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男は俺を連れて部屋の隅々を調べていた。俺が部屋から出ると二つのことに驚いた。
まず一つ、俺が監禁されていた場所は屋敷の離れに建てられた石造りのホントにただ部屋を作ったという感じで雨漏りの原因がよくわかる。それに四角い形のそれは老朽化やコケや何かのツタが全体を覆いこの空間の中では異質なものを放っていた。
もう一つは、この古い建物のすぐ近くに大きな塀で囲われた屋敷が立っていたのだ。男がおれの前に手を伸ばし進行を阻んだ。
「一応周辺の奴らは殺したが屋敷の中にまだ残党がいるかもしれない、絶対に近くにいてくれ」
先ほどよりも険しい顔をしていた。腰にぶら下げた剣を強く握り男は俺のペースに合わせて走ってくれていた。
屋敷の門は無尽蔵に開かれており、屋敷の中から異質な空気を発したいた。大丈夫なのか心配になり男の顔を見ると、なぜか男は口を開けたまま止まっていた。動く事も無く一点を集中して見ていた。男の視線の方向に目を向けると女が一人と大柄の男が一人、それと数人の青い鎧を身にまとった兵士達が剣を持ち戦っていたのだ。門の先は屋敷の玄関まで一本道で玄関と門との丁度中間あたりに噴水が水を出し道が円を描いていた。道の横には庭師が丁寧に作業したであろう草花が客人や主人を迎えるようになっているが。彼らはそんな庭師の努力など無視し音を鳴らし踏みつけ戦っていた。
男は悩んでいた。端から見てもよく分かる。少なくとも大柄の男と女は俺たちの敵ではないにしろ、どうなるか分かったものじゃない。
「いいか坊主……」
声をかけた瞬間、何かを感じたのか続く言葉を飲み込んでしまった。俺のせいでこの人に迷惑がかかる。元々俺は死んだような人間、この先の人生などどうにでもなるような気がする。男の裾を引っ張り顔を振り向かせる。
「俺は大丈夫です、行ってください」
すぐに視線を外され、戦いの行方を見送っていた。それからいくつか時が経つと兵士の最後の一人が倒れ、女は剣を納めるとこちらに向き両手を腰に置くと。
「なにやつぅぅぅぅぅぅぅぅっぅぅぅぅ」
森全体に響き渡り声が響いた瞬間木に止まっていた鳥が飛び立ってしまうほどだった。
小声で「俺が出る、お前は隠れておけ」と言われ胸を押され男はのこのこと出て行ってしまった。急いで何処かに隠れられるように周りを見渡す。茂みなどない。隠れられるといったら先ほど出てきた気味の悪い建物だけだった。あそこに戻るなど死んでも嫌だった。だが逃げられる場所も無い、なら見つからないようこの場から走り出すだけ。
思い立ったらすぐに走り出していた。屋敷とは反対方向に向かって全力疾走していた。後ろから誰かがなど考えていられない今はどうにかするべく何も考えずがむしゃらに走るだけ。
どれぐらい走ったか、屋敷が見えなくなるのを確認すると近くに生えていた木に背中を預けて小休憩する。呼吸の整わない中必死に息を殺し息を吐き、そして吸う。
「――お前から女の匂いがする、かいだ事のある匂いだ」
いつの間にか横に短髪のあまり歳の変わらない男が俺の服の匂いを嗅いでなにやら懐かしむように嗅いでいた。
不意に現れたため何も行動できず「うわぁ」と声を上げるだけだった。
「警戒しなくていいよ、俺の目標は女だけだから……でも知ってることがあるなら教えろ、じゃないと殺す」
目を見つめたまま無言のさっきを体全身から発し、全身の毛が逆立ち男に恐怖していた。
「クンクンクン」
恐怖し黙っているとまた男は服の匂いを嗅いでいた。ズボンも嗅ぎ始めると立ち上がり男の顔はなにやら思い出したように辺りを見渡していた。
「お前ペトスという女と会ったのか?」
「あ、あぁ」
正気の無い返事を返すと「そ、そうか災難だったな」なにやら事情を察して俺に非難の視線を向け
ると同時に今度は驚いた顔をしていた。なんとも表情がころころ変わる奴だ。
「まさか死んだのか? あいつらの中じゃ強いはずなのにこうしちゃいられない」
そういって獣のように四速歩行で来た道を走って行った。嵐のような奴だった。いやそれどころじゃない、俺が逃げ出さなきゃあいつが迷ったままだったんだ。クソ。
まず一つ、俺が監禁されていた場所は屋敷の離れに建てられた石造りのホントにただ部屋を作ったという感じで雨漏りの原因がよくわかる。それに四角い形のそれは老朽化やコケや何かのツタが全体を覆いこの空間の中では異質なものを放っていた。
もう一つは、この古い建物のすぐ近くに大きな塀で囲われた屋敷が立っていたのだ。男がおれの前に手を伸ばし進行を阻んだ。
「一応周辺の奴らは殺したが屋敷の中にまだ残党がいるかもしれない、絶対に近くにいてくれ」
先ほどよりも険しい顔をしていた。腰にぶら下げた剣を強く握り男は俺のペースに合わせて走ってくれていた。
屋敷の門は無尽蔵に開かれており、屋敷の中から異質な空気を発したいた。大丈夫なのか心配になり男の顔を見ると、なぜか男は口を開けたまま止まっていた。動く事も無く一点を集中して見ていた。男の視線の方向に目を向けると女が一人と大柄の男が一人、それと数人の青い鎧を身にまとった兵士達が剣を持ち戦っていたのだ。門の先は屋敷の玄関まで一本道で玄関と門との丁度中間あたりに噴水が水を出し道が円を描いていた。道の横には庭師が丁寧に作業したであろう草花が客人や主人を迎えるようになっているが。彼らはそんな庭師の努力など無視し音を鳴らし踏みつけ戦っていた。
男は悩んでいた。端から見てもよく分かる。少なくとも大柄の男と女は俺たちの敵ではないにしろ、どうなるか分かったものじゃない。
「いいか坊主……」
声をかけた瞬間、何かを感じたのか続く言葉を飲み込んでしまった。俺のせいでこの人に迷惑がかかる。元々俺は死んだような人間、この先の人生などどうにでもなるような気がする。男の裾を引っ張り顔を振り向かせる。
「俺は大丈夫です、行ってください」
すぐに視線を外され、戦いの行方を見送っていた。それからいくつか時が経つと兵士の最後の一人が倒れ、女は剣を納めるとこちらに向き両手を腰に置くと。
「なにやつぅぅぅぅぅぅぅぅっぅぅぅぅ」
森全体に響き渡り声が響いた瞬間木に止まっていた鳥が飛び立ってしまうほどだった。
小声で「俺が出る、お前は隠れておけ」と言われ胸を押され男はのこのこと出て行ってしまった。急いで何処かに隠れられるように周りを見渡す。茂みなどない。隠れられるといったら先ほど出てきた気味の悪い建物だけだった。あそこに戻るなど死んでも嫌だった。だが逃げられる場所も無い、なら見つからないようこの場から走り出すだけ。
思い立ったらすぐに走り出していた。屋敷とは反対方向に向かって全力疾走していた。後ろから誰かがなど考えていられない今はどうにかするべく何も考えずがむしゃらに走るだけ。
どれぐらい走ったか、屋敷が見えなくなるのを確認すると近くに生えていた木に背中を預けて小休憩する。呼吸の整わない中必死に息を殺し息を吐き、そして吸う。
「――お前から女の匂いがする、かいだ事のある匂いだ」
いつの間にか横に短髪のあまり歳の変わらない男が俺の服の匂いを嗅いでなにやら懐かしむように嗅いでいた。
不意に現れたため何も行動できず「うわぁ」と声を上げるだけだった。
「警戒しなくていいよ、俺の目標は女だけだから……でも知ってることがあるなら教えろ、じゃないと殺す」
目を見つめたまま無言のさっきを体全身から発し、全身の毛が逆立ち男に恐怖していた。
「クンクンクン」
恐怖し黙っているとまた男は服の匂いを嗅いでいた。ズボンも嗅ぎ始めると立ち上がり男の顔はなにやら思い出したように辺りを見渡していた。
「お前ペトスという女と会ったのか?」
「あ、あぁ」
正気の無い返事を返すと「そ、そうか災難だったな」なにやら事情を察して俺に非難の視線を向け
ると同時に今度は驚いた顔をしていた。なんとも表情がころころ変わる奴だ。
「まさか死んだのか? あいつらの中じゃ強いはずなのにこうしちゃいられない」
そういって獣のように四速歩行で来た道を走って行った。嵐のような奴だった。いやそれどころじゃない、俺が逃げ出さなきゃあいつが迷ったままだったんだ。クソ。
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