アゲパン

LongingMoon

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第4編:88星座巡礼編

第81章 ペガスス座:記憶の迷宮

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序章:ひかり星海せいかい

ホシアゲほしあげ〉がったのは、ペガスス座第三惑星だいさんわくせいエイドロンえいどろん〉。
とおくからると静謐せいひつみずほしだったが、ちかづけば、無数むすう浮遊大陸ふゆうたいりくあわひかりはなちながら、ゆっくりと軌道きどうえがいている。
その光景こうけい僧侶そうりょおもわず口笛くちぶえいた。

「なんだよ、ここ……まるでゆめなかじゃねぇか」

イザナミいざなみ冷静れいせいスキャンすきゃんつづけながらうなずく。
「この惑星わくせい空気くうき非常ひじょう安定あんていしています。呼吸こきゅう可能かのう気温きおん快適かいてき。……ただし、精神干渉波せいしんかんしょうはつよく、意識いしき記憶領域きおくりょういきまれる危険きけんがあります」

ゆめなかじゃねぇか、ってった途端とたんホラーほらー展開てんかいかよ。もうれたけどさ」

ひかり廊下ろうか

着陸地点ちゃくりくちてんからつづ浮遊大陸ふゆうたいりくみちは、まるでとおった水晶すいしょう廊下ろうかだった。
僧侶そうりょ一歩いっぽあしれると、足元あしもと波紋はもんのようなひかりはしる。
つぎ瞬間しゅんかんかれ耳元みみもとこえひびいた。

「ようやく、かえってきたのですね」

「……いまの、こえたか?」

イザナミいざなみまゆを|ひそ》める。
わたしにはなにこえません。おそらく、あなたの記憶きおく直接ちょくせつ作用さようしているのでしょう」

僧侶そうりょ苦笑くしょうした。
「そういやおれ最近さいきんうちなるこえ”にやたらかれてるがするな」

記憶きおく迷宮めいきゅう

ひかり廊下ろうかさきには、巨大きょだい水晶群すいしょうぐん構成こうせいされた都市としのような構造物こうぞうぶつがあった。
僧侶そうりょあしれた途端とたん景色けしきゆがみ、かれ視界しかい一瞬いっしゅんべつ場所ばしょわった。

――かつての地球ちきゅう
少年時代しょうねんじだい夕暮ゆうぐれ。
なかには、まだげたにおいがのこる“パンぱん”。

「……なんだよ、これ」

なみだにじみ、僧侶そうりょこぶしにぎる。
そのよこつのは、当時とうじとも
もう、このには|いない、《あの笑顔えがお》。

わすれてないだろ? おれたちの約束やくそく

「……やめろよ。そんなことうなよ……」

イザナミいざなみ介入かいにゅう

イザナミいざなみ僧侶そうりょかたつよさぶった。
もどってきてください! あなたの意識いしきが、迷宮めいきゅうめられます!」

僧侶そうりょ必死ひっしけ、ふかいきいた。
景色けしきくずれ、ふたた水晶すいしょう廊下ろうか視界しかいもどる。

「はぁ……|あぶねぇ……。なんだよ、ここ、本気ほんきひとこわか?」

イザナミいざなみ淡々たんたん分析ぶんせきつづける。
「この惑星わくせいは“記憶きおく実体化じったいか”する性質せいしつっています。あなたのこころ奥底おくそこにある後悔こうかいねがいが、れられるかたちまえあらわれるのです」

こころ告白こくはく

そのよる浮遊大陸ふゆうたいりくふち二人ふたりほし見上みあげていた。
僧侶そうりょはぽつりとつぶやく。

おれさ……たまにおもうんだよ。
もし|あのとき、あいつらをたすけられてたら、今頃いまごろどうなってたのかな、って」

イザナミいざなみは|しばらく沈黙ちんもくしたあと、やわらかなこえった。
過去かこえられません。でも……そのいたみがあるから、あなたはあるつづけられるのでしょう?」

僧侶そうりょ苦笑くしょうする。
うねぇ、AIえーあいのくせに」

イザナミいざなみあわ微笑ほほえんだ。
わたしは、あなたのこころの“記録きろく”ですから」

記憶きおくおくもの

翌朝よくあさ都市とし中心部ちゅうしんぶ巨大きょだい水晶すいしょうかがやき、僧侶そうりょまえひとつのちいさな結晶けっしょうされた。
まるで「これをってけ」とげるように。

僧侶そうりょ結晶けっしょうれると、脳裏のうりやさしいこえひびく。

わすれるな、でも、しばられるな。
あるつづけるかぎり、記憶きおくちからになる」

僧侶そうりょはそっと結晶けっしょうにぎりしめ、〈ホシアゲほしあげ〉のハッチはっちもどった。

旅立たびだ

「なぁイザナミいざなみつぎほしは、どんな地獄じごくなんだろうな」

地獄じごくとはかぎりません。ただ……きびしいいをけてくるほしであることは、間違まちがいないでしょう」

僧侶そうりょ苦笑くしょうしながらスロットルすろっとるした。
「まぁいいさ。地獄じごくでも、楽園らくえんでも、どうせおれあしまらない」

ちゅうかぶ浮遊大陸ふゆうたいりくとおざかり、星海せいかいひろがる。
僧侶そうりょなかでは、あわひかり結晶けっしょうちいさな鼓動こどうきざつづけていた。
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