アゲパン

LongingMoon

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第4編:88星座巡礼編

第83章 ケンタウルス境界:崩れゆく炎の星

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序章:不安定ふあんていな門

〈|ホシアゲ〉が到着とうちゃくした宙域ちゅういきは、異様いよう沈黙ちんもくに包まれていた。
僧侶そうりょ操縦席そうじゅうせきから|メインスクリーン》を眺め、眉をひそめる。

「……何もねぇな。星は見えてるのに、声がしない」

|イザナミ》が淡々と解析かいせき結果を報告する。
恒星こうせい〈|ケイオス・アルファ〉は崩壊ほうかい前段階ぜんだんかいにあります。内部ないぶ反応はんのう不安定ふあんていで、質量しつりょう放出ほうしゅつのタイミングが予測よそくできません。周辺しゅうへん小惑星帯しょうわくせいたいはすでに蒸発じょうはつし、残るのは二つの準惑星じゅんわくせいのみ」

僧侶そうりょはため息をついた。
「そりゃ“声”がしないわけだ……みんな、もう死んじまったのか」

荒廃こうはいした大地

着陸ちゃくりくした惑星〈|リカノス〉は、赤い砂と黒い岩の荒野こうやだった。
熱波ねっぱが吹き荒れ、地表ちひょう裂け目さけめから不規則ふきそく火柱ひばしらが噴き出している。

|イザナミ》が防護ぼうごフィールドを展開てんかいしながら告げる。
「この惑星の生態系せいたいけいはすでに崩壊ほうかいしています。残存ざんぞんする生命体せいめいたい極微少数ごくびしょうすう、しかも適応てきおう限界げんかいに近い」

僧侶そうりょは砂をすくい上げ、じっと眺めた。
「命が……この砂の中で、まだ必死にしがみついてるってわけか」

出会い

廃墟はいきょのような峡谷きょうこくを進む途中、僧侶そうりょたちは奇妙きみょう生物せいぶつを見つけた。
それは透明とうめいまくで包まれた、小さな“ひかりたね”のような存在だった。
群れむれただよい、まるで消えかけたきえかけた灯火ともしびちゅうをさまよっているようだった。

|イザナミ》が解析かいせきを試みる。
「これは“プラズマ寄生体きせいたい”。恒星こうせい崩壊期ほうかいき適応てきおうした特殊とくしゅ有機体ゆうきたいです。ですが、もう長くは保たないでしょう」

僧侶そうりょはその一つをそっとてのひらに受け止めた。
「お前らも……ここで終わるのか」

“光の種”はわずかに脈打みゃくうち、僧侶そうりょてのひらの中で震えた。

崩壊ほうかいきざ

滞在たいざい三日目、恒星こうせい〈|ケイオス・アルファ〉が暴発的ぼうはつてき質量放出しつりょうほうしゅつを始めた。
警報けいほう艦内かんないに響く。

|イザナミ》が声を上げた。
危険きけんです! 惑星わくせい表層ひょうそう温度おんど急激きゅうげき上昇じょうしょうしています!」

僧侶そうりょは歯を食いしばった。
「まだ残ってるんだ。あの光の群れ……! 連れて行けつれていけねぇのか?」

|イザナミ》は一瞬ためらい、冷静れいせいに告げる。
一部いちぶなら可能かのうです。ですが、ここで留まればあなた自身が……」

「わかってる! でも、見捨てるみすてるのは嫌だ!」

命の移送いそう

僧侶そうりょは峡谷へ駆け戻り、崩れ落ちるくずれおちる岩をかわしながら光の種を次々つぎつぎと拾い集めた。
その姿は、かつての巡礼地じゅんれいちいのちはかなさを目の当たりまのあたりにした彼とはどこか違っていた。
――今は、見届けるだけでなく“つなぐ”ために動いていた。

|イザナミ》が緊急きんきゅう収容しゅうよう|モジュール》を展開てんかいし、残された命を船内せんない搬送はんそうする。
数十個すうじゅっこの光が、かすかなかすかな希望きぼうとして〈ホシアゲ〉の内部で脈打みゃくうち始めた。

別れ

軌道きどうを離れた直後ちょくご恒星こうせい〈|ケイオス・アルファ〉は最後さいごさけびを上げた。
巨大きょだいな光の奔流ほんりゅう宇宙うちゅうを駆け抜け、惑星〈|リカノス〉を飲み込み、やがて静寂せいじゃくが訪れた。

僧侶そうりょはその光景こうけいを、ただ黙って見ていた。
そしてひくくつぶやいた。
「お前らのこと、忘れねぇよ」

|イザナミ》がしずかに答える。
「あなたが連れ出つれだした命は、まだ終わっていません。つぎの地で、またいき吹き返ふきかえすかもしれません」

僧侶そうりょちいさくうなずき、こぶしにぎった。
「だったら、俺がその場所まで連れていく」

旅路たびじてに

かん後部こうぶ区画くかくで光の種たちがかすかにまたたく。
それは、とお未来みらいに訪れるあらたな惑星わくせいでの再生さいせい約束やくそくするかのようだった。

僧侶そうりょ星図せいずを見つめながら、ひとごとのように言った。
「次は……どんな星なんだろうな」

|イザナミ》の声がおだやかに響く。
「次は、ケンタウルス境界ケンタウルスきょうかい内側うちがわゆたかなうみ大気たいきを持つ未調査みちょうさ惑星わくせいです。彼らを下ろす場所としては、理想的りそうてきかもしれません」

僧侶そうりょは|ふっ》と笑い、操縦桿そうじゅうかんにぎりしめた。
「じゃあ決まりだな。俺たちの次の目的地もくてきちだ」

〈|ホシアゲ〉が軌道きどうを離れ、崩壊ほうかいした星の残光ざんこうを背に、ふか宇宙うちゅうやみへと飛び去っていった。
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