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映らない鏡
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あの日突然妻は倒れそのまま他界した。辛い時に優しい笑顔で支えてくれた妻の死は、私を空っぽにした。がらんとした部屋の隅に妻の姿見。何気なく布を上げると妻が立っていた。いつもの優しい笑顔はどこか悲しげでもあった。振り向いても妻はいない。私は何故かそれをそのまま受け入れる事が出来た。
妻の姿は親族にも見えなかったが、妻と私は心の中で言葉を交わし続けた。そして四季が流れた。
「あなた、もう気が付いているのでしょう。私の姿はあなたの心が映し出している幻影であると」
その言葉を予期していた私は小さく肯いた。
「私の幻影に囚われず前に進んで下さいね、あなた」
しかしその声は背後から聞こえた。振り向くとそこに妻が立っていた。私は全てを理解し、口に出して言った。
「……これでお別れか。」
妻はいつもと変わらない優しい笑顔を浮かべながら消えていった。
私は姿見の中に妻がいない事を確認し、布を下ろした。心は何故か澄んでいた。
妻の姿は親族にも見えなかったが、妻と私は心の中で言葉を交わし続けた。そして四季が流れた。
「あなた、もう気が付いているのでしょう。私の姿はあなたの心が映し出している幻影であると」
その言葉を予期していた私は小さく肯いた。
「私の幻影に囚われず前に進んで下さいね、あなた」
しかしその声は背後から聞こえた。振り向くとそこに妻が立っていた。私は全てを理解し、口に出して言った。
「……これでお別れか。」
妻はいつもと変わらない優しい笑顔を浮かべながら消えていった。
私は姿見の中に妻がいない事を確認し、布を下ろした。心は何故か澄んでいた。
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