つかれやすい殿下のために掃除婦として就くことになりました

樹里

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第165話 両親の元に

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 そういえば殿下は私の両親に挨拶したいとおっしゃっていたけれど、今日、お見えになるのかな。と言うか、さっき殿下も助けてくれなかったな。
 と思いながら、両親がいるゲストルームをノックするとすぐに返事があった。
 内側から扉を開けてくれたのはユリアだ。

「お帰りなさいませ。旦那様も奥様もお待ちです」
「ありがとう」

 ユリアも本日のお仕事はもう終わりなのかな。

「お父様、お母様。戻りました」
「ええ。お帰りなさい」
「疲れただろう」

 ソファーに腰掛けていた両親は立ち上がって私を出迎えてくれた。

 室内は家族の人数も考慮されて場所の広さが変わるそうだけれども、ただ、上級貴族と下級貴族ではまた内装が変わるそうだ。上級貴族が下級貴族と同じでは納得しないからなのだろうと推測する。
 それでもこの部屋もとても広く綺麗であるし、調度品にも文句をつける所は何もない。

「はい。とても疲れました」

 ラマディエル公爵子息にダンスに誘われ、殿下と人気のない所でダンスをし、けんか腰のクラウディア嬢を相手し、助けてくださったマリアンジェラ様とお話しし、色々な事が今日一日で起こりすぎた。

「お父様とお母様もお疲れでは?」
「ええ。そうね。久々の王都ですから、わたくしも少し浮き足立ってしまったわ」
「私もお酒を頂いてほろ酔いだったんだがね、エルベルト殿下が私どもにご挨拶をと、足をお運びいただいた時は驚いて一気に酔いから醒めたよ」
「え!? で、殿下がこちらに!?」

 もう既にお見えになっていたとは。

「ええ。ご挨拶だけ頂いたらお帰りになられたけれど。他にも回られるのですって。お忙しい御身ですものね」

 あ、そうか。あの場に殿下はいらっしゃらなかったんだ。じゃあ、分かってて知らぬ振りをしたわけじゃなかったのね。……そりゃあ、まあ、そうよね。

 無能殿下め!
 などと、ほんのちょっとだけでも考えて申し訳ありませんでした。

「さあ。座りなさい」
「はい。ユリア、行きましょう」

 ユリアの手を引っ張ると、彼女はここは王宮ですからと渋る。

「えー。いいじゃない。ユリアも行こう」
「いえ。私は」
「ユリアも座りなさい。もう訪問者はないだろうし」

 父からそう言われてユリアは一瞬ためらったようだけれど、母も同じように促したので彼女は私の横に腰掛けた。

「ユリアはこの後どうするの? まだお仕事? 王宮の使用人室に戻らないとだめなの?」
「いえ。本日の仕事は終わりました。クロエさんからは好きにして良いと言われました」

 建前上は王宮の女中ではあるが、元々ユリアは私の侍女として入って来たから自由が利くのだろう。

「そう! じゃあ、久々に一緒ね! 今日は一緒に寝よ! いいですよね、お父様」
「ああ。好きにしなさい」

 私は父に確認すると笑顔で頷いた。

「じゃあ、ユリア。一緒に寝ようねー」
「はあ……」

 ユリアは少しはにかんだような笑みを見せる。
 すると母が意外そうに目を見張った。

「ユリア、あなた少し雰囲気が変わったわね」
「え?」
「表情が前よりも柔らかくなった気がするわ」
「……そうでしょうか」
「ええ。ねえ、あなた」

 母は父に同意を求めて視線を流した。

「うん。私もそう思うよ。ここに来て良い影響を受けたのかな」

 ユリアは王宮に来て、たくさんの人々と接したり、路上生活時代の人物と出会ったりと、色々心の変化があったのだろう。
 個人的にはジェラルドさんとの出会いが良かったのではないかと思う。彼の誠実さや優しさ、寛容さに触れ、また時にはライバル心もあったかもしれないけれど、そういった様々なものがユリアの心に影響したに違いない。

「そうです。よくぞ分かってくれました! ユリアはこの王宮で、今この瞬間からもぐんぐん成長を遂げているのです!」

 それらが両親にも分かってもらえて嬉しくなり、胸を張ると父はうんうんと嬉しそうに頷く。

「そうね。ユリアがとても成長したのは分かったわ。ユリアにはロザンヌを任せっきりだものね。いつも申し訳なく思っているわ。苦労をかけている分、あなたには幸せでいてもらいたいの」
「……ありがとうございます」

 微笑するユリアに母は頷くと、次に私を見た。

「それであなたはどうかしら。お口を引き締める頬の力は成長したのかしら?」

 母がにっこり笑って話を振ってきたので、私は目を逸らすと唇を突き出し、ひゅうと音の抜けた口笛を吹いた。
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