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連載
騒がしい始まり⑱
長らく更新が滞り、申し訳ありません。
「それは魅力的なお話ですな。しかし、申し訳ないが、ミズサワ殿が動けば、かなり派手な捕物になるでしょう。やつらの拠点は住宅密集地にあります。住民には不安を与えたくないないのです」
と、ザイーム殿下。その拠点は、ミドルタウンみたいな所にあり、現在近隣住民の避難が静かに行われているそうだ。
まあ、そうだよね。私達が動いたら静かになんて終わらない。
『童を傷付けた連中なのだ? 我がヤるのだっ』
うん。大事になる。ちゅどーん、ってなりそう。
「アレス、ちょっと待って」
『えー、我なら一撃に出来るのだぞ』
「アレス」
『あ、ごめんなさいなのだ』
服従の姿勢になるアレス。もう。ほら、ザイーム殿下もびっくりされてるじゃん。
「すみません、ザイーム殿下、お話を中断してしまって」
「構いません。ミズサワ殿には、捕物の後にお願いしたい事があります」
こちらをちょっと探るような視線を感じるが、ビアンカもルージュも黙ったままだしね。大丈夫やね。
「どういった内容の?」
「貴女の戦闘奴隷のリーダーをお借りしたい」
え?
「何故、ですか?」
「彼等が借金を背負う羽目になった違法依頼があったでしょう? その違法依頼を証明するには、契約を交わした者が契約書に魔力を流す必要があります」
あ、そう言えば。ホークさんが回復した後にギルドに行って、例の依頼の契約書に魔力を流したことがあった。本来なら違約金四千四百万だったのだけど、丸を一つ後付けされてしまい、ホークさん達『鷹の目』は借金を背負うことに。違法だと証明するには契約者であるホーク、そして『鷹の目』と一緒に護衛に付いていた冒険者パーティのリーダーが、契約書に魔力を流せば一発で分かる。しかし、爆発事故のせいで、ホークさんは重傷を負い、もう一つの冒険者パーティのリーダーは死亡してしまった。それで違法だとはっきり証明出来なかった。そのまま借金を背負って、奴隷商会に移った『鷹の目』は、私が出した『ノワールへの騎乗』『攻守が揃い』『女性がいる』『ランクがC』にドンピシャだった。
きっと運が良かったんだと思う。重傷だったホークさんとエマちゃんは、時空神様が助けてくれたおかげで『神への祈り』もスムーズに発動して、助けることができたしね。
「ユリアレーナから、例の契約書は転移門を通じて届いています」
そうなんや、転移門は『試練のダンジョン』があるヤーズにあり、そこからこちらに運ばれたみたい。転移門、なんで、首都やないんやろ?
「あくまで確認作業の一つと思っていただければ」
以前行ってはいるが、その契約書にサインしたホークさんに、魔力を流して違法であると確認したいそうだ。ザイーム殿下の話では、『鷹の目』の違法依頼以外にも数え切れない罪状はある。『鷹の目』の件はたくさんの罪状の一つになるけど、せっかくこちらに来ているので、サインしたホークさんに確認を、みたいな感じね。
でもなあ、さっきアレスを制止したけど、なんだかなあ、こう、なんか、ぴしゃー、みたいな事出来んかなあ。ホークさんとエマちゃんは重傷だったし、ミゲル君だって一時失明までの傷を負ったしね。うーん、私みたいなド素人が首を突っ込んだら、いかんのはよくわかっているけど、あっ、怪我人が出た時のためにポーションを提供しようかな。
もんもんとしていたら、後からルージュが顔を寄せてきた。
『ねえ、ユイ』
「なんねルージュ」
『アレスが行くとややこしんでしょう? なら、私が行くわ』
「ルージュが?」
『ええ』
にやあ、と笑うルージュ。え、こわ。
『私なら、暗闇に紛れてヤれるわ』
うん。色んな意味で大事になる。
しかし、ルージュは隠密行動に長けていると思う。元々すごか爪があるのに、足音まったく分からない歩き方するし、気配を遮断する闇魔法に、姿を消せる光魔法を駆使したら最強の戦闘系諜報員じゃない?
『私だって、ホーク達を傷付けた連中には思うところはあるわよ。もちろん死なせないわよ、手加減ならできるし。かるーく、絞めてくるわ』
私の頭の中に、月明かりの下で、闇の触手を縦横無尽に操り、縛り上げている姿が浮かぶ。
『確かに、今回はルージュが適任なのですね。私の捕縛となると、凍らせるか雷撃で気絶させるしか手段がないのです』
『でしょう? ね、ユイ、いいでしょ?』
ルージュがグイグイ来る。
「ちょ、ちょっと待って」
デカい鼻面を押し返す。
「あのザイーム殿下、実はうちのルージュがですね、かなり優秀な隠密行動ができまして、その上賢いので、必ずお力になれると」
ルージュのアピールをこれこうこう。
「ルージュ、ちょっと消えてみて」
『わかったわ』
ルージュの姿が消える。相変わらずすごかね、一瞬。これはイシスも出来ない芸当だと。
次にルージュは、闇の触手を伸ばして、花瓶の白い花を一本抜き出し、私の髪に指す。どうどう? ルージュの繊細な魔力操作。ついつい、どやぁっ、とした顔になってしまう。気配感知も高いから、一人残らずひっ捕らえますよ。
ふむ、とザイーム殿下。
「お噂は兼兼伺っておりますが、素晴らしいですな。是非にお力になって頂きたい。ただ、このクリムゾンジャガーのみで臨場では、現場は混乱するでしょう。主人の貴女にもご同行を頂きたい」
「それは構いません」
両親があまりいい顔してない。危ない現場に行くからね。
「もちろん貴女には後方に控えて頂く形になります。護衛も付けましょう」
「いえ、お手を煩わせるわけには。ビアンカ、一緒に行ってくれる?」
『もちろんなのです』
『あ、我もっ』
「あんたは留守番ったいっ」
仔達も自分も自分もと言い出す。ビアンカとルージュが静かにと言うと、一斉に、ぶー、みたいな顔に。元気だけ、へっへと笑っている。
私達のやり取りに、ザイーム殿下は微笑ましい顔に。
「すみません、騒がしくて」
「いえ、とても温かみを感じます。従魔達は貴女が大好きなようだ」
てへへ。私も大好きです。
「では、簡単にこれからの流れを説明致しましょう。ミズサワ殿、そして御両親殿、弟殿、本日夕方に使いをこちらに遣わしますので、ユリアレーナ大使館に来て頂きたい」
「それは魅力的なお話ですな。しかし、申し訳ないが、ミズサワ殿が動けば、かなり派手な捕物になるでしょう。やつらの拠点は住宅密集地にあります。住民には不安を与えたくないないのです」
と、ザイーム殿下。その拠点は、ミドルタウンみたいな所にあり、現在近隣住民の避難が静かに行われているそうだ。
まあ、そうだよね。私達が動いたら静かになんて終わらない。
『童を傷付けた連中なのだ? 我がヤるのだっ』
うん。大事になる。ちゅどーん、ってなりそう。
「アレス、ちょっと待って」
『えー、我なら一撃に出来るのだぞ』
「アレス」
『あ、ごめんなさいなのだ』
服従の姿勢になるアレス。もう。ほら、ザイーム殿下もびっくりされてるじゃん。
「すみません、ザイーム殿下、お話を中断してしまって」
「構いません。ミズサワ殿には、捕物の後にお願いしたい事があります」
こちらをちょっと探るような視線を感じるが、ビアンカもルージュも黙ったままだしね。大丈夫やね。
「どういった内容の?」
「貴女の戦闘奴隷のリーダーをお借りしたい」
え?
「何故、ですか?」
「彼等が借金を背負う羽目になった違法依頼があったでしょう? その違法依頼を証明するには、契約を交わした者が契約書に魔力を流す必要があります」
あ、そう言えば。ホークさんが回復した後にギルドに行って、例の依頼の契約書に魔力を流したことがあった。本来なら違約金四千四百万だったのだけど、丸を一つ後付けされてしまい、ホークさん達『鷹の目』は借金を背負うことに。違法だと証明するには契約者であるホーク、そして『鷹の目』と一緒に護衛に付いていた冒険者パーティのリーダーが、契約書に魔力を流せば一発で分かる。しかし、爆発事故のせいで、ホークさんは重傷を負い、もう一つの冒険者パーティのリーダーは死亡してしまった。それで違法だとはっきり証明出来なかった。そのまま借金を背負って、奴隷商会に移った『鷹の目』は、私が出した『ノワールへの騎乗』『攻守が揃い』『女性がいる』『ランクがC』にドンピシャだった。
きっと運が良かったんだと思う。重傷だったホークさんとエマちゃんは、時空神様が助けてくれたおかげで『神への祈り』もスムーズに発動して、助けることができたしね。
「ユリアレーナから、例の契約書は転移門を通じて届いています」
そうなんや、転移門は『試練のダンジョン』があるヤーズにあり、そこからこちらに運ばれたみたい。転移門、なんで、首都やないんやろ?
「あくまで確認作業の一つと思っていただければ」
以前行ってはいるが、その契約書にサインしたホークさんに、魔力を流して違法であると確認したいそうだ。ザイーム殿下の話では、『鷹の目』の違法依頼以外にも数え切れない罪状はある。『鷹の目』の件はたくさんの罪状の一つになるけど、せっかくこちらに来ているので、サインしたホークさんに確認を、みたいな感じね。
でもなあ、さっきアレスを制止したけど、なんだかなあ、こう、なんか、ぴしゃー、みたいな事出来んかなあ。ホークさんとエマちゃんは重傷だったし、ミゲル君だって一時失明までの傷を負ったしね。うーん、私みたいなド素人が首を突っ込んだら、いかんのはよくわかっているけど、あっ、怪我人が出た時のためにポーションを提供しようかな。
もんもんとしていたら、後からルージュが顔を寄せてきた。
『ねえ、ユイ』
「なんねルージュ」
『アレスが行くとややこしんでしょう? なら、私が行くわ』
「ルージュが?」
『ええ』
にやあ、と笑うルージュ。え、こわ。
『私なら、暗闇に紛れてヤれるわ』
うん。色んな意味で大事になる。
しかし、ルージュは隠密行動に長けていると思う。元々すごか爪があるのに、足音まったく分からない歩き方するし、気配を遮断する闇魔法に、姿を消せる光魔法を駆使したら最強の戦闘系諜報員じゃない?
『私だって、ホーク達を傷付けた連中には思うところはあるわよ。もちろん死なせないわよ、手加減ならできるし。かるーく、絞めてくるわ』
私の頭の中に、月明かりの下で、闇の触手を縦横無尽に操り、縛り上げている姿が浮かぶ。
『確かに、今回はルージュが適任なのですね。私の捕縛となると、凍らせるか雷撃で気絶させるしか手段がないのです』
『でしょう? ね、ユイ、いいでしょ?』
ルージュがグイグイ来る。
「ちょ、ちょっと待って」
デカい鼻面を押し返す。
「あのザイーム殿下、実はうちのルージュがですね、かなり優秀な隠密行動ができまして、その上賢いので、必ずお力になれると」
ルージュのアピールをこれこうこう。
「ルージュ、ちょっと消えてみて」
『わかったわ』
ルージュの姿が消える。相変わらずすごかね、一瞬。これはイシスも出来ない芸当だと。
次にルージュは、闇の触手を伸ばして、花瓶の白い花を一本抜き出し、私の髪に指す。どうどう? ルージュの繊細な魔力操作。ついつい、どやぁっ、とした顔になってしまう。気配感知も高いから、一人残らずひっ捕らえますよ。
ふむ、とザイーム殿下。
「お噂は兼兼伺っておりますが、素晴らしいですな。是非にお力になって頂きたい。ただ、このクリムゾンジャガーのみで臨場では、現場は混乱するでしょう。主人の貴女にもご同行を頂きたい」
「それは構いません」
両親があまりいい顔してない。危ない現場に行くからね。
「もちろん貴女には後方に控えて頂く形になります。護衛も付けましょう」
「いえ、お手を煩わせるわけには。ビアンカ、一緒に行ってくれる?」
『もちろんなのです』
『あ、我もっ』
「あんたは留守番ったいっ」
仔達も自分も自分もと言い出す。ビアンカとルージュが静かにと言うと、一斉に、ぶー、みたいな顔に。元気だけ、へっへと笑っている。
私達のやり取りに、ザイーム殿下は微笑ましい顔に。
「すみません、騒がしくて」
「いえ、とても温かみを感じます。従魔達は貴女が大好きなようだ」
てへへ。私も大好きです。
「では、簡単にこれからの流れを説明致しましょう。ミズサワ殿、そして御両親殿、弟殿、本日夕方に使いをこちらに遣わしますので、ユリアレーナ大使館に来て頂きたい」
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