にしたいのは君、入江幾太君だよ」
「えっ!?」
僕の鼓動は激しさを増し、動悸となって胸を苦しめる。
「見たところ、君、心臓が弱いよね? 自覚症状もあるんじゃないか?」
「自覚……症状……って」
「動機や不整脈、意識を失ったりとか」
「うっ……」
胸が苦しくなり、僕は意識をなくした。
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