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Dom連続殺人事件編
10話《けもの》
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急いで探偵事務所に戻ると、事務所は出ていった時のままだった。怪しい人物に入られた形跡はない。それだけでひとまず安堵の息を吐いた。
静かに2階へ上がり、先生の部屋へ向かう。扉を開けると灯りの消えた暗い室内に、ベッドからは先生の安らかな寝息が聞こえる。あんな脅され方をして心配したが特にいつもと変わりはないようだった。──よかった。先生の身が無事だったことに何よりも安心した。
ほっと胸を撫で下ろし、部屋から出て行こうとしたその時、心臓がドクンと大きく跳ねた。
「っ……!?」
じわじわと体の内側から熱くなってゆく感覚に頭がくらくらして思わず膝をついた。息を荒くしながら自分の頭を押さえる。
「……助手君……?」
先生が目を覚まし、ベッドサイドの小さな灯りがついた。
「……ぁ、せんせ……」
──まずい。橙色の灯りに照らされた先生の心配そうな顔を見た途端、異様なまでの『加虐心』という衝動に襲われた。もしかすると、先程あの男へに投与された薬品が原因かもしれない。
──あ、駄目だこれ。ごめんなさい、先生。
体が言うことを聞かなくて、
頭の中で何度も先生に謝った。
そこからのことはあまり覚えていない。
*
ゆらりと立ち上がった彼──助手君は、何かを小さく呟きながらベッドに乗り上げると私に覆い被さった。いつもの丁寧な所作とは異なる乱暴な手つきで衣服を剥ぎ取っていく。
「助手君……? どうしたんだ一体、」
「Shut Up(黙って)」
「ッ……!」
強い口調で放たれたコマンドに咄嗟に口をつぐむ。自分を見下ろす彼はひどく興奮していた。そのギラついた瞳は獲物を捕まえた時の肉食獣を彷彿させる。──ゾクゾクする。明らかに異常だというのに、Subとしての自分が彼に支配されたがっている。
「……せんせ、」
くちびるに噛みついて無理やり舌をねじ込んでくる。ろくに前戯もしないまま、硬くなったそれを、中に突き立てられる。一方的な蹂躙ともいえるその行為に普段の彼の面影はなかった。理性を失った獣のように腰を振り、欲を打ち付けてくる。痛い。苦しい。そこに快楽はなかった。彼の瞳に自分は映っていないのだから。不安になる。ふと、安曇に支配されていた頃のことを思い出した。──こんなことを思い出してしまうなんて。助手君を、彼のようにさせてはいけない。
「っ、助手君、──」
はっきりと、セーフワードを口にする。彼とのプレイはいつも心地よかったから、セーフワードを口にしたのは初めてだった。
彼の動きがぴたりと止まる。まだ肩で息をしている彼の背に腕を回し宥めるようにさすった。
「……落ち着きなさい、助手君」
「ッ……? ぁ、」
「……助手君、」
「せんせい、ぼくは……」
我に返った彼は自身と私の状態を見て、何が起きていたのか大方察しがついたのだろう。その顔がさあっと青ざめる。
「ご、ごめんなさい……ごめんな、さい、せんせい、」
「私なら大丈夫だから。君の身に何があったのか、落ち着いて話してみなさい」
腕の中で震える彼はゆっくりと頷き、事のあらましを話し始めた。
「……僕のもとに、メールが届いたんです」
静かに2階へ上がり、先生の部屋へ向かう。扉を開けると灯りの消えた暗い室内に、ベッドからは先生の安らかな寝息が聞こえる。あんな脅され方をして心配したが特にいつもと変わりはないようだった。──よかった。先生の身が無事だったことに何よりも安心した。
ほっと胸を撫で下ろし、部屋から出て行こうとしたその時、心臓がドクンと大きく跳ねた。
「っ……!?」
じわじわと体の内側から熱くなってゆく感覚に頭がくらくらして思わず膝をついた。息を荒くしながら自分の頭を押さえる。
「……助手君……?」
先生が目を覚まし、ベッドサイドの小さな灯りがついた。
「……ぁ、せんせ……」
──まずい。橙色の灯りに照らされた先生の心配そうな顔を見た途端、異様なまでの『加虐心』という衝動に襲われた。もしかすると、先程あの男へに投与された薬品が原因かもしれない。
──あ、駄目だこれ。ごめんなさい、先生。
体が言うことを聞かなくて、
頭の中で何度も先生に謝った。
そこからのことはあまり覚えていない。
*
ゆらりと立ち上がった彼──助手君は、何かを小さく呟きながらベッドに乗り上げると私に覆い被さった。いつもの丁寧な所作とは異なる乱暴な手つきで衣服を剥ぎ取っていく。
「助手君……? どうしたんだ一体、」
「Shut Up(黙って)」
「ッ……!」
強い口調で放たれたコマンドに咄嗟に口をつぐむ。自分を見下ろす彼はひどく興奮していた。そのギラついた瞳は獲物を捕まえた時の肉食獣を彷彿させる。──ゾクゾクする。明らかに異常だというのに、Subとしての自分が彼に支配されたがっている。
「……せんせ、」
くちびるに噛みついて無理やり舌をねじ込んでくる。ろくに前戯もしないまま、硬くなったそれを、中に突き立てられる。一方的な蹂躙ともいえるその行為に普段の彼の面影はなかった。理性を失った獣のように腰を振り、欲を打ち付けてくる。痛い。苦しい。そこに快楽はなかった。彼の瞳に自分は映っていないのだから。不安になる。ふと、安曇に支配されていた頃のことを思い出した。──こんなことを思い出してしまうなんて。助手君を、彼のようにさせてはいけない。
「っ、助手君、──」
はっきりと、セーフワードを口にする。彼とのプレイはいつも心地よかったから、セーフワードを口にしたのは初めてだった。
彼の動きがぴたりと止まる。まだ肩で息をしている彼の背に腕を回し宥めるようにさすった。
「……落ち着きなさい、助手君」
「ッ……? ぁ、」
「……助手君、」
「せんせい、ぼくは……」
我に返った彼は自身と私の状態を見て、何が起きていたのか大方察しがついたのだろう。その顔がさあっと青ざめる。
「ご、ごめんなさい……ごめんな、さい、せんせい、」
「私なら大丈夫だから。君の身に何があったのか、落ち着いて話してみなさい」
腕の中で震える彼はゆっくりと頷き、事のあらましを話し始めた。
「……僕のもとに、メールが届いたんです」
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