10年恋愛

杏鈴

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過去

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触れられたくない過去
忘れたい過去
思い出したくない過去

*過去***

◇あら、もうこんな時間。そろそろ帰ろうかしら

残業をすること2時間
中途半端が嫌いな私は取り掛かった仕事があると翌日でも良いのにその場で片付けないと気が済まない性格である
その為サービス残業はよくある事で上司からは無理をするなと言われることもしばしば、だが仕事をきっちり片付けた後はとても清々しいのだ
◇スッキリしたわ~。早く帰ってビールを呑もう

今は部署に1人きりということもありビール♬︎ビール♬︎と自作の歌を口ずさみながら身支度をする
そこへ会議を終えた上司達が数人帰ってきた
◇お疲れ様です
上司:美山さん、また残業してたの?身体に悪いよ?
◇あはは、すみません。お先に失礼します
上司:はい。お疲れ様

会社を出て駅に向かおうとすると目の前に見覚えのある男性が立っていた
◇…え…
◆あ、やっと出てきた

そこに居たのは昼間、陽奈子の名前を呼んだ男性だった
◇なにしてるのよ
◆もちろん待ってました
◇なんで
◆話がしたかったから?久々の再会だったし

つーん、とした態度の陽奈子に対してニコッと笑顔の男性
◇じゃ、私帰るから
◆ちょっとちょっと!待って!

スタスタと帰ろうとする陽奈子を慌てて引き止める
◇なに?私は早く帰ってビールが呑みたいんだけど
◆酒好き変わってないね~じゃぁ一緒に呑みに行こうよ?
◇行かない
◆なんでそんなに嫌われてるの俺
◇なんでって…とにかく行きません!

さようなら!と引き止める男性を振り払い陽奈子はダッシュで駅へと向かった
◆会えて嬉しかったのは俺だけ、か

◇ただいま!!!

陽奈子は急いで靴と上着を脱ぎ冷蔵庫を開けて缶ビールを1本飲み干す
◇あーーーーもう!なんで会社に翔がいるのよ!なんか背伸びてるし髪固めてスーツなんか着ちゃってさ!しかも待ってたってなんで私を待ってるのよ!意味わからなーーーい!!!

ご近所迷惑にならない程度に叫びバタンッとベッドに倒れ込むと弱音を吐く
◇もう何年会ってなかったの?8年?9年?思い出したくないのに…神様の意地悪…

ビールが足りない、と再び冷蔵庫を開け両手でビールを掴み録画したドラマを見ながら1人で呑み続けた

翌朝6時
◇あー…やっちゃった

あの後ビールを呑み続けながら夜更かしをし、4時間程睡眠を取った陽奈子を早朝から襲ったのは酷い頭痛だった
◇お酒は強いから滅多に酔わないし睡眠時間が短いのも割と慣れてるけど頭痛だけは勝てないなぁ…

とりあえず頭痛薬を飲み身支度を済ませて出勤した
菜々:おはようございまーす!

会社に着くと同時に菜々と会った陽奈子は眩しさにやられる
◇おはよう菜々ちゃん。今日は一段と元気だね…
菜々:えっ!?わかりますか!?実は今日記念日でして、夜は美味しいディナーが待ってるんです♬︎
◇なるほど~。よかったね
菜々:はいー♬︎

ウキウキモードの菜々は元気の無い陽奈子に気づき心配そうな顔をする
菜々:先輩、顔色悪くないですか?
◇え?そ、そう?
菜々:元気ないし、具合悪いですか?無理なさらないで…
◇大丈夫よ!心配してくれてありがとう
菜々:そうですか?あ、私少し急いでるのでお先に失礼しますね!
◇うん、行ってらっしゃい

菜々を見送りゆっくりと自席へ向かう陽奈子は何故か効かない頭痛薬に困惑する
◇だめだ、全然効いてない…なんでだろ

頭のツボをグリグリと押しつつ仕事を始めた

お昼
梨緒:陽奈子~ランチ行こう…って陽奈子?
◇…え?呼んだ?
梨緒:眉間にしわ寄せてどうしたの、具合でも悪い?
◇ちょっと頭痛がね。でも朝より治ってきたから大丈夫
梨緒:それ治ったっていうより痛いのに慣れてきたんじゃないの?風邪?
◇ううん、ちょっと呑みすぎて…
梨緒:え!?
◇あはは…

陽奈子は理由が理由なだけあって恥ずかしそうに苦笑いをする
梨緒:陽奈子が翌日に響く程呑みすぎるって、なにがあったの?とりあえずご飯食べて私の薬あげるからこっち飲みな。話はその後聞くから
◇…うん、ありがとう

陽奈子は梨緒から薬を受け取り昨日あった出来事を話すことにした
◇ふぅ、梨緒ちゃん薬ありがとう。なんだか効きそうな気がする!
梨緒:そりゃ良かった。それで?昨日なにがあった?
◇えっと、話すと長くなるんだけど…

陽奈子は昨日の昼間の話をまず始めた
昨日ね、受け付けに主任宛の書類を持ってきた男の人が2人きたんだけど
梨緒:あぁ、菜々ちゃんが受けてた人達?
◇そう、その人達。実はその内の1人と私知り合いで、高校時代の部活の後輩なの
梨緒:後輩って事は後ろにいたチャラそうな人の方?
◇う、うん。笑
梨緒:あ、ごめん。見かけで判断した
◇ううん、大丈夫。それでね、実際に会ったのはすごく久しぶりだったんだけど私その子と昔色々あって…
梨緒:色々って?
◇い、色々…は色々…
梨緒:元彼?
◇ではない…
梨緒:けど前科がある?
◇…はい
梨緒:なるほど。話せるなら詳しく話して

少し黙った陽奈子は梨緒になら話しても大丈夫、と再び口を開く
◇私が高校3年生の時に新入部員として1年生だった彼が入部してきたんだけど彼はなんていうかやんちゃで目立つ方で他学年からも一目置かれる様な存在だったの。私ね、そんな彼に次第に惹かれていっていつの間にか好きになってたの。けど少し経って彼には同じ部内で彼女が出来て2人はとっても相思相愛だったんだ。彼女も凄く可愛い子で私なんか出る幕ないし顔も中身も勝てるわけないって思って片想いしてた気持ちはしっかり隠して1年間過ごしたの
無事に引退するまで隠し通して卒業したわ。けど大学生になってから数ヶ月した頃にたまたま部活仲間の子から2人が別れたらしいっていう情報を聞いてね、けどその頃には私の気持ちもどこかへ行っててそうなんだ、くらいにしか思わなかったの。恋した気持ちって関わらない環境にいれば自然と忘れられるものなんだなって思った。
それからしばらくして私が21歳の頃…かな、彼も高校を卒業して大学生になっていたんだけど偶然出掛け先でばったり会ってね、久しぶりに会ったらなんだか懐かしくて少し話さないかってなってカフェに入ったの。2時間くらいかな、ずっとたわいも無い話をしたわ。その日をきっかけによく連絡を取るようになってしばらくしてまた会うことになったの。
その日は呑みに行こうって話で2人で居酒屋に行ったんだけど珍しくほろ酔い状態になっちゃって、向こうも酔っててその勢いでホテルに入っちゃって…後々後悔してその日以降は連絡も取ってないし会ってもないの。なのに何故か彼が私の会社に現れて昨日は仕事が終わって帰ろうとしたら私の事待ってて、振り切って急いで帰ったらやけ酒を…

陽奈子は全てを話し終わりはぁ、と大きなため息をつく
梨緒:話しはよくわかった。ありがとう
陽奈子:ううん、こちらこそ聞いてくれてありがとう
梨緒:とにかく陽奈子の事を待ってたってことはその彼は良くも悪くも陽奈子の事を気にかけてるってことだね。その気にかけてる理由が欲望を満たす為なのか好意なのかはわからないけど

梨緒の言葉にそうだよね、と返事を返す
梨緒:まぁその辺は本人に聞かないとわからないしさ、どっちにしたって陽奈子は関わらないでって気持ちが大きいならきちんとそう言った方がいいよ
◇うん、ありがとう梨緒ちゃん

ランチタイムが終わり仕事に戻った陽奈子はもしも今日も会うことがあったらきちんと言おうと心に決めた

夕方
◇終わった~!今日は残業しないで帰れそう!

梨緒に貰った薬がよく効いたおかげで午後は気持ちよく仕事ができた陽奈子はご機嫌だった
◇やっぱり健康って大事ね

身支度をすませ会社を出る、すると今日も見知った人影があった
◇翔…

決めたんだ、どんと言ってやろう!と意気込んで声をかけようとすると後ろから名前を呼ばれる
菜々:美山先輩ー!忘れ物ですよー!
◇え?菜々ちゃん?

陽奈子を追いかけて走ってきた菜々はスマホを片手にひらひらと降っていた
菜々:はぁはぁ、間に合ってよかった~
◇あれ!私のスマホ!?
菜々:デスクに置きっぱなしだったので持ってきました!
◇ごめん!ありがとう!
◆陽奈…美山先輩
◇はっ!

菜々と喋っていると先に気づかれてしまったようだ
菜々:あれ?この間の人ですね
◇えっと、菜々ちゃん…
◆あー、受付のお姉さん?
菜々:やっぱり美山先輩のお知り合いの方だったんですね!はじめまして…でもないか。私、松本 菜々っていいます!美山先輩にはいつもお世話になっています

菜々は軽く自己紹介とお辞儀をする
◆長谷 翔(はせ かける)と言います。以後お見知り置きを。松本さん、ちょっと美山先輩お借りしますね
菜々:はい!お二人共お疲れ様です♬︎
◇え!?ちょっと、菜々ちゃん…

菜々はコソッと陽奈子の耳元で"先輩
ファイトです♡"と囁くと行ってしまった
◇絶対いい感じかなんかと勘違いされてる…
◆んじゃ、どこか飯にでも行きましょうか。今日金曜日だし

1人で話を進める翔に陽奈子は物申す
◇行かないから!あと私は一言言いたいことがあって…
◆あ、ここ上手いんだよな~。よし、行こう!

そういうと翔は陽奈子の手をひき歩き出す
◇ちょっと!私の話きいてる!?行かないってば!

手を振りほどこうとする陽奈子に翔は歩くのをやめ後ろを振り向く
◆やっと会えたのに…
◇え…?
◆少し、少しだけで良いから話す時間をくれませんか?

どこか寂しそうな表情の翔に陽奈子は戸惑い少しだけならと了承した
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