4 / 6
後編
しおりを挟む家に帰ったボクは家族全員から熱烈に抱きしめられ向かい入れられた。
「怖かったでしょう?もう心配ないからね」と、ベルリアナ姉さまに抱きしめられた時、ボクに意地悪をするベルリアナ姉さまだったけれど、ボクの事を愛してくれているのだと感じたのだ。
あまりにも皆がボクの頭を子供の様に撫でて、赤ちゃんにするみたいにほっぺたにキスするからボクは大声で主張する。
「ボクはもう五歳で、もう一人で眠れるし、もうすぐおじさんになるんだからね!」
って、プンスカ怒ったら皆が一斉にシーンとなって、ボクを潤んだ瞳で眺めた。
「あっ!今、ルルリアナ姉さまが通ったね!」
ボクを抱きしめる腕を少しだけ緩めて、眉間に皺を寄せたベルリアナ姉さまが「何を変なことを言ってるの?」とボクに質問する。
だからボクは「魔女のいとこ」のチャーリーが教えてくれたことを話した。
「ルルリアナ姉さまは雪の華様だから、雪の妖精みたいなものでしょ?だから、さっきルルリアナ姉さまが来たんだよ!」
「馬鹿なことを言わないの」
ベルリアナ姉さまの眉間の皺が深くなったけど、ボクはちっとも気にならなかった。だって、ルルリアナ姉さまは本当にボクの側にいる気がするんだから。
「魔女のいとこにはね、ルルリアナ姉さまにそっくりな髪と瞳の色を持つルルリアナがいるんだよ!」
ボクの言葉に家族が再び一斉に押し黙る。でも、先ほどよりも重たくて、暗くて、息が詰まりそうな沈黙で、ボクはいけないことを言ってしまったのだろうかと心配になる。
「そ、の…ルルリアナという女性はあの肖像画に似ているかい?」
お父さまが震える声でルルリアナ姉さまの名前を呼び、きつく握られた拳をゆっくりと開き、玄関ホールにある階段の踊り場に飾られているルルリアナ姉さまの肖像画を指さす。
絵の中のルルリアナ姉さまは、長くて宝石のような光り輝く銀色の髪を白いバラで飾っていて、黒い総レースのドレスを見に纏っている。頭にはロイヤルブルーの宝石が散りばめられたティアラを載せていた。顔は無表情だけど本当に綺麗だ。
ルルリアナ姉さまは女神様みたいだけど、ルルリアナは優しいお姉さんみたいな人だな。
そう思うと絵の中のルルリアナ姉さまはとても冷酷な人に見えてしまい、「魔女のいとこ」で出会った明るく笑うルルリアナとは全く別人だと感じたのだ。
ボクは大きく首を振る。
「全然、ちっとも似てないよ」
そう聞いたお父さまは泣き崩れるお母さまを支えるように抱きしめる。ベルリアナ姉さま以外の兄弟もまるで希望を失ったみたいに、がっかりとした表情を浮かべている。
「大丈夫だよ、エマリアナ。きっと、雪の華…いや、ルルリアナは元気に暮らしいるよ。案外、「魔女のいとこ」にいたルルリアナみたいにカフェで普通に働いているかもしれないよ」
「えぇ、そうよね。あの子はロクストシティ神様に一番愛された神の愛し仔ですものね。きっと幸せにどこかで暮らしているんだわ」
この時のボクがもう少し詳しくルルリアナについて家族に話していたら良かったと後悔することを、この時のボクは知らなかったんだ。
―❅・―❅・❅― ・❅――❅・―
家に帰ってきた夜、ベッドの外の暗闇が怖くてボクは枕を持ってお父さまとお母さまの寝室を尋ねたのは秘密の話。
お父さまとお母さまの間に挟まれて眠って、ボクは初めて家に帰ってきたんだと実感できた。
目を閉じるボクの上で、お父さまとお母さまはずっとボクを起こさないように小さな声で話していたけれど、ボクはすぐに眠ってしまったので、何を話していたかはわからなかった。
けど、きっとルルリアナ姉さまの話をしていたんだと思う。
だって、お父さまとお母さまの声はとても悲しそうで、何かをすごく後悔しているように感じられたから。
お父さまとお母さまがそんな声で話すときは決まって、ルルリアナ姉さまの話をするときなのだから。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
13
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる