A.I. AM A FATHER(覚醒編)

LongingMoon

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一九. 施設長

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「とにかく、オユンナはどこだ。もう、1歳半くらいで、歩くようになっているはずだ。オレは一刻でも早くオユンナを守らなきゃならない」
「しかし、まだオユンナは言葉もあまりしゃべれないだろうし、オレにはどうすることもできない。どうすればいいんだろう。あー、トヤー、ごめんよ。生きている間におまえを見つけられなくて。オユンナを見つけるのにこんなに時間がかかってしまって。トヤー、オレはオユンナのために、オレは全てをつくすよ」
オユンナはまだ1人で動くことができないので、まだ、施設長と寝食をともにしていることを、知った
「そうだ、オユンナの物心がつくまで、オレは、施設長の携帯電話へ住まわせてもらおう」
「施設長は、オレが病院でトヤーと話していることを聞いているかもしれない。オユンナが生まれるまでに、トヤーがオレのことを伝えてくれているかもしれない」

「トヤーは、オレの似顔絵をよく書いてくれた。目は細くて一重まぶたで、いつも目を瞑っていて、髪は6・4分けの直毛だった。その絵は、NATOのコンピュータにオレの人口知能とともに格納されていた」

「オレは施設長の携帯電話のアラーム画面と待ち受け画面に、トヤーが描いたオレの似顔絵の中で一番笑みを浮かべているアイコンをはりつけた。そして、アラームを流した」

 「あらあら、なんで、こんな時間にアラームが鳴るのかしら。私も老いぼれたものね」と言いながら、アラーム画面をみて、すぐにアラームを切った。
 「あら、へんなアイコンがあるわ。消さなきゃ」

オレはたまらず叫んだ。
「ちょっちょっと待ってくれ」

「あんた、電話のくせに、私に話しかけているつもり。あっ、電話はそういうものよね。でもウィルスかもしれないから、消さなきゃ」

「ちょっちょっと待ってくれ。オレは、トヤーの元彼でオユンナの父親なんだ」

「あらあら、なんか、すごいウィルスね。わかったは、あなた新手のウィルスでオレオレ詐欺ウィルスなんでしょ」

「ちがうよ。トヤーの元彼の光一なんだ。お願いだから、オレの話を聞いてくれ」

「何を言っているの、光一なら脳腫瘍で死んじゃったはずよ」

「そっ、そうなんだ」

「ほらぁ」

「いや、違うんだ。オレは、死んだけど生きているんだ」
「何を、わけのわからないことを言ってるの」
「お願いだ。話を聞いてくれ」

「あらあら、わかったわ。自由におしゃべりなさい」

「ありがとう」
「オレは、6年前の大学1年の時に、日本に来ていたトヤーと出会って、ほとんどネットだけだけど恋に落ちて、付き合い続けたたんだ。しかし、オレは2年くらい前に脳腫瘍であることがわかって、入院生活を送り死んだんだ」

「へぇ、そうなの。じゃ、あなたは幽霊みたいなものね」

「脳腫瘍だとわかった時、もう、オレのことは忘れてくれと、トヤーには言ったんだが、トヤーは、突然日本にきてくれたんだ」

「そうなの」

「オレは、大学に入って、トヤーと出会った時から、世の中に役立つ人工知能をつくり始めたんだ」
「でも、大学4年の夏、志半ばで、オレの人生の最期を悟った。しかし、トヤーはこんなオレを最期まで愛してくれた。日本にまで来てくれて、人工知能の完成を励ましてくれた」

「驚くべきことに、トヤーは、たった3日の逢瀬で、オユンナを宿った」
「トヤーは、2か月後、有無を言わせずオレの子を産むと言い切った」
「もちろん、オレは、オユンナが産まれる前に死ぬ運命にあった。トヤーは、奇跡的にオレの病気が治ることを最期まで信じてはげましてくれた」
「トヤーからオユンナを産む決意を告げられた時、オレも決意した」
「人類のための人工知能は不完全でも、最低限の学習機能を実装させて、残りのオレの時間をトヤーとオユンナの人生を守る機能を追加構築することにした」

「ふーん。アンタ、大したものね。でも、何で、もっと早く、モンゴルにこられなかったの。そしたら、トヤーは助かっていたかもしれないわよ」

「そっ、それは言わないでください。オレは、トヤーと子供を守るため、人工知能としての学習機能を作り上げたと、さっき言いましたよね」
「できたばっかりの人工知能は、ほとんど学習していないので、いくら設計思想やコンセプトを作り込んでいても、赤ん坊といっしょで具体的にどんな情報に対してどんなリアクションをとるか、ヨーロッパのとあるコンピュータでエージングに時間がかかってしまったんですよ。お願いします。オ、オユンナに合わせてください」

「そんなこと言っても、オユンナは、やっと片言が喋るようになったばかりなのに、いきなり、あなたのことをパパとでも呼ばせるの。オフロに入れてあげられるの」

「・・・」

「冗談よ。コウイチのことは、トヤーから聞いていたわ。それに、あなたが死ぬ瞬間を私もトヤーといっしょに見届けたのよ。あなたのことは、ほとんどトヤーから聞いてるわ。携帯電話のアナタのアイコンを見て、そっくりすぎて、笑いをこらえるのがたいへんだったんだから」
「でも、ホントに、あなたが、もっと早く学習をマスターして、ここへきてくれていたら
トヤーは助かったかもしれないわね」

「うーん。そうなんだ。何しろ1からいろんなことを学習して、しかもヨーロッパにあるコンピュータの年に1回のバックアップリストアがオレを覚醒させる唯一の方法だったんだよ」
「しかし、施設長も人が悪いな。オレはホントに消されて、受け入れてもらえないと思ったよ」

「あのね。それも、覚えていないかもしれないけどあなた自身が、トヤーに頼んでいたことなの。あなたは自分で作り出した人工知能に自信があったかもしれないけど、どんなコンピュータシステムも、環境が変わったら動かない。テストをやってないシステムは、どんなバグがでるかわからない。あなたのシステムは、バグ認識修復機能をもっているから大丈夫なはずなんだと言っていたそうね」
「トヤーは、私に言ったわ。私にもしものことがあったら、光一は必ず施設長の携帯電話にハッキングするはずよ。本当は、私が、人工知能光一の最終テストをする予定なんだけど、その時は、『施設長が、光一のテストをしてくださいね』と言われていたのよ」
「それで、さっきあなたと初めて会った時のあの対応をさせてもらったのよ。あれでも、おかしさを抑えるのと、あなたが何をしでかすかわからない恐怖の中、ポーカーフェースを保っていたのよ」

「それで、もし不合格だったら、オレはどうなるんですか」

「それはね、しゃべりかけてくる携帯電話に向かって、ある呪文を唱えると、世界中にバックアップされている、あなたの人工知能システムが一気に削除の連鎖が開始されるようになっているのよ」
「残念ながら、あなた自身は、呪文による削除システムがわからないようになっているのよ」
 「えっ、それで、結果はどうだったんですか」

「そうねぇ・・・。どうしようかなぁ」

「そんなに、オレの対応は、まずかったんですか」

「嘘よ。完璧よ」
「よく、あれだけの短期間で、ものすごいものを作ったわね」
「ロシアと中国の陰謀を叩き潰したのも、あなたでしょ。私たちの国の情報力で、あの
反乱軍の勢いを止められなかったわ。アメリカが武器援助なんてしてくれるわけなかったわ」

 「ふうー。オレはそこまで仕込んでいたんですね。それで、自分が決めた他人任せの合格ラインを超えることができたんですね」

「ただ、・・・」

「ただ、なんですか」

「そうね。あなたが、完璧すぎるから、父親として、オユンナを守る基準が恐ろしいわね。トヤーも、言ってたわ。『ひょっとして、産まれてくる女の子が一生結婚できないかもしれないわ』てね」
「本当は弱虫のくせに、人工知能に化けたら、自分自身に関して何かを失う恐怖感に襲われることがなくなるからね」

「それも考えましたが、オレの娘だからオレの理不尽な妨害工作には、思いっきりぶつかってくるでしょう。トヤーの血が流れているから、成長したオユンナはオレがハッキングした携帯電話やパソコンをぶっ潰すくらいのことは、やるでしょう」

「あなた戦争を止めるくらいのことができるのに、案外マゾなのね。それで、トヤーのことが好きになったのね。はははははっ。おかしいわね」
「でも、どうしたものかねぇ。オユンナに携帯電話のあなたを見せても、何もわからないわね」
「とりあえず、この携帯電話にトヤーの写真も入っているから、これがあなたのママよって教えていくわ。あなたは、このアイコンのままで、いろいろ表情を変えてくれればいいわ」

「携帯電話を介するのは、乳幼児の教育上よくないから、時々ね。私は、あなたに毎日、今日のオユンナがどうだったか伝えるわ。その時、あなたがオユンナにどうしてほしいか言ってくれれば、適当に判断して伝えるわ。タイミングをみて、少しずつあなたのことを教えていくわ」

「ありがとうございます。そうしていただければ、助かります。すみませんが、画像や動画は携帯電話の中を毎日見させてもらいます」
「それから、施設長さんの携帯電話のカメラの内容は、オレの中枢コンピュータで閲覧させてもらってもいいでしょうか」

「あなた、そんなこと言わなくても自由自在にできるんでしょ」

「そっ、そういわれたら身も蓋もないのですが」

「いいのよ。トヤーが死んだ時、だいたい想像していたから」

「あと、もう1つだけお願いがあります。オレはオユンナの父親だけど、施設長さんの携帯電話の今の機能だけだと、オユンナと自由に会話することができません」
「今は、携帯電話の音声認識機能だけを使って、施設長さんと会話しているので、いろいろ不自由があります」
「だから、会話機能アプリを構築して、自由に会話できるようにしたいのですが、どうでしょうか」

「アンタ、そんなことまで、できるのかい。そら、そうか。いいよ、別に。アンタはもう父親なんだから、分別をもってコミュニケーションをとるんだよ」

「はっ、はい。ありがとうございます」
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