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第60話 サプライズプレゼント
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国王陛下と王妃殿下の退室を見送って、私はほっと息をついた。
「お疲れ様」
笑って労いの声をかけてくる殿下に振り返り、私はジト目で睨みつけた。
「本当です。何の予告も無くだなんて酷いです。心の臓が飛び出しそうでしたよ!」
ジェラルドさんが私を気遣ってお声がけしてくれていたのもきっとこの事だったんだ。おそらく殿下に口止めされて結局、言い出せなかったのだろうけれど。
「悪い悪い。君へのサプライズプレゼントだったんだ」
「サプライズプレゼント……」
福祉施設への支援は確かにサプライズプレゼントだった。これなら父もきっと喜んで受けてくれると思う。
落ち着いて考えると、殿下をたやすく非難することもできない。
「殿下はうちの事情をご存知だったのですか」
「私の侍女付きにする以上は当然、調査はさせてもらっている」
それもそうだ。いくら貴族の娘とは言え、王宮入りする以上、身辺調査されるのは当たり前だろう。
「前から君に侍女としての給金を渡すだけではちょっと不足を感じていたし、かと言って優遇するのも難しいし、そもそも君は拒否していたし、何か無いだろうかと考えていたところ、この事案を思い出したんだ」
「そうですか。……殿下」
私は殿下に向かって礼を取る。
「ありがとう存じます。深く感謝いたします」
「ああ。喜んでもらえて良かった」
意地悪な笑顔ではなく、あでやかで零れるような笑みに思わずどきりとして慌ててそっぽを向く。
「で、殿下もたまには粋なことをなさるのですね。たまにはっ」
「うん。その一言が無かったら完璧だったな」
照れ隠しに憎まれ口を叩いた私に殿下は可笑しそうに笑った。
……はい。さすがに私もそう思います。
ちょっと自己嫌悪してしまう。
「どうした?」
急に黙り込んだ私の顔を覗き込もうとした殿下にびっくりして、二、三歩後ずさった。
いきなりお綺麗な顔を近づけて来ないでください!
「……ロザンヌ嬢?」
殿下が少し眉をひそめたので、その場を誤魔化すために私は大きく手を打つ。
「ああああそうだっ!」
「な、何だ?」
「わ、わくたし! で、殿下にお伝えしようということがあったのだったです!」
「……妙な言葉使いだが、大丈夫か? やはりいきなり父上と母上を連れてきたのが良くなかったか。緊張の糸が切れたんだな」
私の挙動不審さに、殿下はとうとうドン引きながらも納得したようで一人頷いた。
すみません。お気持ちはありがたいのですが、お気の毒そうに見つめるのは止めていただきたいです。でも何か誤魔化せたみたいだからいいです……。
「それで? 何だ?」
「え、えっと、で、でんあっ」
「……いや、落ち着いたらでいい。とりあえず座れ」
私はお言葉に甘えてソファーに座り、深呼吸して息を整える。その間、殿下は私の向かい側のソファーに腰を下ろした。
呼吸が落ち着いたところで。
「ご、ごほん。そ、それでは申し上げます」
「ああ」
「数日前から考えていた事です。殿下はお忙しい身とは承知しているのですが、お時間が空いた時、わたくしにお付き合いいただきたいのです」
「え?」
まるで私が逢い引きに誘っているようにでも聞こえたのか、意外そうに目を見張る殿下。
私は慌てて手を振って付け加える。
「あ、ち、違いますよ。お、王宮回りを致しませんか、ということです!」
「つまり何だ。私に王宮を案内しろということか?」
途端に腕を組み不愉快そうな態度に変わる殿下に、私はむしろ心が落ち着いた。
「いえ。そうではなく、王宮にはびこる影の掃除をしてみてはどうかと思いまして。ですが、わたくしは影を見ることはできませんので、殿下に場所を特定していただきたいのです」
人に憑く影の居場所はその人の行動に依存するけれど、場所に憑く影ならばそこに行けば確実に会える。
「ああ。そういうことか」
殿下は顎に拳を当てながら浮かない顔で考え込む。
「駄目でしょうか」
「いや。王宮の影を一掃させたいのは山々だが、君を連れ歩くのは得策ではないかもしれないと思ってな」
ああ、そっか。殿下と一緒に歩いて、目立った行動を取るべきじゃないかな。せっかくこの部屋でベール姿でいるのに意味が無くなってしまう。
「良い考えだと思ったのですが……」
私はしゅんと肩を落とした。
「お疲れ様」
笑って労いの声をかけてくる殿下に振り返り、私はジト目で睨みつけた。
「本当です。何の予告も無くだなんて酷いです。心の臓が飛び出しそうでしたよ!」
ジェラルドさんが私を気遣ってお声がけしてくれていたのもきっとこの事だったんだ。おそらく殿下に口止めされて結局、言い出せなかったのだろうけれど。
「悪い悪い。君へのサプライズプレゼントだったんだ」
「サプライズプレゼント……」
福祉施設への支援は確かにサプライズプレゼントだった。これなら父もきっと喜んで受けてくれると思う。
落ち着いて考えると、殿下をたやすく非難することもできない。
「殿下はうちの事情をご存知だったのですか」
「私の侍女付きにする以上は当然、調査はさせてもらっている」
それもそうだ。いくら貴族の娘とは言え、王宮入りする以上、身辺調査されるのは当たり前だろう。
「前から君に侍女としての給金を渡すだけではちょっと不足を感じていたし、かと言って優遇するのも難しいし、そもそも君は拒否していたし、何か無いだろうかと考えていたところ、この事案を思い出したんだ」
「そうですか。……殿下」
私は殿下に向かって礼を取る。
「ありがとう存じます。深く感謝いたします」
「ああ。喜んでもらえて良かった」
意地悪な笑顔ではなく、あでやかで零れるような笑みに思わずどきりとして慌ててそっぽを向く。
「で、殿下もたまには粋なことをなさるのですね。たまにはっ」
「うん。その一言が無かったら完璧だったな」
照れ隠しに憎まれ口を叩いた私に殿下は可笑しそうに笑った。
……はい。さすがに私もそう思います。
ちょっと自己嫌悪してしまう。
「どうした?」
急に黙り込んだ私の顔を覗き込もうとした殿下にびっくりして、二、三歩後ずさった。
いきなりお綺麗な顔を近づけて来ないでください!
「……ロザンヌ嬢?」
殿下が少し眉をひそめたので、その場を誤魔化すために私は大きく手を打つ。
「ああああそうだっ!」
「な、何だ?」
「わ、わくたし! で、殿下にお伝えしようということがあったのだったです!」
「……妙な言葉使いだが、大丈夫か? やはりいきなり父上と母上を連れてきたのが良くなかったか。緊張の糸が切れたんだな」
私の挙動不審さに、殿下はとうとうドン引きながらも納得したようで一人頷いた。
すみません。お気持ちはありがたいのですが、お気の毒そうに見つめるのは止めていただきたいです。でも何か誤魔化せたみたいだからいいです……。
「それで? 何だ?」
「え、えっと、で、でんあっ」
「……いや、落ち着いたらでいい。とりあえず座れ」
私はお言葉に甘えてソファーに座り、深呼吸して息を整える。その間、殿下は私の向かい側のソファーに腰を下ろした。
呼吸が落ち着いたところで。
「ご、ごほん。そ、それでは申し上げます」
「ああ」
「数日前から考えていた事です。殿下はお忙しい身とは承知しているのですが、お時間が空いた時、わたくしにお付き合いいただきたいのです」
「え?」
まるで私が逢い引きに誘っているようにでも聞こえたのか、意外そうに目を見張る殿下。
私は慌てて手を振って付け加える。
「あ、ち、違いますよ。お、王宮回りを致しませんか、ということです!」
「つまり何だ。私に王宮を案内しろということか?」
途端に腕を組み不愉快そうな態度に変わる殿下に、私はむしろ心が落ち着いた。
「いえ。そうではなく、王宮にはびこる影の掃除をしてみてはどうかと思いまして。ですが、わたくしは影を見ることはできませんので、殿下に場所を特定していただきたいのです」
人に憑く影の居場所はその人の行動に依存するけれど、場所に憑く影ならばそこに行けば確実に会える。
「ああ。そういうことか」
殿下は顎に拳を当てながら浮かない顔で考え込む。
「駄目でしょうか」
「いや。王宮の影を一掃させたいのは山々だが、君を連れ歩くのは得策ではないかもしれないと思ってな」
ああ、そっか。殿下と一緒に歩いて、目立った行動を取るべきじゃないかな。せっかくこの部屋でベール姿でいるのに意味が無くなってしまう。
「良い考えだと思ったのですが……」
私はしゅんと肩を落とした。
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