惹かれた君とこの先に

香野ジャスミン

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「隼人、今日は、ちょっと一歩、大人の階段を上ってみようよ。
 ハイ、これのどれを見てみたい?」
トランプのカードのように見せられているのは、一つ一つ透明のCDケースに入れられているDVD。
大人の階段を上るということは、まぁ、行為とかの事だ。
しかも、DVDと言うのだから、映像だ。
―?
男と女の物は、よく、巷である。
でも、男と男となると、レンタルなどするにも、色々と支障がでてきてしまうので、敷居が高い。
「これって、そういうことをしているヤツ?
 借りたの?」
俺は、どれを選ぼうか、下から見上げたりして違いを見つけようとする。
けれど、どれも違いがなく、これをどんな内容かを篤紀は知っているのだろうかと疑問に感じだ。
「今は、何でもネットで買えるんです!
 あ、ちなみに、この前買った、道具たちの家族だよ」
―?
「一緒に入ってたんだよ?」
嬉しそう?いや、楽しそうだ。

篤紀は、俺がどれを選んでもいいようで、楽しそうだ。

三枚提示されてどれにするか、悩む。
うーん…
「…これ、かな…」
指で選んだ物をチョンチョンと示す。
早速見るようで、
「大きい画面と、小さい画面ならどっち?」
当然、小さい方を選ぶ。
彼は、なぜか、不満気だ。
ちなみに、見分けがつくのかと聞いてみたところ、
「いいや、全くわからないよ。
 でも、俺もざっくりとしか知らないからさ、実際に映像でみるのは、初めてなんだぁ」
人が俺と篤紀を見比べると、必ず俺の方が、そういったシモ系の話をするのに違和感はないというだろう。
篤紀がそんな話をしていると、たぶん、女子は、各々の作り上げた妄想篤紀像を粉々に砕け散らすだろう。

ソファーの上で、なぜか俺は胡坐をかいている篤紀の上に座らされている。
抵抗したけれど、
「はぁ…やっぱり、隼人をこうやって抱きしめるのってすっごく癒される…」
と言われると、抵抗する気力が失せてしまった。
一緒にパソコンでDVDを見る。
マッチョな男の人が、簡単な動機を話していた。
「エッチなことが好きです、できたら一回とかじゃなく、何回もしたいんすけど…
 なかなか、いい出会いがないんっすよ」
そう話しているマッチョの人に、覆面の男たちが下着姿で囲む。

もう、この時点で、変だった。
「…篤紀さん、これって…いわゆるゲイビ?」
俺の問いに今更なにを言っているのかって顔をする篤紀。
「そうだよ、だって、俺も男、隼人も男じゃん」
そうですね、そうですけど‥
画面では、マッチョがカメラの前だというのに、他の人がたくさんいるというのに、身体を覆面達に弄られている。
それをマッチョは、嬉しそうに感じてる…
正直、ビジュアル的に無理だ。
目の前の画面ではただ、嫌悪感を感じるしかなく、勉強どころではない。
でも、篤紀は俺と一緒に見るために選んだDVDだ。
だから、篤紀の想いも色々あるんだと思って、しばらく我慢をしていた。
けれど、気分が悪くなるばかりで、もう直視できなかった。

「…隼人?」
俺は、直視できないことを悟られないように、上の空でただ、眺めていた。
「隼人?」
―!?
篤紀の呼ぶ声で我に返った俺は、後ろの篤紀を見る。
「?え?」
俺を見た篤紀は、大慌て。
「隼人、顔色が!!…もしかして、これ無理だった?」
俺は、気分の悪さで貧血を起こしていた。
「うぅ…ごめん、ビデオってこんなヤツばっかり?」
パソコンを閉じられ、俺は篤紀の方に身体を預けて改善するのを待っていた。
篤紀は、
「あぁ、あれが一番、刺激が強いかな。ハードだと思う。
 縛られたり、あと…あ、なんか飲まされるってかいてあモゴモゴモ」
涼しい顔をした篤紀は、躊躇うこともなく話をする。
当然、俺には刺激的すぎて彼の口を手で抑えてしまった。

篤紀は、俺の手を避け、
「たぶんね、俺と隼人には、こんな勉強なんていらないんだよ」
篤紀の嬉しそうな表情に、俺は、言葉に詰まってしまった。
彼は、自分の考えを話してくれる。
「そりゃ、考えたら大変だってわかるよ。でもね、俺は別に隼人の身体だけが好きなんじゃないからね」
―!
俺も頷き、彼の言葉を受け止めたことを示す。
たしかに、俺たちは、あのビデオに出てきた男の人のようにただ、性欲を満たされればいいんじゃない。
俺は、篤紀の方を見て、
「そうだな。俺も、篤紀の身体だけが目的ではないし…」
篤紀と2人、照れくさいけど手を握る。

結局、篤紀に他の物はどんなものかと聞いてみたら
「うーん…、ひくかも…
 えっと、大人の道具を使って一人エッチしているやつ、あと、今、流行りのBL風だな。
 制服着てるやつかな」
と言う。
制服って…俺は篤紀と違う学校だったから、ちょっと、あの当時は、憧れもあった。
それに、篤紀と、学生から知っている者としては、複雑だ。
そう考えていたら、篤紀が俺をギュッと抱きしめてきた。
「ねぇ、隼人…
 今だから言うけど、俺が隼人にハンカチを渡した時、興奮したんだ」
―!?
俺は篤紀の顔を見ようとした。
けれど、
「…ごめん、このままで聞いて」
俺の耳元に顔を埋める形なっている篤紀の吐息が耳に掛かる。
熱い…
抱きしめる彼の手は、俺の首元を指でなぞってくる。
―なに、このゾクゾクとする感覚。
篤紀は、俺に触れながら、
「一生懸命、頑張って一息ついている時、首元に流れている汗を拭いたんだ。
 俺、すぐ後ろで本を読んでてさ、それが、すごくきれいだったんだ。
 朝の太陽って、電車に乗る時も、そんなに浴びることがないんだよね。
 それなのに、隼人の首に流れる汗は、太陽の光を吸い込むみたいに光ってたんだ」
―?
それだけなら、特に興奮することなんてない。
けれど、彼の話にはまだ続きがあった。
「その汗を、舐めたいって思ったんだ。
 最初は、その程度だったんだ。
 でも、あ、あの時の彼だって目で追うようになって。
 誰にでも、こんな感情を今まで抱いたことがなかったのに、どうしてなのか。
 どうしてそう感じたのかがわからなかったんだ。
 知りたいと思ったし、俺の事を知って欲しいって思った。
 …俺、変なんだよ」
大きくため息をつく篤紀。
篤紀は、すごく悩んでいるようにしている。
けれど、俺はそんなことを言われて
「…俺を知って、がっかりした?」
俺は、篤紀の顔を引き寄せて、彼の首の辺りをペロンと舐めてやった。
―!?
バリバリッと身体を引き離される。
「今、何したの?」
―あっ…怒られる。
俺は、気まずくなり、
「…ごめん」

さっきよりも深さを増したため息を頭の上でつかれる。
「…さっきの舐めたらダメでしょう?
 あと、隼人を知って、思っていた通り話が合って、がっかりなんてしないよ。
 むしろ、その逆。
 だって、天然が入ってるし、結構寂しがり屋なのに、素直じゃないし。
 でも、俺と一緒だと、どんどん素直になるし…

 知ってる?
 うちの父親が、俺と隼人と三人で撮った写メを加工して、隼人と2人で写ってるようにしてんの。
 それを待ち受けにしてたらしくて、この前、母親からメールが来てた。
 もう、俺の息子って存在は、ほぼ薄くなってるよ」

篤紀は、そんな風に話をしているけど、俺を見るときは、本当ににやけていると言っていいのかもしれない。
なんとなく、だらしないほど緩んだ顔をよくするようになっている。
色々と考えていたら、沈黙をしていたわけで…
「…隼人?」
俺の表情を見て反応をみてきた。
「すっげー、恥ずかしくて照れるけど、篤紀に言われると、すごく嬉しい。
 お父さんのスマホの待ち受けはちょっとやめて欲しいけど、受け入れて貰えるってすごく嬉しい」
想像しただけで、顔が緩んでしまう。
この際だから、俺も
「篤紀も、俺の事、変態っておもうかもしんない。
 篤紀っていつも、電車の中で同じ学校の人に囲まれていただろ?
 あれ、すっごく羨ましかったんだ。
 でも、考えたらそれは篤紀にとってはたぶん、俺に興味をもつことすらなかったのかもとか。
 …あと、なんだかんだ言って、篤紀は俺を甘やかすから、その俺をダメにす!…いいや、なんでもない」
―バカバカバカ!調子に乗ってこんなことを言って、めちゃくちゃ恥ずかしいじゃん!!
俺は、近くにあったクッションを篤紀の顔に押し付ける。
「うわっぷ!?隼人?」
嬉しそうになってきた顔に押し付けたクッションは、一番の被害者だ。
でも、俺は、押し付けた隙に篤紀から離れて閉じられたパソコンを開く。

俺を見た篤紀は
「無理しないで、そんなものみなくてもいいって今、話をしたじゃん。
 それに、よく考えたら、俺だけ知ってた方が、なんかぁ‥‥ふふん…気分がいいじゃん」
そう言って、俺の手元からパソコンを取り上げて片付けてしまった。
―さっきのどういう意味?篤紀だけ知ってるって、…つまり…
チラリと篤紀を見れば、俺の様子を見てニマニマしている。
「隼人、約束。」

俺は、彼から差し出された右手の小指に、思わず、俺も右手の小指を絡める。
「子どもの時以来だ!
 これから隼人は一切、調べることなく、俺とエッチすることをここに約束します!
 はい、お約束!!」
懐かしいフレーズと相応しくない言葉の約束。
でも、篤紀が楽しそうだから許してしまう俺も、相当、緩んだ顔をしてるんだろうな。

結局、一切の予備知識を教えてもらうことなく、俺はその後、無事に篤紀と身体を重ねることができた。
出来たのだけれど、極める時間が凝縮された行為は、篤紀の想いがたくさん詰まっていて、俺はしばらく篤紀を見ることができなかった。その話は、もう少し後で。
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