84 / 95
第4編:88星座巡礼編
第83章 ケンタウルス境界:崩れゆく炎の星
しおりを挟む序章:不安定な門
〈|ホシアゲ〉が到着した宙域は、異様な沈黙に包まれていた。
僧侶は操縦席から|メインスクリーン》を眺め、眉をひそめる。
「……何もねぇな。星は見えてるのに、声がしない」
|イザナミ》が淡々と解析結果を報告する。
「恒星〈|ケイオス・アルファ〉は崩壊の前段階にあります。内部反応が不安定で、質量放出のタイミングが予測できません。周辺の小惑星帯はすでに蒸発し、残るのは二つの準惑星のみ」
僧侶はため息をついた。
「そりゃ“声”がしないわけだ……みんな、もう死んじまったのか」
荒廃した大地
着陸した惑星〈|リカノス〉は、赤い砂と黒い岩の荒野だった。
熱波が吹き荒れ、地表の裂け目から不規則に火柱が噴き出している。
|イザナミ》が防護フィールドを展開しながら告げる。
「この惑星の生態系はすでに崩壊しています。残存する生命体は極微少数、しかも適応の限界に近い」
僧侶は砂をすくい上げ、じっと眺めた。
「命が……この砂の中で、まだ必死にしがみついてるってわけか」
出会い
廃墟のような峡谷を進む途中、僧侶たちは奇妙な生物を見つけた。
それは透明な膜で包まれた、小さな“光の種”のような存在だった。
群れで漂い、まるで消えかけた灯火が宙をさまよっているようだった。
|イザナミ》が解析を試みる。
「これは“プラズマ寄生体”。恒星の崩壊期に適応した特殊な有機体です。ですが、もう長くは保たないでしょう」
僧侶はその一つをそっと掌に受け止めた。
「お前らも……ここで終わるのか」
“光の種”はわずかに脈打ち、僧侶の掌の中で震えた。
崩壊の兆し
滞在三日目、恒星〈|ケイオス・アルファ〉が暴発的な質量放出を始めた。
警報が艦内に響く。
|イザナミ》が声を上げた。
「危険です! 惑星表層の温度が急激に上昇しています!」
僧侶は歯を食いしばった。
「まだ残ってるんだ。あの光の群れ……! 連れて行けねぇのか?」
|イザナミ》は一瞬ためらい、冷静に告げる。
「一部なら可能です。ですが、ここで留まればあなた自身が……」
「わかってる! でも、見捨てるのは嫌だ!」
命の移送
僧侶は峡谷へ駆け戻り、崩れ落ちる岩をかわしながら光の種を次々と拾い集めた。
その姿は、かつての巡礼地で命の儚さを目の当たりにした彼とはどこか違っていた。
――今は、見届けるだけでなく“繋ぐ”ために動いていた。
|イザナミ》が緊急収容|モジュール》を展開し、残された命を船内へ搬送する。
数十個の光が、かすかな希望として〈ホシアゲ〉の内部で脈打ち始めた。
別れ
軌道を離れた直後、恒星〈|ケイオス・アルファ〉は最後の叫びを上げた。
巨大な光の奔流が宇宙を駆け抜け、惑星〈|リカノス〉を飲み込み、やがて静寂が訪れた。
僧侶はその光景を、ただ黙って見ていた。
そして低くつぶやいた。
「お前らのこと、忘れねぇよ」
|イザナミ》が静かに答える。
「あなたが連れ出した命は、まだ終わっていません。次の地で、また息を吹き返すかもしれません」
僧侶は小さく頷き、拳を握った。
「だったら、俺がその場所まで連れていく」
旅路の果てに
艦の後部区画で光の種たちが微かに瞬く。
それは、遠い未来に訪れる新たな惑星での再生を約束するかのようだった。
僧侶は星図を見つめながら、独り言のように言った。
「次は……どんな星なんだろうな」
|イザナミ》の声が穏やかに響く。
「次は、ケンタウルス境界の内側。豊かな海と大気を持つ未調査の惑星です。彼らを下ろす場所としては、理想的かもしれません」
僧侶は|ふっ》と笑い、操縦桿を握りしめた。
「じゃあ決まりだな。俺たちの次の目的地だ」
〈|ホシアゲ〉が軌道を離れ、崩壊した星の残光を背に、深い宇宙の闇へと飛び去っていった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
王様の恥かきっ娘
青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。
本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。
孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます
物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります
これもショートショートで書く予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
