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エピローグ
しおりを挟むロミリアの母親であるソルティキア公爵夫人エマリアナは、ソルティキア公爵である愛する旦那であるギディオンに、ロミリアを起こさないように囁く。
「あぁ、ギディオン…。私はこの子まで失うのはとても耐えられなかったわ」
そっと眠るロミリアの髪を撫でるエミリアの手はとても優しい。
ギディオンもそっとロミリアのもちもちの頬を撫でる。
「雪のh…ルルリアナも幸せに眠れているだろうか」
「少なくともきっと神殿にいたときよりも幸せだわ」
ソルティキア公爵夫人はルルリアナの侍女長をしていたカルロを苦々しく思い浮かべる。
カルロはほぼ一年、ルルリアナの侍女長をしていた意地の悪い女で、ソルティキア公爵家と敵対する勢力の者だったのだ。
それどころか、ルルリアナの歴代の侍女長はソルティキア公爵家の敵対する家々の者たちが務めているのだと最近発覚したのだ。
関わるのがつらすぎるとルルリアナから距離を取ってしまっていたことを、ソルティキア公爵であるギディオンはとても後悔していた。
ルルリアナが暗殺されなかったのが幸いだった。さすがに、絶対神であるロクストシティ神の愛し仔であるルルリアナを殺す勇気はなかったのだろう。
カルロを始めとした侍女長たちは、ルルリアナの生活が冷たく苦しいものになるように仕組んでいたのだ。
そのことを神殿自体が黙認していたことも発覚し、ギディオンはルルリアナがどのような辛く厳しい生活を強いられていたのだろうかと想像すると、ルルリアナを愛する心が悲鳴をあげる。
ソルティキア公爵令嬢であるルルリアナが皇后となり、次世代の王を産む。
ソルティキア公爵家がこれ以上勢力を増すことを恐れ、ルルリアナが小さいころから陰湿な嫌がらせをしていたのだ。
ルルリアナを虐めたからと言ってロクストシティ神様の気が変わるわけがないというのに。
私の娘であるルルリアナは歴代の雪の華の中でも、抜きんでてロクストシティ神様に愛されているのだから。それこそ、そう――。彼女がこの世に生まれる前からずっと。
ルルリアナが逃げ出すように嫌がらせをしていたと話したカルロは、リースという騎士と逃げたルルリアナの事を散々バカにしていた。
婚約者であるレオザルトに愛されなかったルルリアナは、ただの平民にすぎないリースという男と逃げ出したと!
ベルリアナの誕生日にリースという騎士科の生徒は実は女性なのだと知ったのだが。
ルルリアナは私たちに助けを求めなかった。
それは当然だ。私たちはルルリアナから距離を置いていたのだから。
でも、もっときちんとレオザルト皇太子殿下がルルリアナを愛してくれたら…。少なくとも大切にしてくれていたなら。
あの子は逃げ出さず、今も…。
ギディオンは頭を軽く振る。それでも私は、私たちはルルリアナとレオザルト皇太子殿下との結婚を認めなければいけないのだ。
なぜならルルリアナは、絶対神であるロクストシティ様がレオザルト皇太子殿下の花嫁として選んだのだから。
ルルリアナの運命はこの世に誕生したときから、私たちの手を離れていったのだから。
ギディオンは命ともいえるエマリアナを抱きしめ、癒えることのないルルリアナを手放してしまったと後悔し傷つく心を慰める。
この傷を少しでも慰めることができるのは自分たち、二人だけなのだから。
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