不器用な恋の実り方

香野ジャスミン

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「先生、先生!!!」
ハッと我に返る。
俺、没頭していた。
頭と指が痛い。
眼もズキズキといたむ。
窓の外は、夜を超えて朝を迎えていた。
車の走る音からして、それも、朝の挨拶をこんにちわと変えてもいい時間になっている。
「先生?」
俺の後ろには、新庄麗一がいた。
・・・・
「ぎゃ!!!!!」
飛び上がって驚いている。
そう言えば、今日は試作で作った作品の直しをしてもらうんだった。

目の前の物を見る。
―!!!!???
パタンと、パソコンを閉じる。
平常心を貫いてみせる。
「何をそんなに時間を忘れるぐらい書いていたんですか?
 見せてください」
無理です。
絶対に無理。
俺は、思いつく理由を挙げていく。
俺「いや、色々とさ、思い浮かぶんだけど、どれも中途半端で…」
麗「おぉ!!すごいですね。ぜひ、私にも、見せてください」
俺「…あ、あと、ちょっと色々と調べたいなぁって思っている個所を色々と纏めていて…」
麗「わかりました。先生の為なら、どんなことも調べれますよ!」
俺「そう言えば、なんだかお腹がすいてきたな…」
麗「大丈夫です。ベーグルを買ってきました。どうぞ」
俺「…はい。いただきます」

敗北しました。
結果、ベーグルを食べている間に、いつの間にか、パソコンを開いてみていた。
―?!
起動時にロック画面がでるはずなのに、解除してる?
もう、これを食べ終わる頃には、この付き合いも終わりだろうな…
だって、これは、どう見てもジャンルが違う。
世の中の腐の神様が大喜びしそうなものだ。
嫌がらせだな。
自分でもそう思う。
だって、読んでいる登場人物が全部、「麗一」なのだ。
俺は、そう思いながら、もそもそと食べていた。

「…先生…」
新庄の呼ぶ声に、ビクついてしまう。
―!!!!
「は、はい!?」
―あ、やべ。声が裏返った。

―-?
振り返った新庄の様子が何だかおかしい。
顔が赤いし、なんだか、尋常じゃない色気が出てる!!
「先生…はぁ…
 こんな遠回しで言わないでください…
 私、こういう物に弱いんです…」
―?!
あれ?あれれ?あれあれ?
「私で遊ぶなんて最低です。契約はなかったことに…」とか、「ふざけんな!」
が返ってくると思っていた。
けど、事態は思わぬ方向に行っている。

じわじわと麗しい麗一が俺に寄ってくる。
首元のネクタイを長い指で緩める。
その仕草だけで、胸がドキドキとしてしまう。
ハァハァと呼吸を乱し、明らかに発情。いや、興奮だ。
「…新庄さん、すみません。
 ちょっと、間が指したんです!!」
慌てて言葉を繕っても、彼は俺を見下ろすように膝立ちで迫ってくる。
「…間が指した?
 あれが、間が指した時に書く文章ですか?
 違いますよね、違うでしょう!!」
そう言いながら、新庄は、俺にのしかかる。
「うわぁ!」
床で新庄に押し倒されている俺。
何、この状況。
「順番は、色々と違いますけど、大丈夫です。
 先生の想いは、わかりました」
そう言って、俺の首元に新庄は舌を這わす。
―!!!
ぞくりと走る感覚。
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