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第4編:88星座巡礼編
第92章 光の縁ふち
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そう思ったが、まぶたという概念が残っているのかさえ分からなかった。
僧侶たちは、ただ「在る」という感覚に包まれていた。
空でも地でもない、上下も時間も存在しない空間。
だが、決して虚無ではなかった。
そこには 光の縁 があった。
それは形を持たない縁取りだった。
どこまでも広がる白い呼吸のような輝きが、ゆるやかに脈動し、遠くからこちらを見つめているように感じられた。
「ここが……|ケノン文明……?」
年若い僧侶が、思考の中でつぶやいた。声にしなくても、全員が聞こえる。不思議と恐怖はなかった。
「そうやで。ここが“縁”や」
ひときわ軽い声が、光の奥から響いた。
|ポポカ|だった。
その姿は、相変わらず掴みどころのない影と、きらめく破片をまとった存在として揺らめいている。
しかし今は、その輪郭の奥に、かすかな重みと静けさがあった。
「宇宙っちゅうもんは、ここで終わりやない。
あんたらが“世界”やと思ってたんは、ただの器やったんや。
|ほんま|の舞台は、まだこれからやで」
光の縁が、ふっと波打つ。
僧侶たちの意識の奥底に、見たことのない景色が流れ込んできた。
――星々が重なり、交差し、無限の層を描く多階的な宇宙。
――意識と物質が一つの言語として交わる領域。
――過去も未来も、一本の糸のように指先で手繰れる世界。
「でも、気ぃつけや。ここは“可能性”の縁でもある。
踏み出し方を間違えたら、あんたらは“自分”を保たれへん。
……まあ、そんなに難しいことやないけどな。心の声を忘れんこと、それが鍵や」
僧侶の一人が、そっと問いを投げた。
「|ポポカ|……あなたは、ここで何をしているんですか?」
|ポポカ|は少しだけ間を置き、にやりと笑った。
「ワイか? ワイは……“橋”や。
あんたらがこっちに来れるように、昔から、ちょっとずつ道を開けとったんや。
なんせ、ここに来てくれる奴が現れるんを、ずっと待っとったからな」
その声には、珍しく照れのような響きが混じっていた。
そして、柔らかな光が僧侶たちを包み込む。
「さあ、歩きや。縁の向こうに、あんたらの“答え”が待っとる」
僧侶たちは一歩を踏み出した――重力も時間もない世界で。
光の縁が波紋のように揺れ、遠い鐘の音が宇宙全体に鳴り響いた。
その瞬間、彼らの旅は、新しい段階へと移ろい始めた。
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