10年恋愛

杏鈴

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再会

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ここはとある事務所の一室
今まで順調に仕事をしてきた私に突如事件が起きる

美山 陽奈子(みやま ひなこ)28歳
独身のアラサー
好きな事は家で1人でビールを呑みながら音楽を聴いたり映画鑑賞をすること
大学を卒業してからずっとこの事務所で正社員として働いている
事務所自体はそこそこの規模だが私の所属している部署はこじんまりしていて人数もそこまで多くなくアットホームな雰囲気で居心地が良い
上司も頼ってくれるし後輩は可愛いし仕事に関しては特に言うこと無しだった

ついこの間までは

*再会***

12月頭のある日
自分のデスクで仕事をしていた私は一息つく為に席を外してお茶を入れていた
すると外回りから帰ってきた後輩の菜々ちゃんが私を見つけて走ってくるのが見えた

菜々:先輩!美山先輩!
◇あら、菜々ちゃん。おかえり
菜々:ただいま戻りました!あの、今日なんですけど一緒にランチしませんか!?
◇良いよ。私お弁当だから休憩室になっちゃうけど大丈夫?
菜々:はい!私は売店で買ってくるので大丈夫です!渡瀬先輩もお誘いしてますのでそれではまた後で!

菜々ちゃんは嬉しそうにニコニコしながら走り去っていった
◇なにか聞いて欲しい話でもあるのかな?

菜々ちゃんこと松本 菜々(まつもと なな)ちゃんは2年前に入ってきた後輩でとても元気が良く我が部署のマスコット的存在である
先程菜々ちゃんが誘っていると言った渡瀬とは私の同僚である渡瀬 梨緒(わたせ りお)のことだ
菜々ちゃんが新人の頃2人はよく一緒に仕事をしていた為仲が良い

私は着々と午前中の仕事を片付けあっという間にランチタイムとなった
菜々:はぁ~やっとお昼だぁ
梨緒:今日は外回りが多かったからね。菜々ちゃんお疲れ様
菜々:渡瀬先輩もお疲れ様です~ってまだ半日なんですけどね。笑
◇じゃぁお疲れの2人にスイーツをどうぞ

私はコンビニの袋からプリンを取り出した
菜々:え!?どうぞって頂いていいんですか!?
◇うん。3つあるから皆で食べよ
梨緒:さっきコンビニにいってたのはこれを買いに行ってたのね、ありがとう
菜々:うわーん!美山先輩ありがとうございますー!
◇いえいえ。それで菜々ちゃんは何か話があるんじゃないの?

プリンを大事そうに受け取る菜々は忘れてた!という顔をし、真剣な表情に変える
菜々:それがですね、先輩方にご相談がありまして…
梨緒:菜々ちゃんが真面目な顔をするって事は相当な内容だね?
菜々:そうなんです…って私ちょっとディスられてる!?じゃなくて、あと1ヶ月もしない内に年越しじゃないですか。それで彼氏に今年は俺の親族の集まりに来ないかって言われまして…
◇えー!それって菜々ちゃんを紹介したいってことだよね?おめでとう!
梨緒:よかったねー!でもどうしてその話を相談?行くか悩んでるの?

菜々は真剣な表情から困った表情になり話し出す
菜々:それが、どうしたらいいのか色々とわからなくて!
梨緒:色々?
菜々:彼のご両親には一度会ったことあるんですけど親族ってもう規模が違いすぎて想像つかないし、付き合ってまだ1年ちょっとだし、もちろん彼とは結婚したいと思っているんですけどなんか思考が追いつかなくて…どうしたらいいのか…!
梨緒:なるほど、菜々ちゃんまだ24歳だもんねぇ

とりあえず落ち着こうか、と梨緒が菜々の頭を撫でる
すると途端に陽奈子が口を開いた
◇ドンと構えて行っちゃいなよ
梨緒:え、陽奈子?

陽奈子があまり言わなさそうな台詞が彼女の口から飛んできた為、梨緒は驚く
◇私ね、仕事も恋愛も全力でやっていつも元気でニコニコしてる菜々ちゃんを尊敬してるの。だから彼の事が大好きなら自信を持って彼について行けばいいと思うよ
菜々:美山先輩…私の事そんな風に見ててくれたんですか…

次第に菜々の目がうるうるしてくる
梨緒:よかったね、菜々ちゃん。陽奈子がそう言うならきっと間違ってないよ
◇いや、私はエスパーではないから…
菜々:私決めました!行ってきます!それで堂々と挨拶してきます!

握りこぶしを掲げた菜々はいただきます!と気合いをいれてプリンを食べ始めた
◇ふふ、そういう感じの方が菜々ちゃんらしいね
梨緒:確かにね

そはで優しく笑う先輩2人を見て、プリンとっても美味しいです!と菜々も嬉しそうに笑った

ランチタイムが終わり3人はそれぞれ仕事に戻った
菜々が受付で電話を取っていると目の前のドアが開き訪問者が現れる
菜々:はい、では失礼します…ふぅ。あ、お疲れ様です。どなたに御用ですか?
男性:すみません、この資料を主任さんに
菜々:はい、今呼びますね。主任ー!

菜々が主任を呼んでいると再びドアが開き息を切らした男性が入ってきた
◆先輩!これ忘れてますよ!

どうやら訪問者の男性の忘れ物を急いで届けに来たらしい
男性:あ、すまん!助かった!
◆間に合ってよかったです…ふぅ
菜々:すみません、主任が今席を外しているみたいで…どうしよう。こちらは急ぎのお渡し物でしょうか?

菜々が訪問者の男性とやりとりをしていると後ろから陽奈子が駆けつけた
◇菜々ちゃん、それ多分明日の朝使う資料だから私が預かっておくよ
菜々:美山先輩!よかった~
◇すみません、主任から説明を受けていますので私がお預かりします。こちらにご署名だけ頂けますか?
男性:わかりました。よろしくお願いします

陽奈子は資料を受け取りテキパキと受付を済ませていく
すると不意に名前を呼ばれた
◆あれ、美山って……陽菜?

署名された用紙にサインをしていた陽奈子は顔をあげると男性の後ろに立っていたもう1人の男性とばっちり目が合う
◇…え?か、ける…
菜々:ん?お知り合いですか?

一瞬固まっていた陽奈子は菜々の言葉で我に返る
◇あ、ではお預かりしますね。ありがとうございました
男性:はい、お願い致します

資料の受け取りを終え自席に戻った陽奈子の元へ菜々がやって来た
菜々:美山先輩、先程の後ろにいた男性とは…

菜々が顔を覗き込むとそこには見た事もない複雑な表情をした陽奈子がいた
菜々:せ、先輩…大丈夫ですか?
◇え?

陽奈子は菜々が話かけた事で見られていたことによくやく気付く
菜々:顔引きつってますよ?
◇そ、そんなことないわよ、大丈夫
菜々:なんか聞いて欲しいこととかあったらなんでも言ってくださいね
◇ありがとう、でも大丈夫よ

本当かなぁと半信半疑の菜々は今はそっとしておくことにした
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