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二十. 冥王星前哨戦
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ミロメシアは、まずは冥王星の衛星カロンに着陸した。カロンにはほとんど大気はなく、見晴らしはよかった。また、カロンの方から見た冥王星にも、地球と比べると存在しないに等しいくらいの大気しかなかった。
実際、冥王星には、わずかに窒素、メタンと一酸化炭素の大気があり、それも太陽から離れている時と、近づいている時では違っていた。
冥王星に対してカロンの大きさは、直径で2分の1くらいの大きさで、その2つの星の重心は冥王星の外にあり、お互いに回りあっているというのが正確な表現だった。大きさの目安としては、おおよそ直径比で地球:月:冥王星:カロン=10:3:2:1くらいであった。
「なんだぁ。ちょっと聞きかじった話と違うな。冥王星もカロンとあんまりかわらないぜ。ここからでも、冥王星のハートマークの地形がくっきり見えるし、2つの星の大きさからして、やっぱり、ほとんど大気みたいなもんなんて存在しなかったんだな」
セバスチャンですら、自分がまさか10年前に訪れた海王星を超えて、もはや惑星でもなくなった冥王星まで到達できたという感慨にふけっていた。
美鈴とクリスとカズは、自分たちのミッションに意識を振り向けようとしたが、宇宙飛行士でもない自分たちが冥王星までやってきたことに困惑ぎみだった。
「ここから、どうやって冥王星に行けるのか、ボクには全然わかんないや」
「ボウズ、あんまり心配するなよ。ここまできたら腹くくって行くしかないさ」
「クリス、何言ってんの。カロンと冥王星は、わずか2万km弱なのよ」
「んなことは、わかってらぁ」
「美鈴の意見は正しい。ここからは、敵のテリトリーだと思っていい。無事にカロンへ到着できたのではなく、敵はわざと我々をカロンへひきずりこんだという見方もできる」
じいさんは、内心そう確信していた。
21世紀初頭に、冥王星は準惑星に降格させられたが、その存在は太陽系外縁部の重要な研究課題となっていた。
2015年に初の民間提案型ロケットである「ニューホライズンズ」によって、その正体はほぼ明らかになっていた。
2199年に有人ロケットがカロンに着陸し、初めて人類がその大地を踏みしめた。それ以来、エッジワースカイパーベルトやオールトの雲の研究第一線として、研究施設が作られていった。人が居住するにはあまりにも太陽から離れ過ぎており、居住するというレベルの施設はなく、地熱を利用してカロンと冥王星の地下にアリの巣型のコロニーが作られていったというレベルの話だった。
もちろん、冥王星とカロンは地球や月と比べて遥かに小さく、やはり、通常の筒型の回転重力型で1Gのスペースコロニーがあり、人は定期的にコロニーと惑星と衛星の間を行き来し、地球の重力をベースとした生命を維持していた。
冥王星の衛星カロンでは、23世紀初頭に、1つの地下コロニーを中心に5つの地下コロニーが作られ、それぞれ、Cセントラル、Cイースト、Cウェスト、Cサウス、Cノースと呼ばれていた。カロンと冥王星は、お互いに常に同じ側面を見せ合うように自転・公転をしていた。
ちなみに月と地球も常に同じ側面を見せるように自公転している。
衛星カロンを基軸としたコロニー建築物は冥王星との往来のため、冥王星側に集中して作られていった。コロニー間移動には地下通路が作られ超電導を使った磁力車両(リニアモーターカーこと、リニア)が使われていた。
じいさんの作戦では、まず比較的国連配下にある国際宇宙連合の統治が安定しているカロンに着陸し、どこかの研究機関に紛れ込んで冥王星移動に便乗してしまおうというものであった。じいさんは、強引な作戦であることも認識しながら、裏の裏をかくしかないと考えていた。
カロンは、敵の支配下にある空間であることも認識していたが、じいさんにとって昔から絶対的に信じられる友人もいたことが、じいさんの判断の根拠だった。
カロンへの着陸は、入星管理局によって完全管理されており、Cセントラルの宙港への着陸しか認められず、ミロメシアはそこへ着陸した。ターミナルビルからCセントラルの地下コロニーへ行く過程では、敵のいる様子はなかった。
Cセントラルのレストランでミロメシアのクルー6人+クリック少年が食事をしていると、突然白髪でよぼよぼのじじいが泥酔した様子で近寄ってきた。我らがじいさんにしては珍しくかなり驚いた表情に変わったように見えた。
「このじじぃ。オレになんか文句でもあんのか。@+*<>?・・・」
酔っ払いじじいが、訳のわからないことを叫びながら、じいさんに杖で殴りかかろうとした。
「何するのよ。この酔っ払いじじぃ」
すかさず、美鈴がじいさんの前に立ちはだかり、杖をたたき落とし、酔っ払いじじぃをねじ伏せてしまった。
「いててっ。お嬢さん。レディはもっとおしとやかにセクシーにしとくもんだよ」
酔っ払いじじぃは、ねじ伏せられた腕を痛がりながらも、いやらしい笑顔をふりまいた。
「何わけわかんないこと言ってるのよ。誰か早く警察を呼んでよ」
美鈴は頭に血を昇らせて、ますます強くねじ伏せながら叫んだ。
5分もしないうちに、この星の警察がやってきた。
「これはお嬢さん協力ご苦労さんです。全く、毎度毎度しょうがないじじぃで、酔っ払っては暴れて困ってるんですよ。酒さえ飲まなければ本当にいいじいさんなんだがなぁ」
「でもこれじゃどっちが暴漢かわからんな」
ぼそっ一人の警官が漏らした。
「あんたたちは、どこ見てんのよ。このかよわい女子が危機にさらされているのに」
まわりは、しーんとなり、冷たい空気が流れた。
「まっ、これに懲りて変な気をおこすんじゃないぞ」
じいさんが、じじぃの手をとり警察へ引き渡した。
「おお、これはじいさん、あんたは命の恩人じゃ」
暴漢のじじぃは、じいさんの手を握り鼻を近づけロシア式のあいさつをかわした。
「ほんとこりゃどっちが犯人かわからんな」
クリスは、苦笑いした。
美鈴はムスッとしていた。
カズは、酔っ払いじじぃがじいさんの耳元で何か囁いたのを見逃さなかった。酔っ払いじじぃは、ほどなく連行されていってしまい、皆は席に着いた。
レストランにアンケートがあり、我らがじいさんが何やら空欄に書いていた。
「レストランの店員の中に敵のスパイがいる。やつらは我々をCサウスの研究所の宇宙船に乗せて、その宇宙船ごと冥王星に連行しようという腹だ。ここはうまく立ち回ってCウェストの研究所からの宇宙船に乗るべきだ。さっきの酔っ払いじじぃは、わしの親友じゃ」
そこには、そう書いてあった。
「Cウェストにどうやって、いくのですか」
じいさんが、レジで尋ねた。
「ここからCウェスト直通のリニアは、事故で止まってるよ。Cウェストへは、Cサウス経由で行くのが一番早いよ」
若い男の店員が案の定、そう返した。
「これは、これは、ご親切にありがとう」
ターミナルへ行ってみると、本当にCウェスト行きのリニアは、事故で止まっていた。それは、敵の工作活動であったのかもしれない。そこで、Cノース経由で冥王星行くことにした。
しかし、じいさんは、突然咳ごみながら体調不良を訴えた。
「一度ミロメシアに戻る。悪いが、先にみんなでCノースからCウェストへ行ってくれ。必ず、後から行くから」
そして、そそくさとミロメシアを預けたドック行きのターミナルへ行ってしまった。
残りのクルーは、Cノース行きのターミナルへ向かった。そして、リニアに乗って何事もなくCノースへ着いた。それから、まずCノースの市街地の中心部を経由してCウェスト行きのターミナルへの地下通路を歩いていった。通路は薄暗かったが、その先にはターミナルの明かりが見えていた。10分ほどで、一行はCウェスト行きターミナルに着いた。
ターミナルには、他に誰もいなかった。次の発車時刻まで1時間くらいあった。みんなはそれぞれたわいもない話をしていたが、暇をもてあましたクリックがシャッターの閉まったターミナル事務所の中をしきりに覗き込んでいた。すると、突然クリックがみんなに向かって声をあげた。
「敵だ。敵が通路をこちらに向かって近づいてきているよ。10人くらいはいたよ」
リニアがくるまで、30分以上あった。
すかさず、ドクターが口を開いた。
「よし、かなり危険な賭けだが、地上に出てじいさんに迎えに来てもらおう。おそらく、じいさんもそのくらいの腹づもりがあっての行動だろう。ただ、CノースかCウェストかは、わからんかもしれんが」
クリスが、不思議そうな顔をした。
「しかしこの閉ざされた部屋のどこから外へ出るんだ」
すると、カズがしたり顔で、言い放った。
「クリスはわかってないな。こんな時、正義の味方は排気口から脱出するにきまってるじゃん」
「まるで、出来すぎた映画のストーリーのように、ここには体の小さな男の子がいるし。ねえ、クリック。クリックちゃん、今はあなたが頼りよ」
美鈴がウィンクをとばした。
クリスの視線は、天井の一点に向いていた。
「よし、じゃあの天井のすみっこのパネルだな。3メートルはあるな。3段だな。美鈴がクリックを肩車して、オレの肩の上に立つんだ。おっと、先にこの万能ドライバーをクリックに渡しておかないと」
「あんた本当にプロね」
美鈴がニヤリと笑った。
「まあな」
クリスは、更にクリックの肩へ携帯用のロープをたすき掛けすることも忘れなかった。
一同の白い目が、クリスに向けられた。
「お嬢さんもうちょっとダイエットした方がいいんじゃない」
美鈴を肩に乗せたクリスは、減らず口をたたきながら立ち上がった。美鈴の肩の上で、クリックが立ち上がり、クリスの指示を受けながら排気口をこじ開けた。排気口に入り込んだクリックは、排気口の蝶つがいにロープをひっかけて下へ垂らした。まず、美鈴が登った。そして、カズ、セバスチャンが登った。ドクターは、簡単に登れそうもないので、クリスが下から押し上げながら、セバスチャンが上から引き揚げた。クリスは最後にスルスルっと登った。
6人は、真っ暗な排気口の中を、クリスのペンライトの明かりを頼りに、右往左往しながら進み、上へ登ることができる通路に出られるパネルを求めてさまよった。Cノース市街方面通路へ向かうこともできたかもしれないが、それは敵とはち合わせる危険が高く、その選択肢はなかった。シャッターの隙間から覗き込んだターミナル事務所のレイアウトの記憶を頼りに通路がありそうな方向へ進んでいった。
10分ほどさまよったところで見つかったパネルをあけると緊急用エレベータのある通路へ出ることができた。
「これだな。このエレベータの出口にはシールドされたドームがあって、外部から救援活動ができるように、ハッチもあるはずだ」
しかし、敵の追跡は容赦なく、どうやってターミナル事務員を呼び出し交渉したのか、あるいは買収したのか、シャッターを開けてもらって通路に侵入してきた。どうやら、待合室のモニタビデオを再生してもらい排気口へ入り込んだことがばれてしまったようであった。敵は、普段、人の出入りのない通路に人が通った痕跡を見つけてカズたちを追跡し始めた。
カズたちは、500メートルはあろうかという高速エレベータの最上階を降りた後、急いで、地上目指して階段を登っていった。
地上までは、まだ100メートル以上はあった。敵もエレベータボタンを押してすぐに、カズたちをおいかけてきた。
地上まで、ちょうど50メートルの時点で、かすかに敵の足音が聞こえ始めてきた。カズたちの中でもクリックとドクターのスピードには限界があった。敵も全員ではなかったが、そのうちの3人は足が速く猛烈ないきおいで追跡してきた。もちろん、彼等はレーザー銃を持っている。このままでは、地上まで20メートル付近を過ぎたところで追いつかれることが予想された。そこで、階段を登りながら敵を足止めさせる作戦を考えようということになった。階段の途中にある非常扉を閉じて簡単に開かないようにすることにした。非常扉は10メートルごとにあった。これには、クリスとセバスチャンの2人があたり、他のメンバーはひたすら階上へ急いでもらうことになった。2人は、ひたすら非常扉を無理やり閉じて、鍵を壊していくという作業を繰り返した。
カズたちは無事に地上まで出ることができた。すぐに、じいさんに連絡しようとした時、ミロメシアは、そこから100メートルほど離れた緊急用の宙港の端っこに泊まっていた。そこで、じいさんがほほ笑んでいるように見えた。緊張感みなぎっていたみんなの顔が一気にゆるんだ。
しかし、まだクリスとセバスチャンは、あがってこない。敵のスピードは予想以上に早く、2人の間近に3人の足音がせまっていた。そして、5分ほどすると銃撃戦の音が階段をこだました。
美鈴の顔は、阿修羅のような形相に変わり、階段の方へ向かいかけた。
「クリス達があぶない。私もいっしょに戦うわ」
ドクターが、美鈴を制止した。
「今行っても危険が増えるだけで、逃げてくるのを待って応戦するんだ」
じいさんが武器の入ったカートを運んできてた。
「美鈴待つんだ」
「ここに、レーザービームとハンディタイプの迫撃砲がある。上で、レーザービームを乱射して、まず音で敵をかく乱するんじゃ。クリス達は、必ず先に登ってくるはずじゃ。それを信じるんじゃ。そして、クリス達が来たら、こいつで入口を塞いでしまうんじゃ」
じいさんが、迫撃砲を指さした。
それから5分程して、クリス達は上がってきた。民間人のクリスは恐怖で顔がひきつり、必死の形相だった。美鈴とカズは、じいさんが持ってきたレーザー乱射後、もう階段の一つ下の踊り場で敵を待ち構え、援護射撃を行っていた。敵は怯んでいったん1つ下の踊り場まで後退した。
「今だ。すぐ上がってこい」
じいさんが叫んだ。
その合図で、4人が一気に入口の外まで出てきた。じいさんとドクターは、迫撃砲の発射態勢に入っていた。そして、一気に入口を破壊した。全クルーは、じいさんが、準備してきた宇宙服を着用し、ミロメシアを目指して、一斉に走りだした。ミロメシアは、スタンバイのエンジン音をたてていた。
「よしオレに任せろ」
セバスチャンは叫びながら、コックピットの操縦桿を握った。
そして、ミロメシアは爆音を立てて、宙へ舞い上がった。
離陸してしばらくすると、どこからともなく、敵の宇宙船団がレーダーへ映り出した。すでに、怪しい気配を感じ取っていたセバスチャンは、みんなに席をたたないように指示しており、あっという間に敵を引きずりながらのカロンの周回飛行に入っていった。セバスチャンは、カロンの大地の起伏を利用して周回しながら、敵を殲滅してしまおうという作戦に出た。
しかし、今回、敵にはすでにセバスチャンの腕前や得意技が認識されており、カロンを3周4周としているうちに対空砲による待ち伏せがあって、カロン上空へ舞い上がらざるを得なくなった。そうなると、何の障壁もないので、大量の数で攻撃され続けられると対抗するのにも限界があった。セバスチャンはカロン上空から太陽系の外宇宙へ向かってカジを切った。
太陽系の外宇宙は、冥王星も含めてエッジワースカイパーベルトと呼ばれる密度の低い小惑星帯がある。小惑星帯といっても星と星の間隔は、地球をはじめとする太陽に近い惑星群と比べるとかなり遠いものであった。
外宇宙を目指してミロメシアを進めている限り、大量の敵から逃がれて冥王星やカロンへ戻ってくることは不可能に近いと思われた。
「右舷4時の方向へ進路をとれ」
じいさんが突然と大声をあげた。
「その方向、11AU(地球と太陽間距離の11倍)に小惑星があるじゃろ。とにかく、そちらに向けて全速前進じゃ」
以心伝心、セバスチャンは即座にじいさんの言葉をそれとなく理解し、「右舷4時へ全速前進」と復唱した。
そして、ミロメシアはそちらの方に向かって惑星間航行加速モードへ入った。
カズたちのミロメシアは、反物質エンジンを装備しているので通常の核融合型ロケットより遠距離航行が可能であった。
「このまま、進めば長くて3日ほどで、敵のすべての船は追撃をあきらめるはずじゃ。それでも我々は、8日間そのまま逃げ続ける。そうすれば、その方向に小惑星が姿を見せるはずじゃ。わしは、カロンから逃げる途中、作戦の一つとして適当な準惑星がないか、探し続けていた。名前はわからんが、そいつは冥王星の倍くらいはあるはずじゃ」
じいさんが言い放った。
「アポロ13号作戦ですね」
セバスチャンがじいさんに視線を向けた。
じいさんの作戦は、反物質の能力を活かして燃料的に敵がついてこられなくなるところまで逃げて、あとは慣性航行を続けて、適当な重力を持つ準惑星で、スイングバイという航法でかえってくるという作戦だった。ひとつ間違えば、二度と帰ってこられない危険な作戦でもあった。しかし、敵のレーダー追尾からミロメシアをいったん完全に消し去るには、それしか方法はなかった。
「スイングバイは覚えているな」
セバスチャンが、今度はカズに視線を向けた。
「もちろん。これまで何回もやってきたし」
カズはみんなに説明を始めた。
スイングバイ航法とは、星の重力を利用して宇宙船の運動方向を変更する航法。様々な星の重力に捕まったふりをして、天体との距離を調整して、宇宙船を増速・減速あるいは脱出時の加速タイミングで進行方向を変えるができる。重力アシスト あるいは重力ターンとも呼ばれる。
星の重力および公転運動を利用することにより、燃料をほとんど使わずに軌道を変更し、速さも変えることができるのが特徴である。このため、宇宙探査機を惑星や太陽系外へ送り出すためによく使われる。
スイングバイは燃料を使わずに、速度を変えることが可能なので、ロケットや探査機に搭載する燃料の節約になり、同じ総重量の探査機であれば、その分多くの機器を搭載することが可能になる。この航法は、すでに20世紀末の無人惑星探査で確立された航法で、惑星間航行には不可欠な航法となっている。
余談であるが、有人の月ロケット「アポロ13号」が液化酸素タンクの爆発事故のために月面着陸はおろか、地球にさえ帰ってこられない状況となった時にスイングバイ航法で帰還した。宇宙船に搭載する酸素は、乗員の呼吸に必要なだけでなく、燃料電池に用いられるエネルギー源であり、その結果として水も生み出す重要物資であった。酸素の喪失は、ミッションの継続を不可能とさせるばかりか、乗員の生命を危機にさらす結果となった。できるだけ酸素を浪費しないように、本船とは独立した電源などを持つ月着陸船を「救命ボート」代わりに利用した。また、極力電力を節約するため船内気温を生命の維持に必要な最低レベルにまで落とすなど、飛行士たちの奮闘と地上管制官たちの支援によって「アポロ13号」は“奇跡の生還”を果たした。
噴射には危険が伴うため、アポロ13号は月の引力を利用してスイングバイによるターンを行った。このとき、アポロ13号は地球から最大40万km以上離れていたが、月とわずか250kmくらいまで接近した。地球から直接見ることができない月の裏側を見ることができたことが飛行士たちの精神的な救いだったかもしれない。
じいさんの作戦は、逃げ切れなくなったミロメシアが、二度と帰ってこられないところへ追い込まれ、そのクルーたちは悲嘆にくれる。そして、何十年もかけて人類が住める惑星があるかどうかもわからないお隣の恒星を目指すと見せかけて、実はスイングバイで帰ってくるというシナリオだった。敵に、一切疑いをかけられずに、ミロメシアの存在を忘れさせるための方策であった。
実際、冥王星には、わずかに窒素、メタンと一酸化炭素の大気があり、それも太陽から離れている時と、近づいている時では違っていた。
冥王星に対してカロンの大きさは、直径で2分の1くらいの大きさで、その2つの星の重心は冥王星の外にあり、お互いに回りあっているというのが正確な表現だった。大きさの目安としては、おおよそ直径比で地球:月:冥王星:カロン=10:3:2:1くらいであった。
「なんだぁ。ちょっと聞きかじった話と違うな。冥王星もカロンとあんまりかわらないぜ。ここからでも、冥王星のハートマークの地形がくっきり見えるし、2つの星の大きさからして、やっぱり、ほとんど大気みたいなもんなんて存在しなかったんだな」
セバスチャンですら、自分がまさか10年前に訪れた海王星を超えて、もはや惑星でもなくなった冥王星まで到達できたという感慨にふけっていた。
美鈴とクリスとカズは、自分たちのミッションに意識を振り向けようとしたが、宇宙飛行士でもない自分たちが冥王星までやってきたことに困惑ぎみだった。
「ここから、どうやって冥王星に行けるのか、ボクには全然わかんないや」
「ボウズ、あんまり心配するなよ。ここまできたら腹くくって行くしかないさ」
「クリス、何言ってんの。カロンと冥王星は、わずか2万km弱なのよ」
「んなことは、わかってらぁ」
「美鈴の意見は正しい。ここからは、敵のテリトリーだと思っていい。無事にカロンへ到着できたのではなく、敵はわざと我々をカロンへひきずりこんだという見方もできる」
じいさんは、内心そう確信していた。
21世紀初頭に、冥王星は準惑星に降格させられたが、その存在は太陽系外縁部の重要な研究課題となっていた。
2015年に初の民間提案型ロケットである「ニューホライズンズ」によって、その正体はほぼ明らかになっていた。
2199年に有人ロケットがカロンに着陸し、初めて人類がその大地を踏みしめた。それ以来、エッジワースカイパーベルトやオールトの雲の研究第一線として、研究施設が作られていった。人が居住するにはあまりにも太陽から離れ過ぎており、居住するというレベルの施設はなく、地熱を利用してカロンと冥王星の地下にアリの巣型のコロニーが作られていったというレベルの話だった。
もちろん、冥王星とカロンは地球や月と比べて遥かに小さく、やはり、通常の筒型の回転重力型で1Gのスペースコロニーがあり、人は定期的にコロニーと惑星と衛星の間を行き来し、地球の重力をベースとした生命を維持していた。
冥王星の衛星カロンでは、23世紀初頭に、1つの地下コロニーを中心に5つの地下コロニーが作られ、それぞれ、Cセントラル、Cイースト、Cウェスト、Cサウス、Cノースと呼ばれていた。カロンと冥王星は、お互いに常に同じ側面を見せ合うように自転・公転をしていた。
ちなみに月と地球も常に同じ側面を見せるように自公転している。
衛星カロンを基軸としたコロニー建築物は冥王星との往来のため、冥王星側に集中して作られていった。コロニー間移動には地下通路が作られ超電導を使った磁力車両(リニアモーターカーこと、リニア)が使われていた。
じいさんの作戦では、まず比較的国連配下にある国際宇宙連合の統治が安定しているカロンに着陸し、どこかの研究機関に紛れ込んで冥王星移動に便乗してしまおうというものであった。じいさんは、強引な作戦であることも認識しながら、裏の裏をかくしかないと考えていた。
カロンは、敵の支配下にある空間であることも認識していたが、じいさんにとって昔から絶対的に信じられる友人もいたことが、じいさんの判断の根拠だった。
カロンへの着陸は、入星管理局によって完全管理されており、Cセントラルの宙港への着陸しか認められず、ミロメシアはそこへ着陸した。ターミナルビルからCセントラルの地下コロニーへ行く過程では、敵のいる様子はなかった。
Cセントラルのレストランでミロメシアのクルー6人+クリック少年が食事をしていると、突然白髪でよぼよぼのじじいが泥酔した様子で近寄ってきた。我らがじいさんにしては珍しくかなり驚いた表情に変わったように見えた。
「このじじぃ。オレになんか文句でもあんのか。@+*<>?・・・」
酔っ払いじじいが、訳のわからないことを叫びながら、じいさんに杖で殴りかかろうとした。
「何するのよ。この酔っ払いじじぃ」
すかさず、美鈴がじいさんの前に立ちはだかり、杖をたたき落とし、酔っ払いじじぃをねじ伏せてしまった。
「いててっ。お嬢さん。レディはもっとおしとやかにセクシーにしとくもんだよ」
酔っ払いじじぃは、ねじ伏せられた腕を痛がりながらも、いやらしい笑顔をふりまいた。
「何わけわかんないこと言ってるのよ。誰か早く警察を呼んでよ」
美鈴は頭に血を昇らせて、ますます強くねじ伏せながら叫んだ。
5分もしないうちに、この星の警察がやってきた。
「これはお嬢さん協力ご苦労さんです。全く、毎度毎度しょうがないじじぃで、酔っ払っては暴れて困ってるんですよ。酒さえ飲まなければ本当にいいじいさんなんだがなぁ」
「でもこれじゃどっちが暴漢かわからんな」
ぼそっ一人の警官が漏らした。
「あんたたちは、どこ見てんのよ。このかよわい女子が危機にさらされているのに」
まわりは、しーんとなり、冷たい空気が流れた。
「まっ、これに懲りて変な気をおこすんじゃないぞ」
じいさんが、じじぃの手をとり警察へ引き渡した。
「おお、これはじいさん、あんたは命の恩人じゃ」
暴漢のじじぃは、じいさんの手を握り鼻を近づけロシア式のあいさつをかわした。
「ほんとこりゃどっちが犯人かわからんな」
クリスは、苦笑いした。
美鈴はムスッとしていた。
カズは、酔っ払いじじぃがじいさんの耳元で何か囁いたのを見逃さなかった。酔っ払いじじぃは、ほどなく連行されていってしまい、皆は席に着いた。
レストランにアンケートがあり、我らがじいさんが何やら空欄に書いていた。
「レストランの店員の中に敵のスパイがいる。やつらは我々をCサウスの研究所の宇宙船に乗せて、その宇宙船ごと冥王星に連行しようという腹だ。ここはうまく立ち回ってCウェストの研究所からの宇宙船に乗るべきだ。さっきの酔っ払いじじぃは、わしの親友じゃ」
そこには、そう書いてあった。
「Cウェストにどうやって、いくのですか」
じいさんが、レジで尋ねた。
「ここからCウェスト直通のリニアは、事故で止まってるよ。Cウェストへは、Cサウス経由で行くのが一番早いよ」
若い男の店員が案の定、そう返した。
「これは、これは、ご親切にありがとう」
ターミナルへ行ってみると、本当にCウェスト行きのリニアは、事故で止まっていた。それは、敵の工作活動であったのかもしれない。そこで、Cノース経由で冥王星行くことにした。
しかし、じいさんは、突然咳ごみながら体調不良を訴えた。
「一度ミロメシアに戻る。悪いが、先にみんなでCノースからCウェストへ行ってくれ。必ず、後から行くから」
そして、そそくさとミロメシアを預けたドック行きのターミナルへ行ってしまった。
残りのクルーは、Cノース行きのターミナルへ向かった。そして、リニアに乗って何事もなくCノースへ着いた。それから、まずCノースの市街地の中心部を経由してCウェスト行きのターミナルへの地下通路を歩いていった。通路は薄暗かったが、その先にはターミナルの明かりが見えていた。10分ほどで、一行はCウェスト行きターミナルに着いた。
ターミナルには、他に誰もいなかった。次の発車時刻まで1時間くらいあった。みんなはそれぞれたわいもない話をしていたが、暇をもてあましたクリックがシャッターの閉まったターミナル事務所の中をしきりに覗き込んでいた。すると、突然クリックがみんなに向かって声をあげた。
「敵だ。敵が通路をこちらに向かって近づいてきているよ。10人くらいはいたよ」
リニアがくるまで、30分以上あった。
すかさず、ドクターが口を開いた。
「よし、かなり危険な賭けだが、地上に出てじいさんに迎えに来てもらおう。おそらく、じいさんもそのくらいの腹づもりがあっての行動だろう。ただ、CノースかCウェストかは、わからんかもしれんが」
クリスが、不思議そうな顔をした。
「しかしこの閉ざされた部屋のどこから外へ出るんだ」
すると、カズがしたり顔で、言い放った。
「クリスはわかってないな。こんな時、正義の味方は排気口から脱出するにきまってるじゃん」
「まるで、出来すぎた映画のストーリーのように、ここには体の小さな男の子がいるし。ねえ、クリック。クリックちゃん、今はあなたが頼りよ」
美鈴がウィンクをとばした。
クリスの視線は、天井の一点に向いていた。
「よし、じゃあの天井のすみっこのパネルだな。3メートルはあるな。3段だな。美鈴がクリックを肩車して、オレの肩の上に立つんだ。おっと、先にこの万能ドライバーをクリックに渡しておかないと」
「あんた本当にプロね」
美鈴がニヤリと笑った。
「まあな」
クリスは、更にクリックの肩へ携帯用のロープをたすき掛けすることも忘れなかった。
一同の白い目が、クリスに向けられた。
「お嬢さんもうちょっとダイエットした方がいいんじゃない」
美鈴を肩に乗せたクリスは、減らず口をたたきながら立ち上がった。美鈴の肩の上で、クリックが立ち上がり、クリスの指示を受けながら排気口をこじ開けた。排気口に入り込んだクリックは、排気口の蝶つがいにロープをひっかけて下へ垂らした。まず、美鈴が登った。そして、カズ、セバスチャンが登った。ドクターは、簡単に登れそうもないので、クリスが下から押し上げながら、セバスチャンが上から引き揚げた。クリスは最後にスルスルっと登った。
6人は、真っ暗な排気口の中を、クリスのペンライトの明かりを頼りに、右往左往しながら進み、上へ登ることができる通路に出られるパネルを求めてさまよった。Cノース市街方面通路へ向かうこともできたかもしれないが、それは敵とはち合わせる危険が高く、その選択肢はなかった。シャッターの隙間から覗き込んだターミナル事務所のレイアウトの記憶を頼りに通路がありそうな方向へ進んでいった。
10分ほどさまよったところで見つかったパネルをあけると緊急用エレベータのある通路へ出ることができた。
「これだな。このエレベータの出口にはシールドされたドームがあって、外部から救援活動ができるように、ハッチもあるはずだ」
しかし、敵の追跡は容赦なく、どうやってターミナル事務員を呼び出し交渉したのか、あるいは買収したのか、シャッターを開けてもらって通路に侵入してきた。どうやら、待合室のモニタビデオを再生してもらい排気口へ入り込んだことがばれてしまったようであった。敵は、普段、人の出入りのない通路に人が通った痕跡を見つけてカズたちを追跡し始めた。
カズたちは、500メートルはあろうかという高速エレベータの最上階を降りた後、急いで、地上目指して階段を登っていった。
地上までは、まだ100メートル以上はあった。敵もエレベータボタンを押してすぐに、カズたちをおいかけてきた。
地上まで、ちょうど50メートルの時点で、かすかに敵の足音が聞こえ始めてきた。カズたちの中でもクリックとドクターのスピードには限界があった。敵も全員ではなかったが、そのうちの3人は足が速く猛烈ないきおいで追跡してきた。もちろん、彼等はレーザー銃を持っている。このままでは、地上まで20メートル付近を過ぎたところで追いつかれることが予想された。そこで、階段を登りながら敵を足止めさせる作戦を考えようということになった。階段の途中にある非常扉を閉じて簡単に開かないようにすることにした。非常扉は10メートルごとにあった。これには、クリスとセバスチャンの2人があたり、他のメンバーはひたすら階上へ急いでもらうことになった。2人は、ひたすら非常扉を無理やり閉じて、鍵を壊していくという作業を繰り返した。
カズたちは無事に地上まで出ることができた。すぐに、じいさんに連絡しようとした時、ミロメシアは、そこから100メートルほど離れた緊急用の宙港の端っこに泊まっていた。そこで、じいさんがほほ笑んでいるように見えた。緊張感みなぎっていたみんなの顔が一気にゆるんだ。
しかし、まだクリスとセバスチャンは、あがってこない。敵のスピードは予想以上に早く、2人の間近に3人の足音がせまっていた。そして、5分ほどすると銃撃戦の音が階段をこだました。
美鈴の顔は、阿修羅のような形相に変わり、階段の方へ向かいかけた。
「クリス達があぶない。私もいっしょに戦うわ」
ドクターが、美鈴を制止した。
「今行っても危険が増えるだけで、逃げてくるのを待って応戦するんだ」
じいさんが武器の入ったカートを運んできてた。
「美鈴待つんだ」
「ここに、レーザービームとハンディタイプの迫撃砲がある。上で、レーザービームを乱射して、まず音で敵をかく乱するんじゃ。クリス達は、必ず先に登ってくるはずじゃ。それを信じるんじゃ。そして、クリス達が来たら、こいつで入口を塞いでしまうんじゃ」
じいさんが、迫撃砲を指さした。
それから5分程して、クリス達は上がってきた。民間人のクリスは恐怖で顔がひきつり、必死の形相だった。美鈴とカズは、じいさんが持ってきたレーザー乱射後、もう階段の一つ下の踊り場で敵を待ち構え、援護射撃を行っていた。敵は怯んでいったん1つ下の踊り場まで後退した。
「今だ。すぐ上がってこい」
じいさんが叫んだ。
その合図で、4人が一気に入口の外まで出てきた。じいさんとドクターは、迫撃砲の発射態勢に入っていた。そして、一気に入口を破壊した。全クルーは、じいさんが、準備してきた宇宙服を着用し、ミロメシアを目指して、一斉に走りだした。ミロメシアは、スタンバイのエンジン音をたてていた。
「よしオレに任せろ」
セバスチャンは叫びながら、コックピットの操縦桿を握った。
そして、ミロメシアは爆音を立てて、宙へ舞い上がった。
離陸してしばらくすると、どこからともなく、敵の宇宙船団がレーダーへ映り出した。すでに、怪しい気配を感じ取っていたセバスチャンは、みんなに席をたたないように指示しており、あっという間に敵を引きずりながらのカロンの周回飛行に入っていった。セバスチャンは、カロンの大地の起伏を利用して周回しながら、敵を殲滅してしまおうという作戦に出た。
しかし、今回、敵にはすでにセバスチャンの腕前や得意技が認識されており、カロンを3周4周としているうちに対空砲による待ち伏せがあって、カロン上空へ舞い上がらざるを得なくなった。そうなると、何の障壁もないので、大量の数で攻撃され続けられると対抗するのにも限界があった。セバスチャンはカロン上空から太陽系の外宇宙へ向かってカジを切った。
太陽系の外宇宙は、冥王星も含めてエッジワースカイパーベルトと呼ばれる密度の低い小惑星帯がある。小惑星帯といっても星と星の間隔は、地球をはじめとする太陽に近い惑星群と比べるとかなり遠いものであった。
外宇宙を目指してミロメシアを進めている限り、大量の敵から逃がれて冥王星やカロンへ戻ってくることは不可能に近いと思われた。
「右舷4時の方向へ進路をとれ」
じいさんが突然と大声をあげた。
「その方向、11AU(地球と太陽間距離の11倍)に小惑星があるじゃろ。とにかく、そちらに向けて全速前進じゃ」
以心伝心、セバスチャンは即座にじいさんの言葉をそれとなく理解し、「右舷4時へ全速前進」と復唱した。
そして、ミロメシアはそちらの方に向かって惑星間航行加速モードへ入った。
カズたちのミロメシアは、反物質エンジンを装備しているので通常の核融合型ロケットより遠距離航行が可能であった。
「このまま、進めば長くて3日ほどで、敵のすべての船は追撃をあきらめるはずじゃ。それでも我々は、8日間そのまま逃げ続ける。そうすれば、その方向に小惑星が姿を見せるはずじゃ。わしは、カロンから逃げる途中、作戦の一つとして適当な準惑星がないか、探し続けていた。名前はわからんが、そいつは冥王星の倍くらいはあるはずじゃ」
じいさんが言い放った。
「アポロ13号作戦ですね」
セバスチャンがじいさんに視線を向けた。
じいさんの作戦は、反物質の能力を活かして燃料的に敵がついてこられなくなるところまで逃げて、あとは慣性航行を続けて、適当な重力を持つ準惑星で、スイングバイという航法でかえってくるという作戦だった。ひとつ間違えば、二度と帰ってこられない危険な作戦でもあった。しかし、敵のレーダー追尾からミロメシアをいったん完全に消し去るには、それしか方法はなかった。
「スイングバイは覚えているな」
セバスチャンが、今度はカズに視線を向けた。
「もちろん。これまで何回もやってきたし」
カズはみんなに説明を始めた。
スイングバイ航法とは、星の重力を利用して宇宙船の運動方向を変更する航法。様々な星の重力に捕まったふりをして、天体との距離を調整して、宇宙船を増速・減速あるいは脱出時の加速タイミングで進行方向を変えるができる。重力アシスト あるいは重力ターンとも呼ばれる。
星の重力および公転運動を利用することにより、燃料をほとんど使わずに軌道を変更し、速さも変えることができるのが特徴である。このため、宇宙探査機を惑星や太陽系外へ送り出すためによく使われる。
スイングバイは燃料を使わずに、速度を変えることが可能なので、ロケットや探査機に搭載する燃料の節約になり、同じ総重量の探査機であれば、その分多くの機器を搭載することが可能になる。この航法は、すでに20世紀末の無人惑星探査で確立された航法で、惑星間航行には不可欠な航法となっている。
余談であるが、有人の月ロケット「アポロ13号」が液化酸素タンクの爆発事故のために月面着陸はおろか、地球にさえ帰ってこられない状況となった時にスイングバイ航法で帰還した。宇宙船に搭載する酸素は、乗員の呼吸に必要なだけでなく、燃料電池に用いられるエネルギー源であり、その結果として水も生み出す重要物資であった。酸素の喪失は、ミッションの継続を不可能とさせるばかりか、乗員の生命を危機にさらす結果となった。できるだけ酸素を浪費しないように、本船とは独立した電源などを持つ月着陸船を「救命ボート」代わりに利用した。また、極力電力を節約するため船内気温を生命の維持に必要な最低レベルにまで落とすなど、飛行士たちの奮闘と地上管制官たちの支援によって「アポロ13号」は“奇跡の生還”を果たした。
噴射には危険が伴うため、アポロ13号は月の引力を利用してスイングバイによるターンを行った。このとき、アポロ13号は地球から最大40万km以上離れていたが、月とわずか250kmくらいまで接近した。地球から直接見ることができない月の裏側を見ることができたことが飛行士たちの精神的な救いだったかもしれない。
じいさんの作戦は、逃げ切れなくなったミロメシアが、二度と帰ってこられないところへ追い込まれ、そのクルーたちは悲嘆にくれる。そして、何十年もかけて人類が住める惑星があるかどうかもわからないお隣の恒星を目指すと見せかけて、実はスイングバイで帰ってくるというシナリオだった。敵に、一切疑いをかけられずに、ミロメシアの存在を忘れさせるための方策であった。
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