かぐや姫奇譚?ー求婚者がダメンズばかりなんですがー

青太郎

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19 ダメンズ

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ひと通り求婚者達を見てきたわけだが…

…あれらは結婚相手としてどうなんだろう…?

いや、結婚はしないのだけど。

屋敷に返ってきた俺は、大きなエジコという名のベットで求婚者達の事を振り返る。

『…下界の男に碌なのが居ない事がわかりました』

「…いやいや、確かに癖の強いヤツばっかりだったけど…そんな奴ばかりではない…と…思う」

つい、自信の無さが声の後半に出てしまっ
た…。

『…』

「…天界の男には癖の強い奴とか変な奴はいないのか?」

下界の男と天界の男は違うのだろうか?

『…天界の男…ですか…?』

お姫様の戸惑ったような声が聞こえる。

『…比べられる程、異性の知り合いが居ません…』

「え…」

あ、そうか。…高貴なお姫様だもんな。
男の知り合いとか少なそうだな…。

でも、何人か知り合いくらいは…

「…えっと、…あ、ほら、例えば求婚してくれてた奴とかは…?」

求婚してくるくらいなのだから多少は相手の事を知っているだろう…

『…よく…知らない相手なので、わかりません…』

…あ、見極めてないんだったな…。

そもそも友達とかも少なそうだし…。

『…』

「…ま、まぁ、でも結婚する前に色んな事に気付けて良かったんじゃないか」

『…』

「…結婚したら簡単に別れる事も出来ないし…」

『…』

「…お互い…不幸になるより…」

『…』

「な…」

『…』

「…」


…空気が重たい…。

…どうもフォローは失敗したようだ…。


若干話題運びを間違えた為に気まずい空気にはなったが、とりあえず求婚者達はしばらくのあいだ様子見しておけば良さそうだ。

なんとなくこれからの方針は決まった。

方針が決まれば日々の動きも決まってくる。


それからは空いた時間に求婚者達の様子を見に行ったり、影の移動で都の様子を見に行ったり、爺さん婆さんとのんびりと過ごしつつ穏やかな日々を送った。



仏の御石の鉢を探しに行った石作皇子は順調に参詣の旅を過ごしている。

偶に旅の様子を見に行くと、のんびりと移動しては途中の寺や荘園にて何日も宿泊し、飽きる頃に次へと移動している。

割と田舎へと移動しているので旅への愚痴が多くなっているが、お供の人達は本気で願掛け等をしている者が多い為、寺巡り出来て嬉しそうだ。

滅多にない参詣の旅なので皆この貴重な機会に真剣にお参りしているのだろう。

…しかし、肝心の石作皇子は信心も何も無さそうな様子で行く先々で一時の恋を楽しんでいる。

旅先を散策しては評判の娘の情報を集め、垣根の隙間から相手を確かめつつ得意の笛と歌を披露している。

恋の駆け引きに関しては石作皇子は中々の勝率で俺はその手腕に感心し、お姫様はドン引きしていた。

なんだかんだと文句を言っている割に旅を満喫しているように見える。

しかし、やはり田舎に行くほど人口と共に出会いも減っている為、そろそろ耐えられなくなりつつある。

『この者は…目先の事しか考えていないのですね』

「いや、目先というか本能のまま動いてるな…」

お姫様には言えないが男として…少しだけ…そう、少しだけ羨ましく思う部分もあった。

 

蓬莱の珠の枝の車持皇子は相変わらず散財しつつ引きこもりを楽しんでいるようだ。

最近は暇を持て余し各地の伝承や民話などを集めて楽しんでいる。

しばらくはそれらを聞いて楽しんでいたが、遂には側近の者と冒険譚を書き始めたようだ。

実際に考えて書くのは側近の仕事だが、自分の考えた妄想を必死に語り、それを側近が綺麗な文章の冒険譚へと書き直している。

側近も心なしか楽しそうに見えるので良い時間が過ごせているようで良かった。

蓬莱の珠の枝作製の職人達も日々精進して頑張っている。

きっと素晴らしい傑作が出来るに違いない。

『これほどの腕があるのです。
更に最高品質の材質を使えばもっと素晴らしい作品が出来上がるでしょう』

お姫様から明るいが含みのある声が聞こえる。

「…大分搾り取ったのに…まだ取るのか…」

…正直俺は、蓬莱の珠の枝よりもあの冒険譚が気になった…ちょっと読んでみたい。



阿倍御主人はまだ火鼠の皮衣を諦めていない。

日々朝廷に出仕しては、モラハラパワハラっぷりを元気に発揮している。

そろそろ火鼠など存在しない事に気付いても良い頃なのだが…その様子はない。

取引先にて火鼠の皮衣が見つかったという怪しい話も出てきているが、きっと騙されたりする事はないだろう。

『この者…本当にそんなに優秀なのですか…?』

「…能ある鷹は爪を隠す…だよ」

だから、騙されるような事はないはずだ。



大伴御行は臣下が海へと向かっていない事にいまだ気がついていないようだ…。

身体を鍛えながら、まだかまだかと連絡を待っている。

そして、頑張ってリフォームしたお屋敷は既に色彩豊かな屋敷へと見事な変貌を遂げた。

屋敷の者達は戸惑っていたが、本人だけはひどく満足気だった。

俺と結婚出来ると信じて疑わない様子は自信に満ち溢れ、心なしか輝いて見えた。

因みに心配していた離縁された妻達は逞しい女性達で泣き暮らすような事もなく、きっちり財産分与にて取る物を取り冷たい視線で大伴御行の動向を伺っているようだ。

今まで縁の下の力持ちとして影で支えて来た自負があるらしく今後に関してどうなるのかを冷静に静観している。

こんな才女たちを捨てるなんて愚かな事をしたものだ…。

『…あの者の自信は一体どこから来るのでしょう?』

「…脳筋だから…筋肉…かな?」

男として、あのキレイな筋肉には憧れる部分もあるにはある。



石上麿足は遂に燕が巣を作ったが、人が多くていまいち上手くいってないようだ。

試行錯誤しているが、あまり上手くはいっていない。


誰かから進言があったらしく、巣を壊す事も出来ずに燕の動向を臣下達と一緒にずっと観察している。

なんとか子安貝を手に入れようと四苦八苦しているようだが、成果は出ていない。

…子安貝を指定した俺がこんな事言うのも何だが…ずっと燕を観察し続けるなんて…地味な作業だよな。

『燕を観察するこの者を観察するのは飽きました…』

「…俺も」



それぞれがそれぞれの日々を送る事でいつの間にかそれなりの時間が過ぎていった。

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