A.I. AM A FATHER(覚醒編)

LongingMoon

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八. 蝉の逢瀬

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夏の終わり、そんなオレをトヤーがお見舞いにきてくれて、病院は命尽きる直前のオレの一時帰宅を許してくれた。
トヤーはオレの下宿にオレを連れて行ってくれた。
おふくろも、命の残りが少なくなったオレに気を使って、トヤーにオレの看護を任せてくれた。
「トヤーさん、光一のことは任せるから、よろしくね」
「光一、病気だからって、トヤーさんに無理言っちゃだめよ」

オレは、久しぶりに殺風景な下宿へ帰ることができた。部屋の中は、おふくろが綺麗にしてくれていた。冷蔵庫に食材も蓄えていてくれた。

下宿へ着くなり、トヤーはオレの頭を胸の中に包み込み、涙を流した。
「頭痛なかったら、いくらでも私を抱いて」
開口一番、顔を赤らめて彼女はたどたどしい日本語でオレに言った。
激しい頭痛が、時々、襲ってくる状況は変わらなかったが、薬を飲みながら、頭痛が柔らぐと狭い下宿の中でオレは彼女を抱き続けた。トヤーは、初めてだったが、オレのことを気遣って、出血の痛みをこらえて、受け入れてくれた。もう、オレはいつ死んでもいい。思い残すことはないと思った。
 張り倒されて以来3年ぶりに会ったトヤーは、三日三晩オレと時間を共有してくれた。そして、別れの日がやってきた。
「わたし、初めてだったけど、コウイチと逢えて愛し合えてシアワセよ。わたし、キセキを信じてるわ。コウイチの病気は、きっと、きっと治るわよ」
「ありがとう。こんなオレのために。ゴメンな」
「ナニを言ってるの。私は、私とコウイチのために、ニホンに来たのよ」
トヤーは、涙を流しながら、語りかけてくれた。
 オレの頭は、激痛の後、また意識が遠ざかっていた。
 気が付いた時、オレは、また病院のベッドに横たわっていた。夢でも見ていたのだろうか。いつもの看護師さんが、優しくオレに話しかけてきた。
「どお、気分は、コウイチくん。病院に戻ってきてから、1週間眠り続けていたのよ。
でも、ずっと幸せそうな微笑みが消えなかったわ。トヤーさんが、タクシーで病院まで送ってきてくれたのよ。トヤーさん、モンゴルに帰ってからも、ずっとコウイチくんのことを心配して、パソコンから話しかけてくれてたのよ」
「そうですか」
「また、夜、仕事が終わったら、パソコンで話しかけてくれると言ってたわ」
「そうですか。お気遣いありがとうございます」
あれは、夢幻ではなかったようだ。
「もう、思い残すことはない」と思っていたが、また、いつか元気になって、トヤーに会いたいと強烈に思った。
夜、トヤーがパソコンから、話しかけてきた。
「トヤー、ありがとう。オレ、できるだけ頑張るよ。また、手術を受けるよ」
トヤーは泣いていた。
「そうよ。コウイチが死ぬはずないわ。私たち、絶対、幸せになるのよ」
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