プルートの逆襲

LongingMoon

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十五. 月 

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 じいさんは墓前で、3ヶ月前に死んでしまったばあさんのことを思い出していた。

ーじいさんについてー

本名:ミハエル・ウルマノフ
年齢:85歳
職業:あまりはっきりしたことはわからないが、どこかの大学で教鞭をとっていたらしい。

  地球でばあさんが骨粗鬆症とリウマチのため日々やせ細ってしまい、医者からしばらく月の病院で療養することを勧められた。そして、3ヶ月滞在の予定が2ヶ月で姉さん女房のばあさんの容態は悪化し、そのまま死んでしまった。享年90歳だった。
ばあさんは、死ぬ直前、「是非自分を月の墓に埋めてほしい」と言い残した。
じいさんがばあさんに理由を聞くと、ばあさんは昔からかぐや姫の話が好きで「月に埋めてもらったら、かぐや姫に生まれ変われるかもしれないからのぉ」と言っていた。
それでじいさんは、ばあさんの最後の頼みを聞いてやることにした。そして、そのまま月を離れられずにいた。すると、月の老人ホームで変なうわさ話が持ちっきりとなった。その噂とは、地球で奇妙な病気がはやっていることやその裏では大きな組織と政治家が蠢いているというものだった。
 じいさんの情報網では、その政治家は昔からの知り合いらしいということがわかってきた。更に探りをいれたところ、奇妙な病気の原因は人工ウィルスであるということもわかってきた。
この事件の核心的な部分は、その政治家の息の掛かったバイオ会社の研究所や工場が冥王星にあり、そこでウィルスが作られており、その抗ウィルス剤も既に作られているとのことであった。また、そのウィルスに感染した患者が強い紫外線を浴びると症状を悪化させるとのことであった。地球ではいったん減少傾向にあったオゾン層の破壊再燃がとまらず、ただでさえその問題は深刻になっていた。そして、じいさんは傷心の身ではあったが残り少ない人生で、ばあさんの元へ行く前にもう一働きする決心をした。インターネットにホームページを開設し、共に冥王星を目指す仲間を募った。

  じいさんは、ばあさんとの思い出に浸りながら墓前で酒を飲んでいた。月や月の近辺にあるスペースコロニーに居住する人たちは、ドームに囲まれた月の墓地に埋葬されることを望んだ。スペースコロニーにも墓地はあったが、半永久的に地球を回り続ける月で眠ることを多くの人は望んだ。スペースコロニーの住民にとって墓参も、地球より月の方がはるかに行きやすかったこともあった。

そのうち星の1つが見る見るうちに大きくなり、そこから1kmほど離れた宙港に着陸した。
「おーい」
「じいさーん。お待たせ」
「おじーさーん」
「じいさんのおかげて、ここまでこれたよ」
「ウルマノフ博士、初めまして」

ロケットが着陸してから30分ほどすると宇宙服を着た5人が手をふりながら、それぞれじいさんに声をかけながら近づいてきた。
「皆、よく来てくれた。美鈴のじいさんには、申し訳ないことをしたな」
「そんなぁ」

墓前に、それぞれの慣習にしたがい今は亡きばあさんに祈りをささげたあと、じいさんと握手の手を重ねた。
それからじいさんの住む老人ホームの部屋で、世界中で起こっているなぞのウィルスが陰謀であり、そのウィルスの抗ウィルス剤を手に入れるためには冥王星に向かう必要があり、どの様な計画、航路で目指すかを聞いた。
  月では、宇宙船の整備でエネルギー補給のため1泊することになり、じいさんの部屋で航海の無事を祈って乾杯した。
カズは1人、水杯でふてくされていた。そして老人ホームで、泊めてもらうお礼にクリスと美鈴が一肌ぬいだ。
「オレは、宇宙位置の曲芸師だぜ。見てろ」
クリスはお年寄り相手にピエロスタイルで得意の大道芸月面バージョンを披露した。20個のお手玉。
「ぶらぼー。ぶらぼー」
お手玉が得意な老人たちも、ジャグリングで鍛えられたクリスの技に魅了された。

美鈴も負けじとカンフー月面バージョン、5回転空中回し蹴りの型や月の石空手割りをやってみせた。
老人たちは、拍手喝さいを送った。
「お嬢ちゃんすごいけど、それじゃ嫁の貰い手ないよ」
「まぁ。それもそうね」
そして、全員で世界中の歌を歌いながら楽しいひとときをすごした。

月でのじいさんの準備は、万端だった。
  翌朝、さっそく火星に向かってミロメシアは旅立った。
離陸してまもなく、どこで嗅ぎつけたのか、ミロメシア後方の3機の船影がレーダーに映し出され、セバスチャンは即座に認識した。
「おいでなすったな」
敵艦3機は、ミロメシアを進行方向の頂点として同時に逆三角錐の頂点方向から攻めてきた。
「3機のお客さんだ。ひき付けて一気にせん滅するぜ。ちょっとG(重力)かかるけど、我慢してくれよな」
クリスが顔を引きつらせた。
「げげっ。こんなとこまで、追ってくるのか」
美鈴もカズも、引きつっていた。
セバスチャンは、月の外に向けていた進路を、いったん月の周回軌道にシフトさせていった。すると、3機の敵機はミロメシアの軌道にひきずられて、徐々にミロメシア後方の一点に重なりながら、追尾する形を取り始めた。ミロメシアは、月の周回軌道を3周したところで、少し減速し敵機を引きつけていった。
 「そろそろ、やるぜ」
セバスチャンはロケットをいきなり方向転換し月面に向かわせた。3機は再び振り切られそうになりながらも追跡し続けた。セバスチャンはまたもや低空飛行で巨大クレータに存在する起伏とそこに存在する狭い月穴をくぐりぬけていった。すると3隻は次々とクレータ壁面に接触し大破していった。敵をみごとにまくことができたが、特にクリスと美鈴はひどい船酔いとなった。ドクターに看てもらったが、回復するのに半日のときが必要であった。

星間移動は、かなり退屈なものでもあったが、ミロメシアにはかなりの設備が施されてあった。まず、バーチャルリアリティでは、ゴルフ、スキー、サーフィン、スノボー、ダイビングなどのスポーツ施設があった。全て道具は実物で、ゴルフクラブ、スキー板、スノボー板にサーフィン板があった。
閉鎖された水槽で水流を使ったダイビングなどもあった。魚も泳いでいる。バーチャルではあったが。
 ミロメシアのクルーたちは、学校を休んでこのミッションに参加したカズの勉強の遅れを心配してくれた。
カズの勉強は、通信教育のプラネットスクール以外にも、じいさんとドクターの生きたレクチャーを受けることができた。特別講義としては、セバスチャンの宇宙航空力学もあった。カズは、父親の影響もあり宇宙船の操縦に興味を持ち、操縦方法についても教えてもらった。
皆、それぞれ読書、研究、音楽、映画など思い思いにときをすごした。
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