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スクナビコナとネズミ馬①―新たなる冒険!“悪事を働くものたち”はいずこ?―
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「…あーあ、…まーた暇になっちゃったな……」
『…そうだね……』
スクナビコナとチュルヒコは家の床でゴロゴロと寝転がりながらぼやく。
アマノジャクたちを〝家〟から追い出してからほぼ一月、新しい家での生活にも慣れると、またしてもやることがなくなってしまった。
「…またアマノジャクたちが現れてくれないかな……?」
スクナビコナは冗談交じりにつぶやく。
「…もしあいつらが悪事でも働いてくれたら、僕たちも暇じゃいられなくなるんだろうけど……」
『…たぶんアマノジャクたちは当分僕たちの前には出てこられないんじゃないかな?何しろ以前にあれだけ懲らしめたわけだから……』
「…そうだよな……」
チュルヒコの言葉にスクナビコナも納得する。そして無言で立ち上がり、あるツボの上に器用に登ると、水が入っているとツボの底からワカメヒコを取り出す。
「…なあ、ワカメヒコ。それにウスヒコも……」
そうしてスクナビコナはワカメヒコと、すぐそばに置いてあるウスヒコに話しかける。
「…お前たちは毎日ここでずーっと何をするでもなくじっとしていて退屈じゃないのか?」
『…このウスヒコ、ここでの日常が退屈かどうかなどということは考えたことすらない!』
ウスヒコはスクナビコナの疑問に対して、きっぱりと断言する。
「なんでだよ?毎日ここでじっとしてても退屈極まりないと思うんだけど……?」
『確かにこのウスヒコは臼として生まれたがゆえに、餅をつくときぐらいしか〝活動〟することができない。しかしそれは臼として生まれたが故の宿命というものだ。その宿命を甘んじて受け入れるのみだ!』
ウスヒコはスクナビコナの言葉に対しても、一切揺らぐことなく言い切る。
「…そういうものかな……?」
ウスヒコの答えにスクナビコナは首をひねりながら言う。
『そういうものだ!これはウスヒコの信念だ!この信念はこのウスヒコの中で決してぶれることはないのだ!』
ウスヒコは自分の信念の強固さを強調する。
「…そうか、…じゃあ、ワカメヒコ。お前はどうなんだ?」
スクナビコナは両手に持っているワカメヒコに尋ねる。
『…僕は、…退屈じゃないよ……』
ワカメヒコは蚊の鳴くような小さな声で言う。
「なんで?毎日水の中で漂っているだけなのに?」
『僕にとっては水の中でただひたすら漂っていることはもう当たり前のことになっているんだ。だからそんなことに疑問を持ったりはしない』
「そんなの退屈だとは思わないのか?」
『うん、僕にとっては毎日水の中に漂い、何もせず考え続けることはもはや僕の一生そのものなんだ。でも今となってはむしろ動き回らず、何もせずに生きてきてよかったんじゃないか、とも思ってるんだ』
「何もしなくてよかった?なんで?」
スクナビコナはワカメヒコの言わんとすることの意味がわからず、尋ねる。
『それはね、じっとしていることで、動き回っていたら得られないものが結果的に得られたと思っているからなんだ。…ごめんね、僕は言葉で説明するのがうまくないから意味がちゃんと伝わらないかもしれないんだけど……』
ワカメヒコはスクナビコナに申し訳なさそうに謝る。
「…動き回らずにじっとしていることで得られるものか……」
スクナビコナは少しの間、下を向いて考え込む。
「…うーん、…正直わからないな……」
『…ごめんね、スクナ。僕がちゃんと話せないから……』
ワカメヒコはスクナビコナに再び謝罪する。
「いや、いいんだ、ワカメヒコ。お前は何も悪くないよ。たぶんお前の言いたいことはすぐにわかるような類の話じゃないだけだ。うん」
そう言うと、スクナビコナはワカメヒコを元いたツボの中にほうり投げる。ワカメヒコはチャプンという音とともに、水底へと沈んでいく。そしてスクナビコナはツボの上から床に飛び降りる。
「…チュルヒコ、やっぱり僕はじっとしているよりも、動き回っているほうが性に合っているみたいだ」
スクナビコナはチュルヒコのほうを見ながら言う。
『…ふふっ、そう言うと思ったよ。僕もそっちのほうがスクナに合ってると思う』
「よしっ、クエビコ様のところに行こうぜ!ひょっとしたらアマノジャクたちのこと以外にも、この辺りにまた何か問題が起こってるかもしれないしな!」
『うん!』
こうして、結局スクナビコナはチュルヒコとともに、クエビコの元へと向かうのだった。
「クエビコ様、また来たよ!」
『おお、おぬしたちか!』
「うん、またこの辺りに何か問題がないか、教えてほしいんだ」
『うむ、すぐに調べてしんぜよう。アアアアアアアアアアーッ!』
クエビコはこれまでと同様に激しく体を揺らしながらうなる。
『ムウウウウウウウウウーッ!…出たあっ!』
クエビコは大声で叫ぶ。
「…何かあるの?」
『…うむ、この辺りに悪事を働く者たちがおる』
「どの辺りにいるの?」
『ここからネズミの穴がある山を越えた、もう一つ先の山におる』
「アマノジャクたちじゃないの?」
『違う。あの者たちよりも強力な力を持つものたちじゃ』
『エエエッ、そうなの!…大丈夫かなあ……?』
クエビコの言葉を聞いて、チュルヒコは一気に弱気になる。
「ふん、チュルヒコ!何弱気になってんだよ!」
スクナビコナのほうは自信に満ちた調子で言う。
『…相変わらず楽観的なんだな、スクナは……』
チュルヒコはそんなスクナビコナに呆れ気味に言う。
「ハハッ、どんなやつらが出てこようとも僕が負けるわけないだろ!」
『これこれ、スクナよ。己の力を過信するなよ。過信は油断に繋がるぞ』
クエビコはスクナビコナをたしなめる。
「へへっ、わかってるって。さあ、チュルヒコ、さっそく山に向かうとしようぜ!」
『…う、うん。…なんかいやな予感がする……』
こうしてスクナビコナとチュルヒコは〝悪事を働くものたち〟がいるという山へ向かって歩き出すのだった。
『…そうだね……』
スクナビコナとチュルヒコは家の床でゴロゴロと寝転がりながらぼやく。
アマノジャクたちを〝家〟から追い出してからほぼ一月、新しい家での生活にも慣れると、またしてもやることがなくなってしまった。
「…またアマノジャクたちが現れてくれないかな……?」
スクナビコナは冗談交じりにつぶやく。
「…もしあいつらが悪事でも働いてくれたら、僕たちも暇じゃいられなくなるんだろうけど……」
『…たぶんアマノジャクたちは当分僕たちの前には出てこられないんじゃないかな?何しろ以前にあれだけ懲らしめたわけだから……』
「…そうだよな……」
チュルヒコの言葉にスクナビコナも納得する。そして無言で立ち上がり、あるツボの上に器用に登ると、水が入っているとツボの底からワカメヒコを取り出す。
「…なあ、ワカメヒコ。それにウスヒコも……」
そうしてスクナビコナはワカメヒコと、すぐそばに置いてあるウスヒコに話しかける。
「…お前たちは毎日ここでずーっと何をするでもなくじっとしていて退屈じゃないのか?」
『…このウスヒコ、ここでの日常が退屈かどうかなどということは考えたことすらない!』
ウスヒコはスクナビコナの疑問に対して、きっぱりと断言する。
「なんでだよ?毎日ここでじっとしてても退屈極まりないと思うんだけど……?」
『確かにこのウスヒコは臼として生まれたがゆえに、餅をつくときぐらいしか〝活動〟することができない。しかしそれは臼として生まれたが故の宿命というものだ。その宿命を甘んじて受け入れるのみだ!』
ウスヒコはスクナビコナの言葉に対しても、一切揺らぐことなく言い切る。
「…そういうものかな……?」
ウスヒコの答えにスクナビコナは首をひねりながら言う。
『そういうものだ!これはウスヒコの信念だ!この信念はこのウスヒコの中で決してぶれることはないのだ!』
ウスヒコは自分の信念の強固さを強調する。
「…そうか、…じゃあ、ワカメヒコ。お前はどうなんだ?」
スクナビコナは両手に持っているワカメヒコに尋ねる。
『…僕は、…退屈じゃないよ……』
ワカメヒコは蚊の鳴くような小さな声で言う。
「なんで?毎日水の中で漂っているだけなのに?」
『僕にとっては水の中でただひたすら漂っていることはもう当たり前のことになっているんだ。だからそんなことに疑問を持ったりはしない』
「そんなの退屈だとは思わないのか?」
『うん、僕にとっては毎日水の中に漂い、何もせず考え続けることはもはや僕の一生そのものなんだ。でも今となってはむしろ動き回らず、何もせずに生きてきてよかったんじゃないか、とも思ってるんだ』
「何もしなくてよかった?なんで?」
スクナビコナはワカメヒコの言わんとすることの意味がわからず、尋ねる。
『それはね、じっとしていることで、動き回っていたら得られないものが結果的に得られたと思っているからなんだ。…ごめんね、僕は言葉で説明するのがうまくないから意味がちゃんと伝わらないかもしれないんだけど……』
ワカメヒコはスクナビコナに申し訳なさそうに謝る。
「…動き回らずにじっとしていることで得られるものか……」
スクナビコナは少しの間、下を向いて考え込む。
「…うーん、…正直わからないな……」
『…ごめんね、スクナ。僕がちゃんと話せないから……』
ワカメヒコはスクナビコナに再び謝罪する。
「いや、いいんだ、ワカメヒコ。お前は何も悪くないよ。たぶんお前の言いたいことはすぐにわかるような類の話じゃないだけだ。うん」
そう言うと、スクナビコナはワカメヒコを元いたツボの中にほうり投げる。ワカメヒコはチャプンという音とともに、水底へと沈んでいく。そしてスクナビコナはツボの上から床に飛び降りる。
「…チュルヒコ、やっぱり僕はじっとしているよりも、動き回っているほうが性に合っているみたいだ」
スクナビコナはチュルヒコのほうを見ながら言う。
『…ふふっ、そう言うと思ったよ。僕もそっちのほうがスクナに合ってると思う』
「よしっ、クエビコ様のところに行こうぜ!ひょっとしたらアマノジャクたちのこと以外にも、この辺りにまた何か問題が起こってるかもしれないしな!」
『うん!』
こうして、結局スクナビコナはチュルヒコとともに、クエビコの元へと向かうのだった。
「クエビコ様、また来たよ!」
『おお、おぬしたちか!』
「うん、またこの辺りに何か問題がないか、教えてほしいんだ」
『うむ、すぐに調べてしんぜよう。アアアアアアアアアアーッ!』
クエビコはこれまでと同様に激しく体を揺らしながらうなる。
『ムウウウウウウウウウーッ!…出たあっ!』
クエビコは大声で叫ぶ。
「…何かあるの?」
『…うむ、この辺りに悪事を働く者たちがおる』
「どの辺りにいるの?」
『ここからネズミの穴がある山を越えた、もう一つ先の山におる』
「アマノジャクたちじゃないの?」
『違う。あの者たちよりも強力な力を持つものたちじゃ』
『エエエッ、そうなの!…大丈夫かなあ……?』
クエビコの言葉を聞いて、チュルヒコは一気に弱気になる。
「ふん、チュルヒコ!何弱気になってんだよ!」
スクナビコナのほうは自信に満ちた調子で言う。
『…相変わらず楽観的なんだな、スクナは……』
チュルヒコはそんなスクナビコナに呆れ気味に言う。
「ハハッ、どんなやつらが出てこようとも僕が負けるわけないだろ!」
『これこれ、スクナよ。己の力を過信するなよ。過信は油断に繋がるぞ』
クエビコはスクナビコナをたしなめる。
「へへっ、わかってるって。さあ、チュルヒコ、さっそく山に向かうとしようぜ!」
『…う、うん。…なんかいやな予感がする……』
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