72 / 876
連載
治験始動④
午後からパーカーさんのお店に。
私とビアンカとルージュのみ。両親と晃太は、孤児院に持っていく服や靴、タオル等の日用品を数えて、不足分のチェックだ。現在の孤児は80名。
「ミズサワさん、パンありがとうございます。どれも美味しかったです」
迎えに来てくれたロッシュさんが、お礼を言ってきた。
「良かったです。足りました?」
多分食べ盛り男性5人だから、足りなかったんじゃないかな?
「はい。ありがとうございます」
足りたようだ。良かった。
パーカーさんのお店に問題なく到着。
お店にお客さんがいないのを、確認する。
「ごめんください」
「ああ、ミズサワさんっ」
パーカーさんが駆け寄って来た。
「ダイアナがよくなったのは、すべてミズサワさんのお陰です。本当にありがとうございます」
深く頭を下げるパーカーさん、奥からジョシュアさんとパトリックさんが出てきて並んで頭を下げる。ダイアナちゃんは元気に無料の読み書き教室に、再び通っていると。
「皆さんが、看病したからですよ。それでですね。薬の件でご報告が」
店舗の奥の応接室に通され、私が企画書の件を説明。ビアンカとルージュは、外でロッシュさんとシュタインさんと待ってもらう。
「せっかくお知恵を借りたのですが、私達では荷が重くて、セザール様と薬師ギルドにおまかせすることになりました」
「そうですか。私達に異論はございません。ダイアナを救って頂いたお礼にもなりません」
パーカーさんは息をつく。
「これがうまく行けば、たくさんの子供が救われます。私達のように、救われる家族もいるでしょう。ぜひ、成功してほしいです」
心底そう思っているパーカーさんの言葉には、切実なものが滲んでいる。
「そうですね。そう、願います。あ、これダンジョンのお土産です」
私はアイテムボックスから果物や牛乳瓶、モッツァレラチーズを出す。
「そんな、こんな高価なもの頂けません」
「大丈夫ですよ。ビアンカとルージュのお陰で、とんでもない数が手に入りましたから」
ちゅどん、どかん、で。
私がこんな感じで拾いましたと、言うと、パーカーさん達の顔から表情が一瞬消える。
「多分また冷蔵庫ダンジョンに行くと思うので、どうぞどうぞ。ダイアナちゃんに食べさせてください」
「ミズサワさん、ありがとうございました」
受け取ってくれた。それからちょっとお話しして、お店を出る。パーカーさん達が、丁寧に見送ってくれた。
『ユイ、ユイ、いつダンジョン行くのです?』
『明日?』
さすがの聴覚だね。
「聞こえとったね? 来週ギルドに行かんといかんし、孤児院にも行かんといかんし。行けても2、3日よ」
『いいのです』
『ダンジョンダンジョン』
どんだけ戦いたいんね。
まあ、あの貝柱ほしいかな。
「ユイさん、ダンジョンに行かれるんですか?」
シュタインさんが聞いてくる。
「すぐには行きませんけど。近々行くと思います」
『『ダンジョンダンジョンダンジョン』』
「合唱せんで」
帰りにビアンカとルージュが屋台を覗くため、大量に購入。
『ユイ、あれも食べたいのです』
『あれも食べたいわ』
「無理たい、アイテムボックスがパンパンたい、もう入らんばい」
私のアイテムボックスの許容オーバーなのか、お肉の串焼きが途中で入らない。こんな時、晃太のアイテムボックスSSSがうらやましい。
他の屋台の主人らしき人が、がーん、みたいな顔だ。うちわでせっせと匂いを送ってくれていたのに。
「ユイさん、持ちますよ。俺達はそれも仕事ですから」
シュタインさんが言ってくれたが、申し訳ない。
『気が利くのです』
『そうね』
「あのね、お二人さん」
いくらなんでも、と思ったけど、キラキラなお目目に負けて、持てる範囲で購入してしまった。すみません、ロッシュさん、シュタインさん。
2日後。
私達は総出で孤児院へ。ノワールだけ、お留守番。ニンジンをあげたら、上機嫌でブヒヒヒンッ。
あの巨大貝柱で作ったクラムチャウダー持参して。
「あ、おばちゃんっ」
わー、と子供達が母に集まる。あははん、私じゃなくて良かった。
「おばちゃんっ」
「あの丸いお肉入ったシチュー食べたいっ」
「お腹すいたっ」
母は笑顔だ。
「今日はね、貝柱の入ったシチューよ~」
「「「わーいっ」」」
私とビアンカとルージュ、5匹の仔達、シュタインさんとハジェル君は庭に出る。元気とコハクはリード装着。ハジェル君と走り回る子供達は楽しそうだ。私とシュタインさんも一緒に遊ぶ。これは明日筋肉痛やな。ビアンカとルージュはおとなしくお座り。その背中によじ登る子供達にシスターが、落ちないように必死についている。ちょっと人見知りのルリとクリスには、説明したら、年長の子供達が優しく撫でている。ヒスイは私の足元にぴったりだ。子供達に飛びかかりそうな、元気とコハクのリードを握る。肩、抜けそう。途中でシュタインさんにもリードを持ってもらった。
しばらくして、シスターがお昼のお知らせ。
子供達が、わー、と向かって行く。
『やっと行ったのです』
『疲れるわ』
「あはは、お疲れさん」
ぺたり、となるビアンカとルージュ。
「あわわわッ」
ハジェル君が悲鳴を上げる。元気がポケットに食らいついている。好きねポケット。そして引っ張られるシュタインさん。
「こら、元気、ダメよ」
『元気、やめるのです』
必死にポケットに食らいつく元気。首と尻尾を左右に振って、生地が悲鳴を上げる。食らいつく元気の口を開けようとしたが、がっちり噛んでいる。
一気に首を振るパワーが増す。
あ、破れる。
ビリリリリッ
「あーッ」
あ、ポケットがっ。
ポケットを食いちぎった元気は、それを意気揚々と振り回す。リードを持ってもらっていたシュタインさんもどうしていいかわからない顔だ。コハクまでそのポケットの残骸目掛けて飛びかかり、しっちゃかめっちゃかだ。ビアンカに元気を押さえてもらい、やっとこさ無事にポケット回収。
「ごめんねハジェル君、弁償するけん」
その前に、母に直してもらえるか見てもらおう。微妙に肌色が覗いている。
「ポケットくらいですから、大丈夫です」
「そんな訳には行かないですよ。母にせめて応急措置してもらいますから」
ポケットの残骸に向かってジャンプする元気とコハクに、引き倒されそうになり、とりあえずアイテムボックスに入れる。
母達が来て、ポケットの件を説明。謝罪してチェックすると、なんとかなりそうだと。
元気に、め、していたけど、当人は分かってない。尻尾振って、へっへ言ってる。
帰り際、院長先生が来て、応接室に案内された。
シュタインさんとハジェル君には、そのまま庭にいてもらう。元気達がいるからね。ビアンカとルージュはそのままお昼寝してる。
「この度は本当にありがとうございます。デニスが元気になり、またたくさんの服や靴、食事と本当にありがとうございます」
深く感謝される。
シスターがハーブティーを淹れてくれる。
建物の件についても説明する。
「もしかしたら、業者さんが来るかもしれませんので」
「そんな。これだけの事をしてただいたのに」
「ほとんどが従魔が稼いだので、気にしないでください」
マーファに来て4億くらい転がり込んで来たけど、実感がないのが怖い。ドロップ品拾ったくらいだし。まだ、これからも入るだろう。そうなれば、何かおかしくなりそうで怖い。
恐縮する院長先生に、なんとか納得してもらい、庭に戻る。
そこには、もうひとつのハジェル君のポケットを食い千切り、咥えて走る元気がいた。
私とビアンカとルージュのみ。両親と晃太は、孤児院に持っていく服や靴、タオル等の日用品を数えて、不足分のチェックだ。現在の孤児は80名。
「ミズサワさん、パンありがとうございます。どれも美味しかったです」
迎えに来てくれたロッシュさんが、お礼を言ってきた。
「良かったです。足りました?」
多分食べ盛り男性5人だから、足りなかったんじゃないかな?
「はい。ありがとうございます」
足りたようだ。良かった。
パーカーさんのお店に問題なく到着。
お店にお客さんがいないのを、確認する。
「ごめんください」
「ああ、ミズサワさんっ」
パーカーさんが駆け寄って来た。
「ダイアナがよくなったのは、すべてミズサワさんのお陰です。本当にありがとうございます」
深く頭を下げるパーカーさん、奥からジョシュアさんとパトリックさんが出てきて並んで頭を下げる。ダイアナちゃんは元気に無料の読み書き教室に、再び通っていると。
「皆さんが、看病したからですよ。それでですね。薬の件でご報告が」
店舗の奥の応接室に通され、私が企画書の件を説明。ビアンカとルージュは、外でロッシュさんとシュタインさんと待ってもらう。
「せっかくお知恵を借りたのですが、私達では荷が重くて、セザール様と薬師ギルドにおまかせすることになりました」
「そうですか。私達に異論はございません。ダイアナを救って頂いたお礼にもなりません」
パーカーさんは息をつく。
「これがうまく行けば、たくさんの子供が救われます。私達のように、救われる家族もいるでしょう。ぜひ、成功してほしいです」
心底そう思っているパーカーさんの言葉には、切実なものが滲んでいる。
「そうですね。そう、願います。あ、これダンジョンのお土産です」
私はアイテムボックスから果物や牛乳瓶、モッツァレラチーズを出す。
「そんな、こんな高価なもの頂けません」
「大丈夫ですよ。ビアンカとルージュのお陰で、とんでもない数が手に入りましたから」
ちゅどん、どかん、で。
私がこんな感じで拾いましたと、言うと、パーカーさん達の顔から表情が一瞬消える。
「多分また冷蔵庫ダンジョンに行くと思うので、どうぞどうぞ。ダイアナちゃんに食べさせてください」
「ミズサワさん、ありがとうございました」
受け取ってくれた。それからちょっとお話しして、お店を出る。パーカーさん達が、丁寧に見送ってくれた。
『ユイ、ユイ、いつダンジョン行くのです?』
『明日?』
さすがの聴覚だね。
「聞こえとったね? 来週ギルドに行かんといかんし、孤児院にも行かんといかんし。行けても2、3日よ」
『いいのです』
『ダンジョンダンジョン』
どんだけ戦いたいんね。
まあ、あの貝柱ほしいかな。
「ユイさん、ダンジョンに行かれるんですか?」
シュタインさんが聞いてくる。
「すぐには行きませんけど。近々行くと思います」
『『ダンジョンダンジョンダンジョン』』
「合唱せんで」
帰りにビアンカとルージュが屋台を覗くため、大量に購入。
『ユイ、あれも食べたいのです』
『あれも食べたいわ』
「無理たい、アイテムボックスがパンパンたい、もう入らんばい」
私のアイテムボックスの許容オーバーなのか、お肉の串焼きが途中で入らない。こんな時、晃太のアイテムボックスSSSがうらやましい。
他の屋台の主人らしき人が、がーん、みたいな顔だ。うちわでせっせと匂いを送ってくれていたのに。
「ユイさん、持ちますよ。俺達はそれも仕事ですから」
シュタインさんが言ってくれたが、申し訳ない。
『気が利くのです』
『そうね』
「あのね、お二人さん」
いくらなんでも、と思ったけど、キラキラなお目目に負けて、持てる範囲で購入してしまった。すみません、ロッシュさん、シュタインさん。
2日後。
私達は総出で孤児院へ。ノワールだけ、お留守番。ニンジンをあげたら、上機嫌でブヒヒヒンッ。
あの巨大貝柱で作ったクラムチャウダー持参して。
「あ、おばちゃんっ」
わー、と子供達が母に集まる。あははん、私じゃなくて良かった。
「おばちゃんっ」
「あの丸いお肉入ったシチュー食べたいっ」
「お腹すいたっ」
母は笑顔だ。
「今日はね、貝柱の入ったシチューよ~」
「「「わーいっ」」」
私とビアンカとルージュ、5匹の仔達、シュタインさんとハジェル君は庭に出る。元気とコハクはリード装着。ハジェル君と走り回る子供達は楽しそうだ。私とシュタインさんも一緒に遊ぶ。これは明日筋肉痛やな。ビアンカとルージュはおとなしくお座り。その背中によじ登る子供達にシスターが、落ちないように必死についている。ちょっと人見知りのルリとクリスには、説明したら、年長の子供達が優しく撫でている。ヒスイは私の足元にぴったりだ。子供達に飛びかかりそうな、元気とコハクのリードを握る。肩、抜けそう。途中でシュタインさんにもリードを持ってもらった。
しばらくして、シスターがお昼のお知らせ。
子供達が、わー、と向かって行く。
『やっと行ったのです』
『疲れるわ』
「あはは、お疲れさん」
ぺたり、となるビアンカとルージュ。
「あわわわッ」
ハジェル君が悲鳴を上げる。元気がポケットに食らいついている。好きねポケット。そして引っ張られるシュタインさん。
「こら、元気、ダメよ」
『元気、やめるのです』
必死にポケットに食らいつく元気。首と尻尾を左右に振って、生地が悲鳴を上げる。食らいつく元気の口を開けようとしたが、がっちり噛んでいる。
一気に首を振るパワーが増す。
あ、破れる。
ビリリリリッ
「あーッ」
あ、ポケットがっ。
ポケットを食いちぎった元気は、それを意気揚々と振り回す。リードを持ってもらっていたシュタインさんもどうしていいかわからない顔だ。コハクまでそのポケットの残骸目掛けて飛びかかり、しっちゃかめっちゃかだ。ビアンカに元気を押さえてもらい、やっとこさ無事にポケット回収。
「ごめんねハジェル君、弁償するけん」
その前に、母に直してもらえるか見てもらおう。微妙に肌色が覗いている。
「ポケットくらいですから、大丈夫です」
「そんな訳には行かないですよ。母にせめて応急措置してもらいますから」
ポケットの残骸に向かってジャンプする元気とコハクに、引き倒されそうになり、とりあえずアイテムボックスに入れる。
母達が来て、ポケットの件を説明。謝罪してチェックすると、なんとかなりそうだと。
元気に、め、していたけど、当人は分かってない。尻尾振って、へっへ言ってる。
帰り際、院長先生が来て、応接室に案内された。
シュタインさんとハジェル君には、そのまま庭にいてもらう。元気達がいるからね。ビアンカとルージュはそのままお昼寝してる。
「この度は本当にありがとうございます。デニスが元気になり、またたくさんの服や靴、食事と本当にありがとうございます」
深く感謝される。
シスターがハーブティーを淹れてくれる。
建物の件についても説明する。
「もしかしたら、業者さんが来るかもしれませんので」
「そんな。これだけの事をしてただいたのに」
「ほとんどが従魔が稼いだので、気にしないでください」
マーファに来て4億くらい転がり込んで来たけど、実感がないのが怖い。ドロップ品拾ったくらいだし。まだ、これからも入るだろう。そうなれば、何かおかしくなりそうで怖い。
恐縮する院長先生に、なんとか納得してもらい、庭に戻る。
そこには、もうひとつのハジェル君のポケットを食い千切り、咥えて走る元気がいた。
あなたにおすすめの小説
「三番以下を取りなさい」と五年言われ続けたので、公開試験で本気を出しました
歩人
ファンタジー
王立魔法学院、入学時首席のリュシエンヌは、婚約者レイナルト公爵令息から五年間「女は三番以下を取れ」と命じられてきた。学院の序列は国家序列の縮図。レイナルトは常に一位に居続けた。婚約披露を控えた十九歳の春、レイナルトが新しい婚約者を連れて告げる。「お前では並び立てぬ。学力も身分も、足りなすぎる」——リュシエンヌは微笑んで、その翌日の年次公開試験で、五年封じてきた本気を出した。国王臨席の場で、史上最高点。魔法局長官が教授陣に命じる。「過去五年間の彼女の実測点と、もし本気で受けていたら出せた推計点を、公表したまえ」。教授陣は震える手で数字を並べた。レイナルトの「首席」は、全て彼女が譲った場所だった。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
夫の不倫相手に「妻の座を譲れ」と言われたので、譲る代わりに全部置いていきます 〜行き先は老舗旅館。追いかけてきても、もう遅いです〜
なつめ
恋愛
夫の愛人に「妻の座を譲れ」と言い渡された主人公は、怒鳴り返すこともしがみつくこともせず、ただ静かに頷いた。
家のこと、食事のこと、社交のこと、義実家のこと、会社の裏方のこと。 誰も価値を知らなかった“妻の座”の中身を、そっくりそのまま置いて家を出る。
向かった先は、かつて傷ついた自分を受け入れてくれた老舗旅館。 再建に奔走する若旦那とともに働く中で、主人公は初めて「役に立つから愛される」のではなく、「あなた自身がいてほしい」と言われる温かさを知っていく。
一方、主人公を軽んじた元夫の家では、生活も体裁も仕事もじわじわと崩壊を始める。 これは、何も持たずに出ていったはずの女が、自分の人生を取り戻し、最後には新しい恋と居場所を手に入れる再生の物語。
見た目の良すぎる双子の兄を持った妹は、引きこもっている理由を不細工だからと勘違いされていましたが、身内にも誤解されていたようです
珠宮さくら
恋愛
ルベロン国の第1王女として生まれたシャルレーヌは、引きこもっていた。
その理由は、見目の良い両親と双子の兄に劣るどころか。他の腹違いの弟妹たちより、不細工な顔をしているからだと噂されていたが、実際のところは全然違っていたのだが、そんな片割れを心配して、外に出そうとした兄は自分を頼ると思っていた。
それが、全く頼らないことになるどころか。自分の方が残念になってしまう結末になるとは思っていなかった。
夫が私にそっくりな下の娘ばかりをかわいがるのですけど!
山科ひさき
恋愛
「子供達をお願い」 そう言い残して、私はこの世を去った。愛する夫が子供達に私の分も愛情を注いでくれると信じていたから、不安はなかった。けれど死後の世界から見ている夫は下の娘ばかりをかわいがり、上の娘をないがしろにしている。許せない。そんな時、私に不思議な声が呼びかけてきて……。
「お前の泥だらけの手で触るな、気持ち悪い」と追放された令嬢——王宮の食器が一枚も焼けなくなった
歩人
ファンタジー
「お前の泥だらけの手で触るな、気持ち悪い」——王宮御用達の食器を焼く伯爵令嬢エルザは、婚約者の第二王子に手の荒れを嗤われて追放された。十二歳から十年間、王宮の全ての食器を手ずから焼いてきた。彼女の食器は特殊な土と焼成技術で魔力を通し、毒に触れると色が変わる。料理の温度も保つ。追放から三ヶ月後、晩餐会で新しい食器を使ったところ、毒が検知されず隣国の大使が倒れた。外交問題に発展する中、第二王子が「食器くらい誰でも焼ける」と窯に立った結果、出来上がったのは歪んだ灰色の皿だった。
元の世界に帰らせていただきます!
にゃみ3
恋愛
淡い夢物語のように、望む全てが叶うとは限らない。
そう分かっていたとしても、私は敵ばかりの世界で妬まれ、嫌われ、疎まれることに、耐えられなかったの。
「ごめんね、バイバイ……」
限界なので、元いた世界に帰らせていただきます。
・・・
数話で完結します、ハピエン!
「貧相な小娘」と罵った第一王子へ。番(つがい)は貴方ではなく、国王陛下(お父様)でした
しえろ あい
恋愛
「お父様、わたくし、あの方と目が合った瞬間、分かってしまったのです」
十六歳のデビュタントの夜、ルーセント侯爵令嬢フェリシアを待っていたのは、残酷な罵倒だった。第一王子カシウスは、可憐な白いドレスを纏った彼女を「貧相な小娘」と呼び、己の番(つがい)であることを真っ向から否定する。
会場に響く冷笑と、愛用の刺繍に込めた自信さえ打ち砕くような屈辱。しかし、絶望の淵に立たされた彼女を見つめていたのは、王子ではなく、圧倒的な威厳を放つ「ある男」だった。
魂を焦がすような熱い視線が重なり、静まり返る謁見の間。この出会いが、王室を揺るがす大事件の幕開けになるとは、まだ誰も知らない。自身の価値を否定された少女が、真実の愛によって世界で最も幸福な王妃へと駆け上がる、逆転溺愛ストーリー。
※小説家になろう様にも投稿しています※