15 / 39
エングラントの槍編
次の一手
しおりを挟む
ミルファージの屋敷内の応接間で、シュタインとネーエンとミカが町長のミルファージを待っていた。ミルファージは直ぐに姿を現した。
まずネーエンが戦況について説明した。
「残党を蹴散らした後我が班の兵士も採掘場に向かわせました。じきに採掘場からも勝利の連絡が入るでしょう」
「大丈夫なのか?」
「ご心配なさらずに。それよりもバオホの行方が気になります……シュタイン殿、バオホは採掘場に行ったのではないのか? バオホが採掘場に行ったのならば我らも直ぐに向かわないと……」
「バオホは自分の住処、エングランドの槍に帰ったと思います」
ミルファージが聞いた。
「何故そう言える?」
「奴は僕のシュネーバルを見て慌てて身を引いた。だからテレポート先の座標を指定している暇はなかったんです」
「?」
テレポートの呪文を使う時は、通常何処へテレポートするのかその座標を指定しなければならない。
「奴は事前に予備魔法をかけておいたと思われます。緊急時にテレポートを座標の指定なく使うために、予め座標を特定しておいたのです」
予備魔法でテレポートの座標を指定しておいた場合、テレポートの呪文の詠唱を短くすることができる。この場合、予め指定しておいた座標にテレポートされる。
「恐らく奴は町長の首を持って帰る算段だった為、テレポート先の座標は自らの住処と考えるのが妥当です」
「なるほど?」
ネーエンやミルファージはさっぱり分からなかった。
「で、エングラントの槍からここまではどのくらいの日数で来れるのだ?」
「今それは問題ではないでしょう」
「何故だ? 奴が次攻め込んでくるまでの時間が分からなければ体勢を整えられない」
その時ドアを叩く音がした。
「伝令! 採掘場にて敵を打ち破りました」
「おお、でかしたぞ」
「魔法の軍団など我が軍にかかれば簡単なものだ」
ネーエンは誇らしげに言うのだが、こちらの損失も大きかった。
「戦いにより戦死した者は概算でも千二百、負傷者は二千と見られます」
「何⁉︎ それ程の損失があったのか……」
「魔法の軍団を甘くみてはいけない」
シュタインは呟くように言った。暫く沈黙が包んだ。
「なれば次の攻防の事を考えなければなるまい。次の布陣はどう敷く?」
ミルファージはシュタインの方を向いた。
「次の布陣は不要です」
「何? どう言う事だ?」
「守りの戦いをするつもりではないと言う事です」
「攻め込むと言うのか?」
「はい」
「しかしバオホが本当にエングラントの槍にいるのか分からないだろう」
「可能性から言えば百パーセントではないです。しかしエングラントの槍にいる確率が一番高い」
「しかし再び直ぐに攻め込んでくるかも知れんぞ」
「それは有り得ない」
「何故そう言える?」
「いかなバオホと言えども再び千近い軍勢を編成する事は出来ないでしょう。それを魔法により強化させるとなれば時間も必要になる」
「良かろう。今回のバオホの動きを読んだのもシュタイン殿だ。その言葉を信じよう。で、侵攻する軍勢の数は?」
魔法探究者、特にバオホほどの使い手となると一個師団は必要だろう。彼らは魔法の事を知らな過ぎる。
シュタインは考えた。エングラントの槍を攻略するには正攻法で攻めるしかないだろう。バオホの事だ、塔の中には何か仕掛けがしてあるに違いない。そしてオークを中心にした亜人を配してるかもしれない。
対バオホの為と言うよりは、これらの仕掛けや敵対する生物との戦いとして兵隊がいた方が良いのかもしれない。
「塔の攻略は大人数ではかえって不利です。そして山道を抜ける事になるでしょう。兵糧を運ぶ為の輸送隊が十五と塔の攻略に十、合わせて二十五名と僕の弟子ミカで行きましょう。人選はネーエン殿に一任します。なるべく早く発ちたい」
「二十五だと⁉︎ しかも戦闘要員は十名?」
「雪割り山脈を登ります。山の向こうへはドワーフコリドーを抜ければいい。そしてエングラントの槍は大人数では不利です」
「ドワーフコリドーとは何なのだ? それに雪割り山脈を超えたらそこはエングラントだぞ。敵が待ち構えていたら、或いは遭遇したらその人数でどうする?」
「確かに敵国の兵士と遭遇する可能性もありましょう。なればこちらは偽装するしかありませんな」
シュタインはその事については楽観視していた。国境警備の兵士などシュタインに取って敵ではないからだ。ただ、敵兵に対して無駄に魔力を使って消費したくはなかった。
「旅の賞金稼ぎにでも扮しましょうか」
シュタインは細かい道のりなどを説明した。会議は数時間続いた。その結果、出発は二日後と言う事になった。
まずネーエンが戦況について説明した。
「残党を蹴散らした後我が班の兵士も採掘場に向かわせました。じきに採掘場からも勝利の連絡が入るでしょう」
「大丈夫なのか?」
「ご心配なさらずに。それよりもバオホの行方が気になります……シュタイン殿、バオホは採掘場に行ったのではないのか? バオホが採掘場に行ったのならば我らも直ぐに向かわないと……」
「バオホは自分の住処、エングランドの槍に帰ったと思います」
ミルファージが聞いた。
「何故そう言える?」
「奴は僕のシュネーバルを見て慌てて身を引いた。だからテレポート先の座標を指定している暇はなかったんです」
「?」
テレポートの呪文を使う時は、通常何処へテレポートするのかその座標を指定しなければならない。
「奴は事前に予備魔法をかけておいたと思われます。緊急時にテレポートを座標の指定なく使うために、予め座標を特定しておいたのです」
予備魔法でテレポートの座標を指定しておいた場合、テレポートの呪文の詠唱を短くすることができる。この場合、予め指定しておいた座標にテレポートされる。
「恐らく奴は町長の首を持って帰る算段だった為、テレポート先の座標は自らの住処と考えるのが妥当です」
「なるほど?」
ネーエンやミルファージはさっぱり分からなかった。
「で、エングラントの槍からここまではどのくらいの日数で来れるのだ?」
「今それは問題ではないでしょう」
「何故だ? 奴が次攻め込んでくるまでの時間が分からなければ体勢を整えられない」
その時ドアを叩く音がした。
「伝令! 採掘場にて敵を打ち破りました」
「おお、でかしたぞ」
「魔法の軍団など我が軍にかかれば簡単なものだ」
ネーエンは誇らしげに言うのだが、こちらの損失も大きかった。
「戦いにより戦死した者は概算でも千二百、負傷者は二千と見られます」
「何⁉︎ それ程の損失があったのか……」
「魔法の軍団を甘くみてはいけない」
シュタインは呟くように言った。暫く沈黙が包んだ。
「なれば次の攻防の事を考えなければなるまい。次の布陣はどう敷く?」
ミルファージはシュタインの方を向いた。
「次の布陣は不要です」
「何? どう言う事だ?」
「守りの戦いをするつもりではないと言う事です」
「攻め込むと言うのか?」
「はい」
「しかしバオホが本当にエングラントの槍にいるのか分からないだろう」
「可能性から言えば百パーセントではないです。しかしエングラントの槍にいる確率が一番高い」
「しかし再び直ぐに攻め込んでくるかも知れんぞ」
「それは有り得ない」
「何故そう言える?」
「いかなバオホと言えども再び千近い軍勢を編成する事は出来ないでしょう。それを魔法により強化させるとなれば時間も必要になる」
「良かろう。今回のバオホの動きを読んだのもシュタイン殿だ。その言葉を信じよう。で、侵攻する軍勢の数は?」
魔法探究者、特にバオホほどの使い手となると一個師団は必要だろう。彼らは魔法の事を知らな過ぎる。
シュタインは考えた。エングラントの槍を攻略するには正攻法で攻めるしかないだろう。バオホの事だ、塔の中には何か仕掛けがしてあるに違いない。そしてオークを中心にした亜人を配してるかもしれない。
対バオホの為と言うよりは、これらの仕掛けや敵対する生物との戦いとして兵隊がいた方が良いのかもしれない。
「塔の攻略は大人数ではかえって不利です。そして山道を抜ける事になるでしょう。兵糧を運ぶ為の輸送隊が十五と塔の攻略に十、合わせて二十五名と僕の弟子ミカで行きましょう。人選はネーエン殿に一任します。なるべく早く発ちたい」
「二十五だと⁉︎ しかも戦闘要員は十名?」
「雪割り山脈を登ります。山の向こうへはドワーフコリドーを抜ければいい。そしてエングラントの槍は大人数では不利です」
「ドワーフコリドーとは何なのだ? それに雪割り山脈を超えたらそこはエングラントだぞ。敵が待ち構えていたら、或いは遭遇したらその人数でどうする?」
「確かに敵国の兵士と遭遇する可能性もありましょう。なればこちらは偽装するしかありませんな」
シュタインはその事については楽観視していた。国境警備の兵士などシュタインに取って敵ではないからだ。ただ、敵兵に対して無駄に魔力を使って消費したくはなかった。
「旅の賞金稼ぎにでも扮しましょうか」
シュタインは細かい道のりなどを説明した。会議は数時間続いた。その結果、出発は二日後と言う事になった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜
黒城白爵
ファンタジー
異次元から現れたモンスターが地球に侵攻してくるようになって早数十年。
魔力に目覚めた人類である覚醒者とモンスターの戦いによって、人類の生息圏は年々減少していた。
そんな中、瀕死の重体を負い、今にもモンスターに殺されようとしていた外神クロヤは、これまでの人生を悔いていた。
自らが持つ異能の真価を知るのが遅かったこと、異能を積極的に使おうとしなかったこと……そして、一部の高位覚醒者達の横暴を野放しにしてしまったことを。
後悔を胸に秘めたまま、モンスターの攻撃によってクロヤは死んだ。
そのはずだったが、目を覚ますとクロヤは自分が覚醒者となった日に戻ってきていた。
自らの異能が構築した新たな力〈システム〉と共に……。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる