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連載
馬車の旅⑤
戦闘しています、ご注意ください。
ビアンカと道を駆け抜けて、驚く門番さん達の間を抜ける。
畑に向かって走ると、すでにあちこちで悲鳴が上がっている。
『ユイッ、あそこにオルクがいるのですッ』
ビアンカの声で視線を走らせると、離れた場所にどす黒い人型の魔物。汚い鎧に手には武器。うわあ、顔があ。不揃いの歯に、小さな目はギラギラ、近づきたくないフォルムだあ。
たけど、その片手には、泣き叫ぶ3歳くらいの女の子。
向こうのオルクも、こちらに気がついて、背中を向ける。
「ビアンカッ」
『任せるのですッ』
ビアンカは一気に加速してオルクに追い付き、オルクの首が飛ぶ。
私は必死に走って追い付き、オルクの腕からなんとか逃れた女の子に向かって手を伸ばす。
「おいでッ」
火がついたように泣き叫ぶ女の子は、私にしがみついてくる。ざっと女の子をチェック。頬に小さなキズがあるだけのようだ。
低音で唸り声を上げ続けるビアンカ。
まだ、近くに別のオルクがいるんだろう。だけど、探さないと、この女の子の両親を。周りは背の高い麦畑だ。どこかにいるはずだけど。
ビアンカが次々に水の矢を放ち、逃げようとするオルクに突き刺さる。私には見えてないのに、ビアンカは迷いなく放っている。汚い悲鳴が上がる。
「ビアンカッ、他に人はおらん?」
『あっちに2匹いるのです』
女の子を抱え直し、ビアンカの後に続く。
麦畑の中を掻き分けて進むと、若い男女が倒れている。
男性は背中に、女性は肩付近から胸にかけてひどいキズが。
「ママッ、パパッ」
泣き叫ぶ女の子。やはりこの子の両親か。
だが、まだ、生きてる。
私はアイテムボックスから上級ポーションを2本取りだす。
緊急時は直接キズにかけるのが、応急処置だとディードリアンさん情報です。
両親にすがり付こうとする女の子を抱えて、ポーションの瓶の蓋を口で咥えて開け、ポーションを振りかける。
しゅううううぅぅぅ
薄く白い煙が上がり、キズ口に付着した汚れがなくなったと思った瞬間、まるで逆再生の様にキズが塞がる。
すごい、これが上級ポーションか。
「大丈夫ですか? 痛みはありせんか?」
なんとか身を起こす男女に声をかける。
「ああ、一体何が…………ヒイッ」
私の後ろのビアンカに引く男性だが、女の子を見て血相を変える。
「ナラッ」
「ママァッ、パパァッ」
私は女の子を離すと、男性は女の子を抱き締める。
「ああ、ありがとうございます、ありがとうございます」
「ナラッ、ナラッ、ああ、ありがとうございますッ」
良かった。
でも、キズは大丈夫だろうか?
だが、喜びつかの間、女性は地面を這い出す。
「いないわ、いないわ」
真っ青な顔で繰り返す。男性も女の子を抱えて、麦を掻き分けて地面を探す。
「どうされました?」
「いないんですっ。赤ん坊がいないんですっ。さっきまで背中にいたんですっ」
女性が悲鳴を上げる。
よく見たら、女性の体に服とは別の布が巻き付いている。おんぶ紐だ。一部、切り裂かれている。
オルクは、小さな子供を食料にする。
「ビアンカ」
『ユイを残して行けないのです』
「お願いビアンカ」
『…………分かったのです。アオォォォーンッ』
ビアンカはまず空に向かって、遠吠え一つ。
『ルージュがこっちに来るのです』
そして、女性のおんぶ紐の匂いを嗅ぐ。女性はガチガチに固まっている。
『行くのですッ』
「後で合流するけん、お願いねッ」
『分かったのですッ』
ビアンカが弾丸の様に駆け出していく。
「あの…………」
女の子を抱えた男性が不安そうに聞いてくる。
「ビアンカがきっと探してくれます。さあ、一旦避難しましょう。キズは痛みませんか? 歩けます?」
「はい、大丈夫です」
女性も自分で立ち上がる。良かった、上級ポーションが効いているようだ。
ノータの門に向かって移動する。
数人が、既に門番さん達に保護されている。
ノータに入る時に対応してくれた門番さんが、こちらに向かって必死に手を振る。
「急ぎましょう」
声をかけた瞬間、何だか、嫌な予感がした。
咄嗟に、私は武器用のフライパンをアイテムボックスから引き抜き、嫌な予感のする方に振り抜く。
乾いた音と共に、手首に軽い衝撃。
地面に落ちたのは、黒い矢だ。
嫌な予感。
振り返ると、複数のオルクがじわじわと迫って来ている。
どうしよう。
「うわああぁぁぁぁん」
女の子が再び泣き出す。
どうしよう、どうしよう。
後ろで、男性が女の子と女性を抱き締めるのが分かる。
どうしよう、どうしよう、どうしよう。
オルクが次々に麦畑から姿を表し、私達は囲まれている。
どうしよう。
ジリジリと距離を詰められる。
私の中で、すとん、となにかが落ちる。
腹を、括ろう。
先頭のオルクに向かって、私フライパンを構える。
構えたが、横から光の塊がオルクを直撃。頭がきれいに吹っ飛ぶ。
ひーっ、えぐい。
晃太の支援で精神力がアップしているのか、何とか耐えられる。
光の塊、リンゴサイズの光の塊だ。次々にオルクを直撃し、汚い悲鳴を上げて倒れていく。
と、言う事は。
『ユイッ』
物凄い勢いで、ルージュが走り込んで来た。
2、3匹弾き飛ばしている。大型バイクが爆走している様なものだ。
私の前に立ち、低い唸り声を上げる。
『ユイに手を出そうとした事、あの世で悔いるがいい』
ルージュは容赦なく光の塊を放ち、オルク達を倒していく。
あっという間にオルク達が倒れ伏している。
『ユイ、もう大丈夫よ』
「ありがとうルージュ」
相変わらず凄かなあ。
私は親子を振り返る。
ルージュの登場で、更に緊張した顔だ。
「大丈夫ですよ。私の従魔ですから」
手を貸して立ち上がらせる。
「姉ちゃんッ」
「ブヒヒヒヒーンッ」
晃太の声と、ノワールの嘶き。馬車がこちらに向かって爆走して到着。馭者台には見たことない白髪頭の男性が同乗している。
「姉ちゃん、大丈夫ね?」
馭者台から降りる晃太と男性。白髪頭の男性の腰には、ごつい剣がぶら下がっている。
「大丈夫よ、こちらの方は?」
「冒険者副ギルドマスター、ウィークスです」
胸に手を当てて腰を曲げて挨拶してくれる。
どうやら、あの若い冒険者から話を聞いて、飛び出して、出発しようとした晃太にお願いして同乗したようだ。
「残ったオルクは?」
ウィークスさんが聞いてくる。そこら辺に転がってますよ。直視したくない。
『私が見落とすわけないわ』
「残ってないそうです」
「そうですか。流石、噂のテイマー殿ですな」
「あの、この人達を馬車で運んでもらえます? ケガがあるとは思えませんが、保護を」
「了解した」
私は親子に馬車に乗るように指示する。
「でも、ムルが、息子が…………」
女性が泣きそうな顔だ。
「私が今から追いかけますから、晃太、今ねビアンカがオルクに連れ去られた赤ちゃんを追いかけようとよ。とにかく馬車にこの人達ば乗せて、町に戻ってん」
「よかけど。姉ちゃん、大丈夫な?」
「大丈夫よ、ルージュ、ビアンカ追える?」
『任せて、問題ないわ』
不安そうな、親子をウィークスさんが馬車にのせる。
「姉ちゃん、気をつけてなあ。アップ」
ふわあ、と温かくなる。
心配そうな晃太がノワールの手綱を操り、方向転換する。
馬車を見送り、私はルージュと共に魔の森に向き直った。
ビアンカと道を駆け抜けて、驚く門番さん達の間を抜ける。
畑に向かって走ると、すでにあちこちで悲鳴が上がっている。
『ユイッ、あそこにオルクがいるのですッ』
ビアンカの声で視線を走らせると、離れた場所にどす黒い人型の魔物。汚い鎧に手には武器。うわあ、顔があ。不揃いの歯に、小さな目はギラギラ、近づきたくないフォルムだあ。
たけど、その片手には、泣き叫ぶ3歳くらいの女の子。
向こうのオルクも、こちらに気がついて、背中を向ける。
「ビアンカッ」
『任せるのですッ』
ビアンカは一気に加速してオルクに追い付き、オルクの首が飛ぶ。
私は必死に走って追い付き、オルクの腕からなんとか逃れた女の子に向かって手を伸ばす。
「おいでッ」
火がついたように泣き叫ぶ女の子は、私にしがみついてくる。ざっと女の子をチェック。頬に小さなキズがあるだけのようだ。
低音で唸り声を上げ続けるビアンカ。
まだ、近くに別のオルクがいるんだろう。だけど、探さないと、この女の子の両親を。周りは背の高い麦畑だ。どこかにいるはずだけど。
ビアンカが次々に水の矢を放ち、逃げようとするオルクに突き刺さる。私には見えてないのに、ビアンカは迷いなく放っている。汚い悲鳴が上がる。
「ビアンカッ、他に人はおらん?」
『あっちに2匹いるのです』
女の子を抱え直し、ビアンカの後に続く。
麦畑の中を掻き分けて進むと、若い男女が倒れている。
男性は背中に、女性は肩付近から胸にかけてひどいキズが。
「ママッ、パパッ」
泣き叫ぶ女の子。やはりこの子の両親か。
だが、まだ、生きてる。
私はアイテムボックスから上級ポーションを2本取りだす。
緊急時は直接キズにかけるのが、応急処置だとディードリアンさん情報です。
両親にすがり付こうとする女の子を抱えて、ポーションの瓶の蓋を口で咥えて開け、ポーションを振りかける。
しゅううううぅぅぅ
薄く白い煙が上がり、キズ口に付着した汚れがなくなったと思った瞬間、まるで逆再生の様にキズが塞がる。
すごい、これが上級ポーションか。
「大丈夫ですか? 痛みはありせんか?」
なんとか身を起こす男女に声をかける。
「ああ、一体何が…………ヒイッ」
私の後ろのビアンカに引く男性だが、女の子を見て血相を変える。
「ナラッ」
「ママァッ、パパァッ」
私は女の子を離すと、男性は女の子を抱き締める。
「ああ、ありがとうございます、ありがとうございます」
「ナラッ、ナラッ、ああ、ありがとうございますッ」
良かった。
でも、キズは大丈夫だろうか?
だが、喜びつかの間、女性は地面を這い出す。
「いないわ、いないわ」
真っ青な顔で繰り返す。男性も女の子を抱えて、麦を掻き分けて地面を探す。
「どうされました?」
「いないんですっ。赤ん坊がいないんですっ。さっきまで背中にいたんですっ」
女性が悲鳴を上げる。
よく見たら、女性の体に服とは別の布が巻き付いている。おんぶ紐だ。一部、切り裂かれている。
オルクは、小さな子供を食料にする。
「ビアンカ」
『ユイを残して行けないのです』
「お願いビアンカ」
『…………分かったのです。アオォォォーンッ』
ビアンカはまず空に向かって、遠吠え一つ。
『ルージュがこっちに来るのです』
そして、女性のおんぶ紐の匂いを嗅ぐ。女性はガチガチに固まっている。
『行くのですッ』
「後で合流するけん、お願いねッ」
『分かったのですッ』
ビアンカが弾丸の様に駆け出していく。
「あの…………」
女の子を抱えた男性が不安そうに聞いてくる。
「ビアンカがきっと探してくれます。さあ、一旦避難しましょう。キズは痛みませんか? 歩けます?」
「はい、大丈夫です」
女性も自分で立ち上がる。良かった、上級ポーションが効いているようだ。
ノータの門に向かって移動する。
数人が、既に門番さん達に保護されている。
ノータに入る時に対応してくれた門番さんが、こちらに向かって必死に手を振る。
「急ぎましょう」
声をかけた瞬間、何だか、嫌な予感がした。
咄嗟に、私は武器用のフライパンをアイテムボックスから引き抜き、嫌な予感のする方に振り抜く。
乾いた音と共に、手首に軽い衝撃。
地面に落ちたのは、黒い矢だ。
嫌な予感。
振り返ると、複数のオルクがじわじわと迫って来ている。
どうしよう。
「うわああぁぁぁぁん」
女の子が再び泣き出す。
どうしよう、どうしよう。
後ろで、男性が女の子と女性を抱き締めるのが分かる。
どうしよう、どうしよう、どうしよう。
オルクが次々に麦畑から姿を表し、私達は囲まれている。
どうしよう。
ジリジリと距離を詰められる。
私の中で、すとん、となにかが落ちる。
腹を、括ろう。
先頭のオルクに向かって、私フライパンを構える。
構えたが、横から光の塊がオルクを直撃。頭がきれいに吹っ飛ぶ。
ひーっ、えぐい。
晃太の支援で精神力がアップしているのか、何とか耐えられる。
光の塊、リンゴサイズの光の塊だ。次々にオルクを直撃し、汚い悲鳴を上げて倒れていく。
と、言う事は。
『ユイッ』
物凄い勢いで、ルージュが走り込んで来た。
2、3匹弾き飛ばしている。大型バイクが爆走している様なものだ。
私の前に立ち、低い唸り声を上げる。
『ユイに手を出そうとした事、あの世で悔いるがいい』
ルージュは容赦なく光の塊を放ち、オルク達を倒していく。
あっという間にオルク達が倒れ伏している。
『ユイ、もう大丈夫よ』
「ありがとうルージュ」
相変わらず凄かなあ。
私は親子を振り返る。
ルージュの登場で、更に緊張した顔だ。
「大丈夫ですよ。私の従魔ですから」
手を貸して立ち上がらせる。
「姉ちゃんッ」
「ブヒヒヒヒーンッ」
晃太の声と、ノワールの嘶き。馬車がこちらに向かって爆走して到着。馭者台には見たことない白髪頭の男性が同乗している。
「姉ちゃん、大丈夫ね?」
馭者台から降りる晃太と男性。白髪頭の男性の腰には、ごつい剣がぶら下がっている。
「大丈夫よ、こちらの方は?」
「冒険者副ギルドマスター、ウィークスです」
胸に手を当てて腰を曲げて挨拶してくれる。
どうやら、あの若い冒険者から話を聞いて、飛び出して、出発しようとした晃太にお願いして同乗したようだ。
「残ったオルクは?」
ウィークスさんが聞いてくる。そこら辺に転がってますよ。直視したくない。
『私が見落とすわけないわ』
「残ってないそうです」
「そうですか。流石、噂のテイマー殿ですな」
「あの、この人達を馬車で運んでもらえます? ケガがあるとは思えませんが、保護を」
「了解した」
私は親子に馬車に乗るように指示する。
「でも、ムルが、息子が…………」
女性が泣きそうな顔だ。
「私が今から追いかけますから、晃太、今ねビアンカがオルクに連れ去られた赤ちゃんを追いかけようとよ。とにかく馬車にこの人達ば乗せて、町に戻ってん」
「よかけど。姉ちゃん、大丈夫な?」
「大丈夫よ、ルージュ、ビアンカ追える?」
『任せて、問題ないわ』
不安そうな、親子をウィークスさんが馬車にのせる。
「姉ちゃん、気をつけてなあ。アップ」
ふわあ、と温かくなる。
心配そうな晃太がノワールの手綱を操り、方向転換する。
馬車を見送り、私はルージュと共に魔の森に向き直った。
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